UNLUCKY
秋の天皇賞で嬉しい勝利を飾った
ウオッカと武豊騎手だったが
その武騎手にトラブルが舞い降りてしまう

秋天に続くG1競争
エリザベス女王杯で
上位人気を担っていた
良血馬ポルトフィーノが
スタート直後に躓き
馬場に放り出されてしまう

幸い人馬共に
大きな怪我も無く
ポルトフィーノにいたっては
そのまま走り続けて
優勝したリトルアマポーラに
先着するパフォーマンスを魅せるほどだった

しかし
翌週の京都5R
軽快に逃げるセイウンアレース
3コーナーに差し掛かったところで
突然崩れ落ちる
鞍上の武騎手ももんどりうって
馬場に叩きつけられた…

右尺骨骨幹部骨折で全治2ヶ月
今年中の復帰は絶望とされてしまった
セイウンアレースは無念ながら予後不良となり
トップジョッキーの武豊騎手の大怪我によって
多くの関係者が頭を抱えた

次走の予定がJCとなっていた
ウオッカは
武騎手が怪我をする前から
メイショウサムソンに
騎乗することとなっていたため
安田記念以来の岩田騎手とのコンビ復活が
既に決まっていた

ライバルのダイワスカーレットは
早々にJCをスキップして
有馬記念で引退のスケジュールをたてる

メイショウサムソンも
激戦の凱旋門賞挑戦からのJC参戦
鞍上は武豊騎手から元主戦ジョッキーの石橋守に決まった

そしてディープスカイも
天皇賞でその強さ片鱗を見せつけての参戦
鞍上は四位洋文である

三代のダービー馬の競演に
ファンもこの3頭に注目を集める

その他にも
アサクサキングスと
オウケンブルースリの菊花賞馬対決
昨年のグランプリ馬マツリダゴッホと
豪華メンバーでのレースとなった

安田記念同様絶好のスタートを切る
ウオッカ
ネヴァブションとコスモバルクを
先に行かせて3番手追走
淡々としたながれの中
直線では内に入り最後の力を振り絞る
しかし思ったほど末脚に切れがない

馬場の外目からディープスカイが
追い出しに入る…
とその時ディープスカイの内から
するすると足をのばす馬がいた
前走で初重賞制覇したばかりの
スクリーンヒーローだ

ウオッカも内で懸命に食い下がる
しかし外の2頭の脚色がいい

中スクリーンヒーロー
外ディープスカイ

ディープスカイの四位騎手の
渾身の追い込みも
1/2馬身の差が縮まらない

そのままの体勢でゴール
内頑張ったウオッカは
昨年のグランプリホースを
頭差抑えて3着が精いっぱいの結果となった

2008年最後を飾る有馬記念
激戦の疲れを癒すため
そして来年も現役続行が
決まったウオッカは回避

ここでライバルのダイワスカーレットが
引退の花道を飾る逃げ切り勝ちを収めたため
最優秀古馬牝馬のタイトル争いの行方も
混沌となっていった

年が明けて
JRA賞の発表
ダイワスカーレットの有馬記念制覇を評価する者
ウオッカの安田記念、秋の天皇賞を評価する者
評価の分かれるところであったが
最優秀古馬牝馬のタイトルは
ウオッカの頭上に輝いた
同時に年度代表馬にも選出され
名実共に女帝と呼ばれるにふさわしい
ウオッカ円熟期を迎えることと成る

そして2009年最初の目標は
昨年取り損ねた
ドバイデューティーフリーに
狙いを定め
前哨戦にジュベルハッタを叩いて本番の
ローテーションが組まれた
府中マイスターへの道
宝塚記念を早々に
回避を決めたウオッカの
秋初戦は毎日王冠になった

出走メンバーを見渡しても
逃げ馬不在といわれた
レースで再び手綱をとった
武騎手はスタート良く
飛び出すとそのまま逃げに出る
単勝人気1.5倍と圧倒的人気に支持された
ウオッカのまさかの逃げに
場内はどよめきを隠せない
しかし1000M通過を59.3秒のペースは
ウオッカのペース
余力充分に4角をまわり
最後の直線でもまだ先頭

残り2ハロン
番手で粘るアドマイヤフジを交わして
先段につけていた
スーパーホーネット
一気にスパートする
残り1ハロン
一完歩ごとに差が詰まる
ゴール板前で遂に馬体が並ぶ

