2013年映画化決定
太平洋戦争で戦死した零戦パイロットの謎に迫る
驚嘆すべきデビュー作ひらめき電球



『永遠の0(ゼロ)』百田尚樹



“娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために”―


日本軍敗色濃厚な中、生への執着を臆面もなく口にし、仲間から「卑怯者」と蔑まれた零戦パイロットがいた―



人生の目標を失いかけていた青年・佐伯建太郎と、フリーライターの姉・慶子は、太平洋戦争で戦死した祖父・宮部久蔵のことを調べ始める

祖父の話は、特攻で死んだこと以外何も残されていなかった

元戦友たちの証言から浮かび上がってきた宮部久蔵の姿は、建太郎たちの予想もしないものだった―


凄腕を持ちながら、同時に異常なまでに死を恐れ、生に執着する戦闘機乗り―それが祖父だった

「生きて帰る」という妻との約束にこだわり続けた男は、なぜ特攻を志願したのか?

建太郎と慶子はついに、六十年の長きにわたって封印されていた驚愕の事実に辿り着く―




“奴は海軍航空隊一の臆病者だった”



“たしかに宮部は勇敢なパイロットではなかったと思います
しかし優秀なパイロットでした”



“私には妻がいます
妻のために死にたくないのです
自分にとって命は何よりも大事です”



“死ぬのはいつでも出来る
生きるために努力をするべきだ
どんなに苦しくても生き延びる努力をしろ”



“特攻は志願ではなく命令だった”



“あのゼロだけは忘れない
悪魔のようなゼロだった”






“この小説のテーマは「約束」です
言葉も愛も現代よりもずっと重かった時代の物語です”
と、作者は語る―



当時の戦争は無謀だったという議論がある一方で、当事者も多数いるため、戦争の実状が見えなくなりがちである


しかしこの作品では、視野を逆に狭くすることで、戦争の悲惨さというよりも、戦争に関わる人間の愚かさを浮き彫りにしている―



0(ゼロ)とは太平洋戦争で名を馳せた旧帝国海軍の戦闘機・零戦(正式名 零式艦上戦闘機)、通称ゼロ戦の事

開戦当初無敵の強さを誇った零戦だが、その性能と引き換えに、極限まで機体重量を軽くし、防弾装備を削り徹底して攻撃力に重きを置いたため、搭乗員の生存率が無視される結果になった


やがてその人命軽視の考え方は、敗色濃厚になるにつれ、“生きて虜囚の辱めを受けず”という戦陣訓に縛られた兵士たちに、自ら死ぬことを求めることになる―即ち特攻である


命令に背けない絶対の世界にいながら、死を決意した兵士たちが本当に抱えていたそれぞれの想い


誰のために戦ったのか
誰を守りたかったのか
誰を想い死んでいったのか―


史実に基づいて描かれた密度の濃い背景描写


日本軍司令部の愚策によって執行された“特攻”という史上最悪の作戦の真実


命をかけて“約束”を守ろうとした男たち



これは遥かな時を超えて結実した、過酷にして清洌なる愛の物語である―



刮目すべき号泣必至の感動作をぜひ得意げ



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『トライガン』の作者が贈る、血沸き肉踊る伝奇アクション漫画ひらめき電球



『血界戦線』内藤泰弘



かつてニューヨークと呼ばれた街は、たった一晩で消失した―


一夜にして構築された、霧けぶる都市“ヘルサレムズ・ロット”

空想上の産物として描かれていた“異世界”を現実に繋げている街

その全体像は、未だ人知の及ばぬ向こう側であり、霧の深淵を見る事は叶わない
人では起こしえない奇跡を実現するこの場所は、今後千年の覇権を握る場所とも例えられ、様々な思惑を持つ者達が跳梁跋扈する街となる―


そんな世界の均衡を保つ為に暗躍する組織があった

その名は“秘密結社・ライブラ”

その全体像は全く掴めておらず、もしひとたび正確な情報が流れれば、闇の世界から億の買値すら付くという―


少年・レオは、ふとしたきっかけからライブラの一員となり

ブレングリード流血闘術の使い手、ライブラのリーダー・クラウスや、剣術・斗流血法を使いこなす陽気なチンピラ・ザップ、不可視の人狼、美女・チェインら、ひと癖もふた癖もある連中と共に、異界の住人と奇怪な現象が織り成す様々な事件に立ち向かうことになる―




“ようこそ、君が新しい同志か
歓迎しよう、クラウス・V・ラインヘルツだ”



“そこに理由がないのがこの男なのよ
強いて言えば貴方が「そこに」「いた」のが理由ね
いつまで経っても利口にならないわ
私達のボスは”



“弾?バカそんなものは当たると思った奴から当たってくのよ”



“光に向かって一歩でも進もうとしている限り
人間の魂が真に敗北する事など断じて無い
征け!!
手始めに世界を救うのだ”


“あぁ!?
無理もゲリも無え!!
やるorダイor…デスだ!!

