私のように片耳が難聴というより、正確には全く聞こえない聾(ろう)状態の場合は、音の増幅を行う補聴器は役にたちません。
それで、聞こえない側の耳にはマイク機能だけがついた機器を装着して、反対側の聞こえる方の耳に音声情報を送るクロス補聴器というタイプの補聴器があることをご存じの方もいらっしゃると思います。
この方法では、「頭影効果」といって、難聴側の頭のすぐそばで発生する音が頭の影になって健聴側の耳にうまく伝わらない現象を回避することができます。
しかし、音のする方向を判別する音源定位にはあまり効果がないともされています。
内耳の蝸牛と呼ばれる音を感知する器官の障害によって難聴が起こっている場合は、その部分に音を感知するための電極を埋め込んで、体外の音を集音する機器をつないで聴力を回復させる人工内耳という仕組みもあります。
この人工内耳ですが、現在のところ、一側性難聴の場合は医療保険の対象になっていません。海外では難聴の改善に積極的に適用しているところもあるそうですが、日本では両耳が難聴の場合に限って、片側のみに適用するのが一般的だということです。
先進医療ということで、保険の適用はありませんが、昨年の1月に一側性難聴にも人工内耳の埋め込み手術が公式に承認されたそうです。
ちなみに、私のように聴神経腫瘍の手術で脳へつながる神経が機能していない場合はこの人工内耳も役に立ちません。内耳の蝸牛そのものは温存されているのですが、音を伝える径路が遮断されているからです。
これを何とかするには内耳よりもさらに奥、脳幹から出ている聴神経の根本にある蝸牛神経核という部分に音を伝えるプレートを埋め込む聴性脳幹インプラントという方法があるそうですが、こちらの方はさらに一般的ではありません。
人工内耳も、聴性脳幹インプラントも音を伝えるチャンネルの本数は、今の技術ではわずか数十本ということなので、本物の蝸牛神経の3万本以上ある伝送路とは雲泥の差です。
経験者によると、われわれが考える普通の音とはかけ離れた、人工的な音に聞こえるそうです。それも相当調整や訓練をしないと聞き取ることが難しいということです。
音が自然に聞こえるということは、実は大変なことなのですね。
将来、聴神経を再生する医療技術が開発されれば、聞こえない片耳が復活することがあるのかなぁ、と時折妄想しています(笑)
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