「アンダーカレント」 | MCNP-media cross network premium/RENSA

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「アンダーカレント」(2023/KADOKAWA)

 

 監督:今泉力哉

 原作:豊田徹也

 脚本:澤井香織 今泉力哉

 

 真木よう子 井浦新 江口のりこ 中村久美

 康すおん 内田理央 永山瑛太 リリー・フランキー

 

 おすすめ度…★★☆☆☆ 満足度…★★★★☆
 

 
 
きっと誰にでも心の奥底にそっと沈めておきたい感情がある。
それはずっとそのままにしておけば誰も傷つけることはないのかもしれないけれど、心の底で静かに漂いながらもけして留まることなく、日常の中で時々水面に浮き上がって自らを苦しめる。
 
父親の死後に引き継いだ家業の銭湯「月乃湯」を切り盛りするかなえだったが、一緒に家業を営んでいた夫の悟が突然失踪してしまい一旦銭湯を閉めていた。
 
6月、先の見えない中でようやく営業を再開したかなえのもとに、組合の紹介で一人の男性が面接にやってくる。
堀と名乗る男性はボイラーの資格などももっていて、まだこの先の経営を迷っているかなえは、もったいないと断ろうとするが、すぐに働きたいとの希望でそのまま雇うことになる。
 
堀はアパートが見つかり次第引っ越すという条件で当面住み込みで働きだすが、真面目な働きぶりにかなえも少しずつ日常を取り戻していく。
 
一方でかなえは疾走した悟の捜索のために友人のよう子が紹介してくれた探偵の山崎と会い、3ヶ月の条件で必要経費のみで捜索を依頼することになる。
そして山崎の捜索で次第に夫の足取りが明らかになっていく。
 
そんなある日、いつも「月乃湯」で母親の帰りを待つ小学生のみゆがランドセルを残していなくなるという事件が起きる。
 
それをきっかけにかなえの心の奥底にあったひとつの嘘がうごめきだし彼女を苦しめ始める。
 
そして堀にもかなえには話していない秘密があって…。
さらに疾走した夫も見つかって、ついにかなえは悟と会うことになる。
 
10月、それぞれの日常がまた始まっていく。
 
サバサバ系のかなえ役の真木よう子と本心が見えない堀を演じる井浦新が、それぞれいかにもという役柄ではまっている。
同様にリリー・フランキーはいかにもリリー・フランキーだし、永山瑛太はいかにも永山瑛太らしく、そういう意味では観ていて安心感がある。
 
全体的に淡々と進むストーリーだけれど、ほどよいミステリー仕立てもあり、細野晴臣の音楽も相まって、心地いい時間を過ごせる。
 
監督の今泉力哉はメジャーではないけれど、映画ファンには知られた存在で、なかなか多作で評価も高いようだ。
 
自分は「アイネクライネナハトムジーク」と「あの頃。」しか観てなかったらしい。
 
スクリーンと対峙しながら自分自身の心の奥底をかき回されたのは事実で、語りたくないもの、語れないもの、そのまま心の底流に沈めておきたいもの、静かな映画だけれどいろんな感情が湧きおこった。
 
そういえば、井浦新と永山瑛太、それぞれ昔はARATAとEITAから瑛太と名前だけを芸名としていたなと思い出した。
 
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