「八つ墓村」(2026/松竹)
監督:清水崇
原作:横溝正史
脚本:尾ケ井慎太郎 清水崇
尾上松也 奥智哉 堀田真由 佐野岳 小野塚勇人 永瀬莉子
小藪千豊 渋川清彦 高嶋政伸 高島礼子 滝藤賢一
おすすめ度…★★★☆☆ 満足度…★★★★☆
★以下、最初からネタバレします★
※入場特典
八つ墓村の明神下バス停に降り立った辰弥の前に現れるフリフリさん、そこへ辰弥を迎えに来た美也子が割って入るシーン。
美也子を見たフリフリさんが「ぎょうてえ~!」と叫んで去っていくのを見て「あ、犯人は美也子だな」と一発で確信した。
物語の舞台が岡山県の山間部という背景もあったので、すぐに出身地が同じ岡山の岩井志麻子のホラー小説「ぼっけぇ、ぎょうてぇ」が思い出された…小説は未読かな。
この「ぎょうてぇ」とは岡山弁で「怖い」を意味する「ぎょうとい」からくる言葉で、この時点では得体の知れない存在のフリフリさんが美也子を怖いと恐れおののく様子に、ある程度ミステリ好きならばすぐに気づくと思う。
それくらいミステリとしてはわかりやすい映画だった。
だって清水崇だもん!
ということで、最初にネタバレをしちゃったようなもので、あとは清水崇がどう横溝正史ワールドに挑んだかを楽しめばいい。
しばらくしてさらに気づくのは、これって横溝正史を題材にした壮大な「村」シリーズの集大成じゃないか!ということ。
そう「八つ墓村」というあまりにもメジャーな作品を松竹からそれなりの予算と豪華キャストを投入されて、思いっきり贅沢な「村」シリーズをやっちゃいましょうって感じでしょうか。
だから後半に向ってミステリ要素よりもホラー要素が増し増しになっていくのを見ていて、清水崇監督が嬉々としてこの作品を楽しんで作っている顔が思い浮かぶわけです。
就活活動で連敗中の大学生井川辰弥のもとに幼くして別れた母親の死の一報が届く。
その遺体の確認のために母親が死んだという岡山の八つ墓村へやってきた辰弥は、道中で自分を探していたという探偵の金田一耕助と出会う。
八つ墓村の名家・田治見家の当主と母親の間に生まれたという辰弥は、病床の現当主久弥から当主を継ぐように言われる。
しかし辰弥の来村をきっかけに田治見家をめぐる連続殺人事件が発生する。
辰弥の父でもあるかつての当主要蔵は20年前に村人たちを惨殺したあと行方不明になっていた。
その時に生き残った辰也の帰還で再び村に災いが起こることを危惧する村の若者たち。
田治見家の謎を知る双子の大叔母。
やがて金田一とともに事件の真相に迫る辰弥にも危険が迫る…。
物語の背景に横たわる尼子氏と田治見家に纏わる恩讐を再現したパートはまさに清水崇本領発揮というところで、もはやホラー映画と化した映像は美也子に憑依する落武者のごとき怨霊の登場まである念の入れようだ。
原作の「八つ墓村」のベースにあるのは実際に起こった「津山三十人殺し」という昭和13年の事件であり、そこに戦国時代の毛利氏に追われた尼子義孝一党を村に匿った田治見家当主をめぐる恩讐を絡ませて伝奇ミステリに仕上げた。
今回の映画化ではこの恩讐をより根深いものとして取り上げていて、清水監督お得意の因習ものと絡ませて怪奇譚として完成させた。
その一方で金田一耕助が登場する推理ものというアプローチは薄くなってしまった。
ただね、やっぱり「八つ墓村」には「八つ墓村」の歴史があって、当然ながら横溝正史の原作ファンもいるし、同じ松竹で渥美清の金田一耕助役で話題になった1977年の「八つ墓村」(巨匠野村芳太郎!)では『八つ墓の祟りじゃ~!』のインパクト大で社会現象にもなった。
96年にはトヨエツ版金田一耕助で市川崑監督の「八つ墓村」があって、テレビドラマでは稲垣吾郎や吉岡秀隆も金田一耕助を演じている。
それだけいろんな人にとっての「八つ墓村」があるわけで、ここにきて再び松竹にバトンが渡って令和版の「八つ墓村」がまさかの清水崇監督。
実は個人的には「八つ墓村」デビューだったりします。
金田一耕助シリーズは角川の「犬神家の一族」からリアルタイムではありますが、渥美清の「八つ墓村」はまだ寅さんのイメージもある時代で何となく食指が動かず、市川崑監督の「八つ墓村」も結局スルーしちゃった。
だから自分の中のイメージとしては渥美清の「八つ墓村」のあのインパクトある映像のまま止まっていたりするわけです。
まさかここにきて清水崇版の「八つ墓村」で初となるとは驚きましたけど。
過去の作品のイメージがあまりないこともあって逆にシンプルにこの世界観が「八つ墓村」だと割り切れたので、あとは清水崇監督がどう見せてくれるかを楽しむだけ。
それが結果として「村」シリーズの最高傑作だと思えたらそれはそれでいいのかなと。
時代背景は特に明示されていないけれど、辰弥はスマホを持っているし、金田一は「昭和生まれ」と自称しているので、ほぼ現代といってよさそう。
それでも舞台が岡山の山奥ということで昭和っぽい空気感も感じさせるし、劇中にいわゆるデジタル機器がほぼ出てこないなど「八つ墓村」の雰囲気は保っているのがいい。
金田一を演じた尾上松也の飄々とした感じは悪くないが、もう少しわかりやすいキャラにしてもよかった。
双子の大叔母を演じた高島礼子に、現在の田治見家当主とかつて虐殺事件起こした要蔵を演じた滝藤賢一がなかなかの怪演も、事件に巻き込まれる青年辰弥役の奥智哉はまだこれからという印象。
美也子を演じた堀田真由も手堅いけれど、後半で怨霊にとりこまれるあたりは特殊メイクが雑でもったいない。
エンドロールの終わりに映像あり。
ローソン・ユナイテッドシネマ前橋 スクリーン5