…後ろ2つは同じじゃねえのか?”



“クラウス・V・ラインヘルツ
私達の最強のリーダーで無類の紳士
獣のごとき生命力で武装した凶悪なまでの頑固者よ”


“赦し給え 憎み給え 諦め給え
人界を護るために行う我が蛮行を

貴公を「密封」する
ブレングリード流血闘術
999式久遠棺封縛獄!!”







本作のコンセプトは「技名を叫んでから殴る漫画」

前作『トライガン』から引き継がれる、相変わらず全開の内藤ワールドは、男心を刺激しまくる造形の武器やアメコミばりの濃いキャラクター、ド派手なアクション満載腹一杯


バトルのかっこよさ、切なさ、笑いのバランスが絶妙であり、軽妙な掛け合いや非凡な台詞の数々は、前作より肩の力の抜け加減が丁度良く

作者の言うところの“B級を念入りに煮しめ”た感が噛めば噛むほど味が出て、ツボにハマる人には堪らない至極の娯楽作品


限りなく非日常な世界において、それぞれがブレない自分の日常のスタンスで、鼻唄まじりに世界を救う

トンデモ痛快日常B級伝奇アクション漫画をぜひ得意げ



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これは本当にフィクションなのか!?
日本の病巣・日本のタブーに切り込んだ衝撃の問題作ひらめき電球



『震える牛』相場英雄



警視庁捜査一課継続捜査班に勤務する田川信一は、発生から2年が経ち未解決になっている“中野駅前・居酒屋強盗殺人事件”の捜査を命じられる

初動捜査では、その手口から犯人を“金目当ての不良外人”に絞り込んでいた

だが、田川は事件現場周辺の目撃証言を徹底的に洗い直し、犯人が逃走する際ベンツに乗車したことを掴む
ベンツに乗るような人間が、金欲しさにチェーンの居酒屋を襲うだろうか、という疑問

そして、同時に殺害されたのは互いに面識のない仙台在住の獣医師と、東京在住の産廃業者

この2人の繋がりを調べる為に、田川は仙台へと向かう―


また一方で女性記者の鶴見は、大型ショッピングモールの地方出店の際に起きる様々な利権やカラクリを調べていたが、次第にある大企業の暗部に接近しつつあった―


この、一見何にも関係がなさそうな両者が繋がり合っていく過程で、やがて驚くべき真相が浮かび上がってくる―



“今、フロントガラス越しに見える景色は、全国どこも同じで、その街の表情をうかがい知ることはできない”





“街を壊している”





“本来、クレーム必至の商品など仕入れてはならない
そんなことは百も承知だ

だが、会社が消えてしまっては元も子もない”





“あなた方は、お客様の隣に行って、子供やお年寄りを不健康にしてしまう企業に成り下がるわけですね”




“大きな商業施設に行って、豊かになったつもりでいたんだ

現実は、企業にいいようにカネを吸い取られて、演出された幻想を見せられていたんだ

この商店街みたいに、身の丈で暮らせるのが一番だと思わんか?”






この作品は、食品偽装問題、全国に巨大ショッピングモールを展開する大企業による地方経済と街の崩壊、警察内部の闇など、ミステリーの体裁を隠れ蓑に、日本の構造的な問題を鋭く抉った快作


著者が“全国的に売られている低価格の食品は、なんでこんなに美味しくないのか”と疑問に思い、調べ始めたのが本作を書くきっかけであり
調べた結果、解ったことは
“気持ち悪い”

という感情に表される、衝撃的な現実であったという―



子供たちが口にする加工食品は本当に安全か?
地方都市はなぜ衰退したのか?

消費者を欺く企業、安全より経済効果を優先する社会、命を軽視する風土が悲劇を生む―



限りなくノンフィクションに近いフィクション

早くも“今年度ミステリーベスト1”の呼び声も高い、この最高の問題作をぜひ得意げ



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