池袋暴走事故の加害者に対し、「心情等伝達制度」にて心情を伝える
心情等伝達制度とは
刑務所の職員を介して、被害者が加害者本人に心情を伝えることができる新たな制度です。
心情等伝達制度を使った理由
妻と娘の命を奪われた以上、罪を償って貰うために、必死に闘いました。その結果、彼は今、刑務所で服役をしています。
しかし、本当に大切なことは、罪を償うこと「だけ」ではないと私は思っています。
彼は過失犯であり、過失というのは「ミス」です。人間はミスをする生き物です。
本当に大切なこと。それは、誰しもが同じミスを二度と起こさず、同じような加害者と被害者を生まないよう、社会が取り組むことだと私は思います。
被害者と加害者という立場は明確に違う。
それでも、その立場を越えて、一緒の目線で再発防止を考えることが重要だと思っています。
私は彼の経験と、その言葉を社会全体の財産にしたい。だから、彼が私に想いを話し、それを私が社会に発信したいということを伝えてきました。
具体的には、以下の内容を伝えてきました。
以下伝達内容
※刑務所職員と話し合いをする前に、私が事前に作ったメモです。
1. 命を奪いたくて奪ったわけではないのは分かっている。真菜と莉子のことは忘れないでほしい。
2. 再発防止に向け、高齢ドライバー問題についての、意見や経験を聞かせてほしい。
① 自分はどうすれば、この事故を起こさずに済みましたか。
② 高齢者として、どのような社会であれば、事故を起こさずに済みましたか。
③ 病院までの無料または500円程度の送迎サービスなどがあれば使いましたか。
④ 医師から、明確に運転を止められていたとしたら、あなたは運転をやめていましたか。
⑤ パーキンソン症候群が運転をしてはいけないという分類に属されていたとしたら、運転をやめていましたか。
⑥ 家族からどんな声掛けがあれば、運転をやめようと思いましたか。
⑦ 高齢で刑務所に入る苦しみはどのようなものですか。
⑧ 事故当時パーキンソンまたはパーキンソン症候群の可能性があると感じていたか?
3. 上記①〜⑦の回答を社会に伝えたいのですが、いかがですか。
駄目であれば、①〜⑦のどれであれば伝えてよいですか。
4. 近いうち面会をしたい。
近いうち、面会の申し込みをしたい。あなたには断る権利があるので、断ることもできる。怒りや恨みをぶつけたくて会うのではありません。人と人として、向き合ってお話ししたい。もちろん体調面は考慮するので、考えてほしい。
5. 出所した後、対談したい。
6. 最後に
人類はこれまで、先人の失敗から学び、同じ過ちを繰り返さないよう工夫し、社会をより良くしてきました。そして、あなたは日本社会を技術面から支え、多くの人を幸せにしてきた人だと思う。
だから私は、あなたの言葉を聞き、私が伝えることで、社会のためになるよう行動してほしい。あなたの経験や失敗を無駄にしてほしくないから。
この願いは、自分のエゴだと思う。もし話したくないならしなくてもいい。でも、一緒に再発防止のために。高齢ドライバー問題の解決の糸口となるために、発信しませんか。真菜と莉子のため、そして社会のため、あなた自身のためにも、検討していただきたい。
私は、二人の命を無駄にしないため、「世の中から交通事故をひとつでも減らしていく活動」をこの5年間してきた。なぜなら、妻と娘の命を無駄にしたくないから。そして遺された遺族の苦悩や葛藤も無駄にしたくないから。同じような苦しみを誰にも体験してほしくないから。
そして、あなたの経験や苦悩も無駄にしたくない。あなたの失敗を、社会の財産にしてほしい。「自分と同じような加害者が生まれてほしくない」という視点を一緒に持ちませんか。
私にとっては、もうそれしか救いがない。二人の命は戻らないから。そして、あなたにとっても救いになるのではないでしょうか。
※2-⑥に関しては、彼のご家族を責める意味ではありません。今後の私の活動に活かしたい想いです。
今後について
今後、刑務所の職員から、加害者の返答やリアクションが帰ってくることになります。
出来ることなら、想いが通じ、より良い返答があることを望みます。