そしてゴール・・・
目標にされたこともあったが
最後はきっちりと交わされて
2着惜敗
これで次走の秋の天皇賞が
ウオッカにとって
再び正念場となってしまうことになる

この年の秋の天皇賞には
今年のダービー馬
ウオッカにとっては
一年後輩のディープスカイ
菊花賞へ向かわずに参戦を表明し
故障のためこの年は
大阪杯以来のブッツケで
ダイワスカーレットも参戦となっていた

昨年の勢いを無くしている
ダイワスカーレットは
それでも昨年の実績を評価され
2番人気
神戸新聞杯を快勝しての
参戦のダービー馬ディープスカイは
3番人気と
僅差で分け合う人気だったが
最終的に1番人気には
ウオッカが支持されレースを迎える

スタートと共に
ダイワスカーレットが
いつものようにハナに立つ
1000Mの通過は59秒を切るペース
ウオッカは中段
ディープスカイを見る位置で
しっかりと脚をため折り合う

最後の直線
ダイワスカーレットが
内一杯に逃げ込みを図る

残り400で
ディープスカイとウオッカが
外から猛然と追い上げる
新旧ダービー馬対決か
しかし最内ダイワスカーレットも
もう一度盛り返す
人気3頭の叩き合い
真ん中ディープスカイが少し遅れ
猛然と最後の最後で
追い込んできたカンパニー

ゴール板では
内ダイワスカーレット
外ウオッカが
正に鼻面を合わせてのゴール

勢い、最後の脚は
ウオッカが優勢にも見える
しかしスローで見てもわからない

長い長い写真判定に
決着は委ねられる

その間に引き揚げてくる各馬
先に帰ってきたダイワスカーレットを
迎えた社台ファーム代表の
吉田照哉氏は1着のところへ
入るように促す
鞍上の安藤勝巳は戸惑いながらも
その指示に従う

遅れて帰ってきた
ウオッカと武豊騎手だったが
不満そうなそぶりを見せつつ
2着のところへ入り下馬する

写真判定の結果はまだ出ない
長い…
このまま1着同着か
そんな空気が検量室前に漂い始めた
そんなとき

写真判定の結果が出る
1着のところに
点った馬番は14番
ウオッカの馬番だった
同着ではなく
その差2㎝

満面の笑みを浮かべて
喜びをあらわにする
武豊

2000Mを走りぬいて
たった2㎝が明暗を分ける結果となった

ウオッカと
そのライバルダイワスカーレット
これが生涯最後の勝負となる
両頭にたくさんのファンは
名勝負と称える

そして勝ったウオッカは
府中マイスターへの階段を
また一歩上ったこととなるであった
明け4歳
明けて4歳となったウオッカ陣営は
ドバイデューティーフリーを目標に
調整を始める
その壮行レースとして
京都記念を選ぶと
同じステップでの遠征が決まっていた
アドマイヤオーラと人気を分け合い
レースを迎えるが、6着に敗れてしまう

復活の兆しの見えぬまま
初海外遠征へ出発の日を迎える

初ということもあり
海外での騎乗経験豊富な
武豊騎手を鞍上に迎え入れ
レースに挑むことが決定
しかしこの決定は
ここまで苦楽を共に歩んできた
四位洋文との別れも意味していた

前年の同レースで
アドマイヤムーンが勝利し
ダイワメジャーが3着としているところから
2008年のこのレースでも
日本の期待を担う
ウオッカとアドマイヤオーラの
下馬評は上々でレースを迎えた

レースはジェイペグのマイペースの逃げで進む
ウオッカは4,5番手のポジションで
最後の直線を迎える
最初に抜け出すのは
番手追走のシーチェンジ
しかし満を持して
ダルジナが先頭を奪う
外からウオッカも追い込み体制に入る
そこへ一端かわされていた
ジェイペグがもう一度盛り返す
内ダルジナ
外ジェイペグ
叩き合いの末に
外からジェイペグが
差し返したところがゴールだった

ウオッカは追い込み及ばず4着
アドマイヤオーラは9着という
残念な結果となってしまった

帰国後すぐさま短期放牧に出され
再起を賭けた一戦を
ヴィクトリアマイルに決める
この後府中マイスターの称号を得る
ウオッカであるが
その片鱗をみせるには至らず
残り400のハロン棒から
追い込みを開始するも
先に抜け出したエイジアンウインズを
捕えることができず
2着に敗れてしまう
圧倒的1番人気に応えることは叶わなかった

