1966年、フランス。ジャン・ユスターシュ監督。
あらすじ↓
貧しい主人公の青年が、サンタクロースの格好をして通行人と写真を撮るというバイトを始める。
サンタとして通りに存在するだけで、普段は見向きもしてくれない女の子たちに囲まれ、ついつい調子に乗ってしまう主人公。
しかし、バイトが終わりサンタでなくなった彼は、再び冴えない自分の現実を目の前にするのだった……。
パリを舞台に、主人公を含む青年たちが、ことごとくナンパに失敗していく様をコミカルに描いたジャン・ユスターシュの中編作品。
モテたいのに全くモテない青年に、ジャン=ピエール・レオーがハマってますww
この人の、整った顔でありながら絶妙に抜けてる雰囲気が、凄い好きなんですよね
とにかく女性と親しくなりたい一心で、色んな人を口説きまくってるのに、空回りしてばかりのジャン=ピエール・レオー扮する主人公の、悲壮感が半端ない
こういう人、日本にも普通におるわー、イケメンなのに中身が残念で冴えない人(あ、私の大好きな岡田将生じゃないですよ?)ww
でも、何でもスマートにこなす男性より、こういう風に少し間抜けな男性の方が、どこか魅力的に見えてしまう不思議←お前だけww
ダッフルコート欲しさに何となくサンタのバイトを始めたら、急に女性が群がってきて、驚きと嬉しさを隠せない主人公なんですが……
白い髭をつけて、子供の夢の象徴でもあるサンタという仮面を被っている時の彼は、どこか俗世から浮いた感じで男性性というものを全く感じさせないので、女性も警戒しなくなるんですよね。
で、そんな女性心理を徐々に利用して女の人とイチャつき、束の間の全能感に浸る主人公……
でも、バイトが終わってサンタから自分自身に戻ってしまった途端、どの女性からも相手にされなくなってしまうんです
そんな孤独で悲しい青年の姿を、ユスターシュ監督が優しく見つめる一方で、冷たく突き放しながら描いています。←どっちだよ
青年たちがカフェに集まって、ナンパの話などで盛り上がるシーンなんて、孤独な者同士が暇を潰してる様にしか見えないんですが……
こういう一見、どうでもいい様な他愛もない仲間内の雑談って、実はすごく重要なのかもしれないですね。
しかも、会話中に咳払いしたりとか、リアル過ぎて演技に見えないのも良かったです。
会話が一瞬途切れて、だから何やねん?的な空気になる時とか……(あるあるー)。
ストーリーも単調で、特に大きな事も起こらないんですが……
そんな、何も起こらない日常の奥底に潜む、人間が抱く猛烈な倦怠や虚無、また、それらに伴う狂気めいたものが、じわじわと見えてくるんです。
『ぼくの小さな恋人たち』↓を鑑賞し、衝撃を受けて以来……
私にとってジャン・ユスターシュという人は、かなり興味深い監督です。
彼の中編作品『わるい仲間』を観て感激したらしいゴダールが、その後、製作に携わったのが本作『サンタクロース~』らしいですね。
やたらテーマを難解にしたがる知識人気取りのゴダール(でも惹かれるんよなぁ……)が、ユスターシュに感銘を受けたってのを知って、更に見直したわ……ゴダール。←何様?
そういや、劇中、ジャン=ピエール・レオーが、トリュフォーの『大人は判ってくれない』のポスターの前で立ち止まるシーンは、ちょっと面白かった……(あんたやん?みたいなww)
ゴダールとトリュフォーが決裂した後は、彼ら二人の間で苦しい思いをしたらしいジャン=ピエール・レオーですが……
ユスターシュからも気に入られたのか、後に『ママと娼婦』にも出演するんですよね……観てないけど。(←観てないんかい)
脱線しましたが……、ゴダールまでも認めさせたユスターシュの稀有な才能が、本作でも光っていました。
惜しくも42歳の時にピストル自殺しています。
本作のDVDには『わるい仲間』と他2篇も共に収録されてます。
そのうち『わるい仲間』も紹介しますね。