「異常性愛記録ハレンチ」@シネマヴェーラ渋谷 | 夜遊びする頃を過ぎても

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映画を観たり、編みものしたり。←どちらも停滞中。。。
日々の記録帳です。←もはや日々でもなく。

【蘇る映画魂
The Legend of石井輝男】





「異常性愛記録 ハレンチ」
1968年/東映/89分


タイトルセンスのコテコテのいなたい感じがちょっと苦手ですが、前に東映チャンネルでながら見してはいた。
時間が合わず、「監獄人別帳」の他はこれだけ間に合った。
ほんとうは未見の数々、どれか観たかったとです。


これ消されたらもう、アメブロ引っ越すよー!
(ちょっと小さく表示してみました)
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冒頭のアヴァンギャルドな映像に期待アップ!
このまま観念的な、象徴主義的なエロス(なんだそりゃ)なのか??と思いきや、
コテコテ即物的エロだった。

バーのママが、妻子持ちの常連客にしつこくつきまとわれて、性暴力の犠牲となるお話。
現在ではストーカー法で完全にアウトな、付きまとい事件簿。
聞けば実際の事件をヒントにしてるとか。
それを社会派ではなくこういうエログロギャグにしてしまうノリの良さ。
付きまといの部分は、実話からなのだろうが、加害者男の、両刀遣い、SMプレイなどのハレンチは石井輝男の趣味センスでしょうか?
意外とエロくないのは、そのまんますぎるからかも?真面目というか。

バーのママ典子には清楚でキュートな橘ますみさん。

つきまとう男役の若杉英二の怪演はトラウマ。
「愛してるんだよ〜ん」がとにかくキモすぎる。
しかし天才的な役作りとも言える。
唇をトンガラして拗ねる幼児性は、冬彦さんの原型みたい。
佐野史郎さん、これで役作りしたんじゃないのかな?
まさに美女とケダモノ!

半分ギャグ化してるので逆に観やすい面もあるが、実際この男最低すぎる。
自分の欲望しかない、不誠実で冷たい甘ったれ男。家庭の事情がチラッと見えたとて、許せるもんじゃない。

ウチで録画をながら見してた時は、ちょっと共依存的な話かと思ってイライラしたが、あらためると、DV的恐怖支配なのね。ホント女の敵すぎる!

まわりが、女性のほうが男をたぶらかしたとか、甘やかしたとか、被害者女性側の落ち度を責めるのは、性犯罪の裁きが緩い日本の、昔も今も変わらずだなーと。
そういうとこ盛り込んでるのは、ただ面白がってるだけじゃなく、エンタメに昇華しつつ問題提起の意識も少しはあることと願うよーん。



石井輝男監督は心がないなーと思うのが、橘ますみさんをバスタブに沈めるシーン。
やさしい監督なら、一回は実際にやってもあとはそれっぽく見せるだけだったりするが、石井監督は、バッチリ本人のカットを撮る。
ますみさんが割と早くに引退されたのもわかる気がする。

(前にトークショーで杉作さん曰く、轢き殺したカエルに気まずさとカエルの気持ちも描くのがソクブン監督、轢き殺されたカエルの状態をそのまま撮るのが石井輝男、と石井監督の心の無さを説明されて、なるほどなーと思いました)

とか思いつつ、石井監督のことだから、ますみさんを助ける吉田輝雄もフタを開けたらド変態というオチかと思いきや、フツーに王子様で逆にビックリしました。

吉田輝雄さんとますみさんの車でデートのシーンなどは、音楽も美しく、おでこにキッスがサマになる紳士性、不浄でケダモノな若杉との対比が素晴らしい。


ところで私、まちがいさがしクイズとか得意なほうだけど、カットのつながりでつじつまが合わないところをいくつか発見。
若杉がオカマとSMプレイのとこでは、若杉の縛られた足が天井の鏡に映ったカットでは縛ってなく、アップになるとまた縛ってあった。
激しいキスのあと、剥がれた口紅が元に戻ったり剥げたりカットのたびに違う。
終盤のお店のシーン、吉田輝雄と話す橘ますみの髪型がツーショットとアップで変わっている。


個人的見どころは、
特別出演のゲイボーイズのみなさんのゴーゴーダンスで自己紹介のシーン!
プロフェッショナルを感じました。

いろんな変態を盛り込んだ冗長さと、
若杉英二のキモ過ぎる怪演に二度と見たくないくらいだけど、
橘ますみが超可憐でミニのファッションもグー。
八木正生の音楽もフリージャズでエレガントで最高だから困ります。





ロビーは圧巻でした。
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