惜敗であろうと
2着であろうと
優勝劣敗の世界では
敗北を示す

遂に復活
追い詰められた陣営は
中2週となるが
安田記念に出走を決める
鞍上は武豊騎手に
先約があったため
一昨年、園田から移籍してきた
岩田康成騎手に決まり
心機一転を図ることとなった

人気は昨秋のマイルチャンピオンシップで
惜敗した借りを返す為に
ステップレースの
京王杯SCを快勝して
参戦してきた
スパーホーネット
伏兵馬も多く人気は割れた
二頭の人気は分け合う形で
レースを迎える

スタート巧者として
名高い岩田騎手は絶好のスタートを決める
しかし逃げるコンゴウリキシオーを行かせると
スッと抑えて5番手を追走する

最後の直線
コンゴウリキシオーが内一杯に逃げる
しかしここで岩田騎手のゴーサインが
ウオッカへ伝わると
瞬時に反応し先頭に躍り出る

ウオッカ先頭
待ちに待った
優勝へのゴールへ
真っ先に飛び込む

長かった
実にダービー以来
約1年ぶりとなる勝利は
ウオッカ復活
アピールする
陣営悲願の勝利でもあった
覆水盆に返らず
海外遠征を白紙撤回した
ウオッカであったが
すぐさま目標を国内に移し
秋初戦はトライアルを使わずに
ブッツケで秋華賞への出走を決める

桜花賞馬ダイワスカーレットと
ダービー馬ウオッカの
これが3度目の対決となる

この年の秋華賞は
桜花賞馬ダイワスカーレット
オークス馬ローブデコルテに加え
NHKマイルカップを制したピンクカメオ
そしてダービー馬ウオッカの参戦と
G1馬4頭を含む豪華な顔ぶれと成った

ウオッカにとって
一番のライバルである
ダイワスカーレットが
トライアル「ローズS」を
危なげなく勝って望むのに対して
一頓挫あってのぶっつけ本番の不利

そしてトライアルでダイワスカーレットの
脚を計るように
トライアルレースに徹した
武豊鞍上のベッラレイアも
2強崩しと最後の1冠の奪取に虎視眈々
勿論オークス馬、NHKMC馬を始め
有力どころも同じ思いでゲートインする

レースがスタートする
最内1番枠からヒシアスペンが行くが
負けじと外13番枠のダイワスカーレットも
掛かり気味に競りかける
1角を回ったところで
逃げるヒシアスペンを見るような形で
番手に控えるダイワスカーレットとの序列で落ち着き
ウオッカは中段グループの後方に位置して
淡々とした流れでレースが進む

3・4角でヒシアスペンが失速するところを
ダイワスカーレットが交わし先頭にでる
ウオッカはまだ後方・・・
最後の直線
逃げ込みを図るダイワスカーレット
追い上げる各馬
ウオッカより一呼吸先に仕掛けた
レインダンスがダイワスカーレットに
襲いかかる
その外からウオッカもやってくる

逃げるダイワスカーレット
レインダンスと共に追い上げるウオッカ
しかし馬体を合わせることもかなわず
一緒に追い上げたレインダンスにすら
首差及ばず
ウオッカは3着に敗れてしまう

ダイワスカーレットが2つ目の
タイトルを奪取し
2強対決でも一つ勝ち越しを決めた

3歳女王の座を
ダイワスカーレットに奪われる
格好となったウオッカは
すぐさまリベンジの場を
エリザベス女王杯に求めた

枠順が発表なり
ダイワスカーレットは5枠7番
ウオッカは3枠3番となった
前日発売のオッズでは
またもウオッカが1番人気
ダイワスカーレットは2番人気
しかし突然ウオッカに異変がおきる
右関節跛行によりレース当日になって
出走回避となってしまうのだった

押し出されて圧倒的1番人気になった
ダイワスカーレットだったが
スタートを決めると
フサイチパンドラや
スイープトウショウの
追い込みを尻目に
逃げ切り勝ちを収め
G1タイトル3勝目をあげた

ライバルのダイワスカーレットが着々と
勝ち星を挙げていく中ウオッカは
名誉挽回を賭けJCへ向かうことを決めた
舞台はダービー制覇と同じ
府中の2400M

人気は前走秋の天皇賞を
快勝した前年の2冠馬
メイショウサムソン
宝塚記念での惜敗を糧に
秋の古馬G13連勝を目論む

そしてウオッカは
堂々の2番人気に支持される
落ち着き払った彼女は
歴戦の古馬陣も
無視のできない存在であった

レースがスタートする
3番枠から行くとみられていた
コスモバルクからハナを奪ったのは
なんと横山典弘とチョウサン
前々走毎日王冠で豪快に追い込み
驚異的なレコードを叩きだしたのも
記憶に新しいところだっただけに
意外な逃げ戦法に場内もどよめく

