「監獄人別帳」やっと観れた!@シネマヴェーラ渋谷 | 夜遊びする頃を過ぎても

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久しぶりのブログです。

先週で終わってしまったシネマヴェーラの石井輝男監督特集。

食わず嫌いを克服したいなーと思いつつ、時間が取れず仕事帰りに立ち寄るスタミナもなく、ほとんど観れなかった。

でも荒木さん出演の「監獄人別帳」だけは!
と、ようやく馳せ参じ候。
一本立て上映です。

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「監獄人別帳」
1970年/東映/96分

渡瀬さんの初主演にして荒木さんの復帰一作目にして二人の初共演でもあった前作「殺し屋人別帳」に次いで「人別帳」第二弾!

またもお二人の共演!
と期待するも、今回は渡瀬さんと佐藤允さんの絆に、伊吹吾郎さんが絡むお話。
荒木さんは前回よりもっとちょい役で出番少なし。

お話の舞台は極寒の網走刑務所。
極悪警察署長に殺された父親の敵討ちが悲願の佐藤允、極貧出の親不孝者だが母親の死に目にひと目会いたい渡瀬恒彦、懲役20年で胸を病み先の長くない伊吹吾郎。

それぞれの思惑がぶつかって大脱獄をこころみるお話。

メインは佐藤允さんの復讐譚。
復讐譚といえば、脚本に掛札昌裕さんだが、石井監督の味付けによってギリギリとした心理的葛藤はなかったです。

佐藤允は獄中に虎視眈々とチャンスを狙う長男で、次男の尾藤イサオ、妹の賀川雪絵が後を追うように投獄されて役者が揃うところ、ワクワクしました。

渡瀬さんは、前回と同じくヤンチャ可愛く義侠心の男。
極貧の子供時代の回想シーンが、わりと長すぎるくらいに丁寧に描かれるのだけど、なぜかあんまり感情移入できないのが石井監督作のおもしろいところ。

伊吹さんは、物静かな侠気でピッタリの役。

刑務所ものらしい、囚人たちの非力感と閉そく感が、あんまりないのがよい。
カッコよかったのは、入牢した渡瀬さんたちの罪状自己紹介が、歌舞伎の名乗りみたいに七五調なの。

あと、女囚たちのカンカン踊り!
石井輝男的な、女優さんがかわいそうな感じのオゲレツだったらやだなーと色眼鏡で身構えてたら、雪絵さんを筆頭に、こちらも歌舞伎っぽい口上でパッパっと脱いでいくバーレスク的カッコよさの名シーンだった。
特に、沢淑子の堂々たる感じはカッコよかったなぁ。

彼らを見守るいい看守に内田良平、これがとっても情に厚い正義を好演して素敵だった。
悪役が光る人の善人役は、素敵さ倍増!

牢名主に上田吉二郎。

極悪警察署長に沢彰謙。
神経質な線の細さが、敏さまや安部徹の巨悪と違い、薄気味悪い冷徹非情のキャラに似合ってた。

直情型の熱血芝居陣の中でこなれた存在感をみせるのが、
密告者の大辻伺郎。
賀川雪絵に惚れて貫く一途、こういう男の純情はソクブン監督だったらもっと胸に来たかも。

そして荒木一郎さん。
何の伏線もない意味のないおかまキャラで、大泉晃に迫られ渡瀬さんに迫る、というカワイイ役どころ。
前作より出番激減。
ただ前回の一本気の若い衆に比べ、芸域の広さは観て得した気分。

脱獄の道程で、途中から放置プレイだった渡瀬さんの危篤の母のほうはどうなったんや?!とヤキモキしてたら、最後の最後に内田良平のセリフ一個で「ああよかった!」と強引に着地させちゃう力技。
石井ファン的笑い屋だけでなく、わたしも笑ってしまった。
血しぶきあげる復讐譚なのに何もなかったかのような明るさ。
地軸のよじれまくったC調にア然。

あと、やっぱり石井輝男はスカトロ好きというか、今回も一番のギャグがウンコがらみ。
こういう漫画ぽさがファンのハートを掴んでるのかな。
感情移入するしめっぽさがないから、楽に観られて観たあと引きずらないのだけど、
後半を占める手錠でつながれた雪山の逃亡劇は、カメラが引きで追いかけてるせいか、お話の緊迫感よりも、役者さんたちは体張って大変だな、とか思ってしまった。
今回、トークショーに行かれなかったけど、女囚役の片山由美子さん、手錠をはめた手首が凍傷になってしまったのだそうだ。

終映後、どこからともなく拍手が湧きました。
わたしも思わず拍手した。
作品にと言うより、貴重な作品を上映していただいたことへの感謝の気持ち。

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