これは本当にフィクションなのか!?
日本の病巣・日本のタブーに切り込んだ衝撃の問題作ひらめき電球



『震える牛』相場英雄



警視庁捜査一課継続捜査班に勤務する田川信一は、発生から2年が経ち未解決になっている“中野駅前・居酒屋強盗殺人事件”の捜査を命じられる

初動捜査では、その手口から犯人を“金目当ての不良外人”に絞り込んでいた

だが、田川は事件現場周辺の目撃証言を徹底的に洗い直し、犯人が逃走する際ベンツに乗車したことを掴む
ベンツに乗るような人間が、金欲しさにチェーンの居酒屋を襲うだろうか、という疑問

そして、同時に殺害されたのは互いに面識のない仙台在住の獣医師と、東京在住の産廃業者

この2人の繋がりを調べる為に、田川は仙台へと向かう―


また一方で女性記者の鶴見は、大型ショッピングモールの地方出店の際に起きる様々な利権やカラクリを調べていたが、次第にある大企業の暗部に接近しつつあった―


この、一見何にも関係がなさそうな両者が繋がり合っていく過程で、やがて驚くべき真相が浮かび上がってくる―



“今、フロントガラス越しに見える景色は、全国どこも同じで、その街の表情をうかがい知ることはできない”





“街を壊している”





“本来、クレーム必至の商品など仕入れてはならない
そんなことは百も承知だ

だが、会社が消えてしまっては元も子もない”





“あなた方は、お客様の隣に行って、子供やお年寄りを不健康にしてしまう企業に成り下がるわけですね”




“大きな商業施設に行って、豊かになったつもりでいたんだ

現実は、企業にいいようにカネを吸い取られて、演出された幻想を見せられていたんだ

この商店街みたいに、身の丈で暮らせるのが一番だと思わんか?”






この作品は、食品偽装問題、全国に巨大ショッピングモールを展開する大企業による地方経済と街の崩壊、警察内部の闇など、ミステリーの体裁を隠れ蓑に、日本の構造的な問題を鋭く抉った快作


著者が“全国的に売られている低価格の食品は、なんでこんなに美味しくないのか”と疑問に思い、調べ始めたのが本作を書くきっかけであり
調べた結果、解ったことは
“気持ち悪い”

という感情に表される、衝撃的な現実であったという―



子供たちが口にする加工食品は本当に安全か?
地方都市はなぜ衰退したのか?

消費者を欺く企業、安全より経済効果を優先する社会、命を軽視する風土が悲劇を生む―



限りなくノンフィクションに近いフィクション

早くも“今年度ミステリーベスト1”の呼び声も高い、この最高の問題作をぜひ得意げ



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