そんな中ウオッカはなんと最後方から
レースを進める
元々それほど先に行く競馬を
していないウオッカだったが
最後方の位置取りとは・・・

縦長の体制で1000Mの通過は60秒
大ケヤキの向こうをこえて
レースは勝負所を迎える

後方からコーナーで内をつくウオッカ
しかし直線に入って
馬場の真ん中外目まで出し
追い込みを始める

ダービーの栄冠の再現が
脳裏をよぎる
差し切れるか

先に抜け出しを図るのは
アドマイヤムーン
外からポップロックも伸びてくる
新旧ダービー馬のメイショウサムソンとウオッカも
最後の力を振り絞る…

勝ったのは
岩田康成とアドマイヤムーン
前走天皇賞では不利に泣き
この戴冠では
勝利に咽びなく岩田康成

ウオッカは善戦空しく4着
名誉挽回を賭して挑んだ
大一番だったが
勝利の女神は
ウオッカには微笑まなかった

続く暮れのGRAND PRIX
有馬記念でも
ファン投票第1位で選出された
ウオッカだったが
見せ場無く11着と破れる
ダービー馬の栄光も
ライバルダイワスカーレットが残した
G1戦3勝2着1回
の成績の前には色あせて映った
戴冠
桜花賞の敗戦
これは陣営が迎えた
大きな岐路でもあった

当初の計画通り東京優駿「日本ダービー」へ向かうか
オークスへ向かいダイワスカーレットに雪辱を期するか

最終的に判断を任された
新進気鋭の角居調教師が
出した結論は
東京優駿への出走だった

3歳になって
常にライバルに胸を貸す存在だった
女王が
牡馬に挑戦状を叩きつける

それは11年ぶりの
牝馬によるダービー出走である

2007年5月27日
ウオッカは2枠3番にゲートインする
1番人気は良血フサイチホウオー
前走の皐月賞で魅せた豪脚に
広い府中の直線では
突き抜けるだろうと期待されての
1.6倍圧倒的支持
そして皐月賞馬ヴィクトリーが続く

ウオッカは馬番と同じ3番人気
しかし単勝オッズ10.5倍が示す通り
ファンも半信半疑での支持となった

スタートが切られる
皐月賞を逃げ切った
ヴィクトリーが出遅れて最後方
外から思い切っていった
アサクサキングスが
先頭でレースが進む
出遅れたヴィクトリーが先段に取り付こうとするも
1000Mの通過が60秒5と落ち着いた流れとなって
3角を迎える

マイペースの逃げとなった
アサクサキングスが内一杯を逃げる

最後の直線
馬場のど真ん中を
一頭の馬が追い込んでくる

黄色い勝負服
胸には水色の襷
ウオッカ

四位騎手の渾身の手綱さばきに
ヴィクトリーロードが開ける

内粘るアサクサキングスを
かわすと
後ろからは何も来ない

栄光のゴールに飛び込んだ瞬間
2着アサクサキングスにつけた
着差は3馬身
圧勝である

ゴール板に飛びこんだ後
四位騎手は当然の結果だったかのように
右手をスッとのばす
お得意の決めポーズ

ライバル藤田伸二騎手のダービー制覇から
遅れること11年
初クラシックを制覇してから11年

そして半世紀以上の時を超えて
ダービーを制したヒロインの誕生に
ファンも惜しみない拍手を贈る

一週前のオークスを感冒のため取り消し
一足早い休養を余儀なくされた
ダイワスカーレットに対して
桜花賞での明暗が逆転し
ダービー制覇により
牝馬だけでなく
世代の頂点にたった瞬間でもあった

狂った歯車
ダービー制覇となれば
秋まで英気を養うのが
一流馬としての通例であるが
陣営は初夏のgrand prix
宝塚記念に出走を決める

人気は前年のダービー馬
メイショウサムソンが2番人気
ドバイデューティーフリーを制し
香港でも善戦して凱旋帰国してきた
アドマイヤムーンが3番人気
その先輩G1馬を従えて
負担重量51キロと7キロのハンデ差
ダービー制覇を評価され
ウオッカが1番人気でレースを迎えた

