☝からの続きです。
「俺、触った人の心が読めるんだ!」
「この間の誕生日からこうなって、」
「童貞だと魔法使いになるっていうだろ?」
「あれ、ホントで、」
「サプライズの話、全部聞こえてた。」
「アントンビルの屋上だよな?」
「さっきも、俺らしくないって心配してくれて、」
「ごめん、」
「今まで黙ってて。」
「最低だよな?」
「でも、嘘じゃなくて、」
「安達!」
「落ち着いて。」
「嘘なんて思ってないよ。」
安達の腕をギュッと力強く握る黒沢の掌。
「触った人の心が読めるなら、
今、俺が安達に伝えたいことも分かるだろ?」
そんな心の声が聞こえてきそうで・・・
そして、安達も黒沢の心の声に耳を澄ませるけれど・・・
「安達がこんなに真剣に話してるんだ、
嘘なわけない。」
なのに安達は
黒沢のその手を
そっと解き払い・・・
多分、黒沢は必死に安達を理解しようと
心の声を送ったにもかかわらず、
安達からのこの拒絶は黒沢を酷く傷つけ、
更には、
「それだけじゃないんだ。」
「俺・・・、今、
魔法の力がなくなるのが怖い。」
「魔法なしじゃ、
黒沢とうまくいかないかもって。」
「こんなのおかしいだろ!?」
「こんな、一緒にいる資格ないだろ!?」
「もう、どうしたらいいか
分かんないんだよ・・・」
思い返せば、魔法の力で黒沢の気持ちを知って、
こんなにも本当の自分を見ていてくれて、
尚且つ、愛し続けてくれて、
勇気をくれて、応援してくれて、
そして、今日のプレゼンだって、
魔法の力があったから、
黒沢の思いに少しでも報いることができた。
魔法の力がなくちゃ、
黒沢の気持ちも分からなくなって、
分からなくなったら今度はその不安に押し潰されて、
自分にもっともっと自信がなくなって、
いつか黒沢に嫌われてしまうことに怯えて・・・
「俺は安達が苦しくない選択をして欲しい。」
「安達には笑ってて欲しい。」
「俺達・・・・・・・・・」
「もう、ここでやめておこうか?」
安達の落ちる涙が、零れて頬を伝う涙が
胸を突き刺し堪らずもらい泣き
声にならない声で「うん」と頷く安達。
「・・・・・・分かった・・・・・・」
きっと心の中で黒沢は、安達が首を横に
振ってくれることを懇願していたはずで・・・
「ごめん。」
安達が部屋から消えても、
そのまま身動き取れずにいる黒沢の哀愁漂う背中が
身を切るようにせつなく、
でも、この魔法が解けてから訪れる現実の方が
もっともっと残酷だから、二人の出した結論は
きっと正しかったはず・・・。
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WeTV番宣動画
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以上、
#30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい⑪-4-Ⅰ
#30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい⑪-4-Ⅱ
でした。
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