内2番枠からスタートすると
嫌がるそぶりを見せるウオッカ
なだめつつも折合いを欠くレース運びと成る
それでも4角を回りインをつくと
一瞬は抜け出すかに見えたが・・・

最後の直線
残り1ハロンで失速し
馬郡にのまれ8着に敗れる
初の古馬挑戦は
初の惨敗と
辛酸をなめる結果となってしまった

気を取り直して
秋の最大目標を
凱旋門賞挑戦に掲げ
ステップレースとして
あのダンスパートナーも挑戦した
(四位自身もダンスパートナーの手綱を取っているが
この時の鞍上は武豊騎手)

ヴェルメイユ賞を選び
調整を開始したが蹄球炎を発症し
海外遠征は白紙撤回となってしまう

故障こそ軽症ですんだが
ウオッカの中で
何かがくいちがい始めた
そんなモヤモヤが
ほんの少し立ち込めてきた
感じがしはじめる
トライアル
明けて3歳となったウオッカの始動は
エルフィンステークス
G1馬としての出走は
他のライバルより+2キロの
負担重量を課せられる一戦となった

しかし単勝オッズ1.7倍に
支持された彼女は
追いすがろうとする
2番人気ニシノマナムスメを
3馬身も置き去りにしての完勝

宿命のライバル
そして次走は
桜花賞トライアル
チューリップ賞への出走する

この時初めてこの後幾度となく
名勝負を繰り広げることとなる
ダイワスカーレットとの
対決が実現した

人気はウオッカが1番人気で単勝1.4倍
そしてダイワスカーレットは2番人気2.8倍と続く
3番人気の後のオークス馬ローブデコルテの
オッズが10倍を超えていたことから
ファンも皆どちらが制するかの
2強対決に注目が集まっていた

レースはダイワスカーレットが
タガノグラマラスに絡まれながらも
マイペースの逃げを打つ
ウオッカは中段5・6番手の外目
マイポジションでじっと足をためる

レースは4角を回り
ダイワスカーレットが
逃げ込みを図るところへ
外からスーとウオッカがとりついてくる

最後の直線に入ると
2頭の一騎打ち

ほかのライバルを
アッという間に
置き去りにすると
2頭のたたき合いはゴールまで続く・・・

先にゴール板に飛び込んだのは
ウオッカ
最後首ほど出たところが
ゴールだった

そしてその頃から
俄かには信じがたい
噂話が流れ出す

「桜花賞を勝ったら
オークスには行かずに
ダービーへ向かう」


牝馬のダービー挑戦は
ビワハイジなど
何頭かはいたが
勝ち負けをした馬は
近年でていない
噂の真偽はいかに・・・
そんな中
桜花賞を迎える

第一関門
クラシック第一弾桜花賞
3強の争いと言われたが
人気の面では
マイルの距離に一抹の不安があるアストンマーチャンと
大外18番枠が懸念されたダイワスカーレットが
単勝5~6倍をつける中
ウオッカが断然の一番人気1.4倍の支持を受けた

スタートは池添騎手の
アマノチェリーランがおして先頭に
そこへ掛かり気味に
武豊騎手のアストンマーチャンが競りかける

大外ダイワスカーレットは
無理せず3番手
そこから少し離れて
ウオッカが進む

4角をまわり
アストンマーチャンは失速
代わってダイワスカーレットが
先頭に立つ
外からウオッカが並びかける

チューリップ賞の再現か…
しかし
少し外によれたような
ダイワスカーレットに
外に振られるウオッカ
追いすがる
しかし届かない

着差1馬身1/2
桜花賞馬ダイワスカーレットの誕生と共に
ウオッカにとっては
春のクラシック制覇に向けて
暗雲立ち込める結果となってしまった
引退が発表され
母としてのスタートを切った
ウオッカの軌跡を
辿ってみたくなり
書き始めたウオッカ物語
書き始めると
いろいろな思いが
いくつも浮かんでくる
個人的には
女傑といわれた
エアグルーヴのほうが
好きだが
その栄光と挫折の繰り返しとなった
波乱万丈の軌跡を
個人の思い入れたっぷりに
綴ってみたい

プロローグ
明け6歳となったウオッカ
最後に残ったの忘れ物を取りに
新装となった
ドバイ、メイダン競馬場に向かう

前哨戦とはいえ
陣営が自信を持って
出走を決めたのが
マクトゥームチャレンジラウンド3

前走のJCを辛勝ながらも
制覇したことにより
マスコミもどんなレースをしてくれるか
期待たっぷりにレースを迎えた・・・・・・


誕生・デビュー
父タニノギムレット
母タニノシスター
2004年4月4日
静内のカントリー牧場で産まれた
1頭の牝馬は
後に数々の記録を打ち立てる
名牝となる

2006年10月29日
第5回京都8日目

6Rの新馬戦に
鞍上は鮫島克也
13頭立ての2番人気に支持された
ウオッカは
1番人気のレースドールの追い込みを
全く問題にせず3馬身1/2の着差で逃げ切る
逃げ馬がレース最速の上がり34.5秒
完勝といって良い初陣であった

2戦目からのパートナーは
四位洋文
その黄菊賞は出遅れが響いて
マイネルソリストの逃げを捕らえることが
できずに2着に敗れるが

3戦目には
暮れの大一番
G1阪神ジュベナイルフィリーズ
出走が叶う

人気は武豊騎手鞍上の
小倉2歳Sの覇者
アストンマーチャン
単勝オッズ2倍を切る1.6倍に対して
ウオッカは4番人気
単勝オッズも11.1倍をつけた

レースはルミナスハーバーが
軽快なペースでひっぱる展開となる
人気のアストンマーチャンは
3番手の絶好の位置取り
逃げるルミナスハーバーも2番人気に支持されるだけあって
4角をまわっても足取りは確か

最後の直線、ここで満を持して
アストンマーチャンが先頭に踊り出る・・・

しかし後ろから1頭
馬郡を切り裂きすごい脚でまくってくる馬が
ウオッカと鞍上の四位騎手だ
馬場のど真ん中をその豪脚で
アストンマーチャンを一完歩ごとに追い詰める
最後にクビほど先にでたところがゴール
2歳女王「ウオッカ」の誕生

父タニノギムレット
そのギムレットがジンベースの
カクテルなのに対して
アルコール度数の強い
蒸留酒「ウオッカ」
しかも
何も混ぜない
何も足さない

ストレートとするため
冠のタニノもつけることなく
「ウオッカ」と命名された牝馬が
最初の1冠を戴冠した瞬間だった
再度の鼻出血により
ウオッカ
引退が発表された

そしてその引退と入れ替わり
この世に生を受けた
ライバル「ダイワスカーレット」
二世牝馬

父チチカステナンゴは
社台が新しい血を求めて
連れてきた

とてつもなく大きな痕跡を残した
サンデーサイレンス

昭和の後期を席巻した
父ノーザンダンサーの
ノーザンテースト

そしてその偉大なる記録を
一つ一つ塗り替えていった
サンデーサイレンス

早すぎた死

しかし彼が残した功績は
あまりに大きい

その彼が死んだあと
レベルも規模も縮小したといわれる
日本競馬界

時代は今
新しい時を迎える


名牝
そして女帝といわれた
ウオッカ
これから始まる
第二の馬生

名牝は必ずしも
名繁殖牝馬とは
ならないとされる世界で
一足先に生まれた
ダイワスカーレットの子供たちと
いつか日本のターフで
勝負する日が来る時を
今は心待ちにするしかできない

ウオッカよ
お疲れ様

今はただ疲れを癒し
これからの
母としての
馬生に
余力を蓄えてもらいたい

さようなら
女帝「ウオッカ」
そして
がんばれ
母なる「ウオッカ」
最後といっても
これで終わるわけではなく・・・(多分)

区切りの時までの
Processに過ぎない

便利な世の中を作り出す為に
犠牲にしてきた物
消費は美徳とし
大量生産、大量消費が
生み出した物

高度成長時代のツケを
今払わなくてはいけない
ツケがツケを呼び
その利息で自らの首を絞めることに
ならないために
少しずつ改善していかねばならない

もちろん
利便性を放棄するという意味では無い
フロンガスがオゾン層を破壊するとして
使用しないようにしたように
便利で安価なものも
手放さなければならないこともある

しかしそれに代わる物を
考え出し、生み出していく力を
人類は持っている
努力を怠らなければ
そう簡単に人類滅亡とはならないはず

誰かがやるではなく
みんなでやる
少しくらいではなく
少しずつやる
千里の道もまず一歩を踏み出す

昨日始まったこの1年
さていかが成りますか

いや
なせば成る
なさねば成らぬ

ですね
にひひ
プレゼント・・・・・・走る人・・・