今日のスケッチ。
川端康成のことを知らない人はいないだろう。
しかし、川端康成と同年で、川端以上に評価されていた作家、島田清次郎を知る人は少ない。
その島田清次郎の評伝。
「島田清次郎 誰にも愛されなかった男」 風野春樹著。
「大正時代を流星の如く駆け抜けた作家、島清こと島田清次郎。わずか二十歳で上梓したデビュー作『地上』が空前の大ベストセラーとなり、有名批評家もこぞって絶賛。
一躍文学青年たちのカリスマとなっていく。アメリカ、ヨーロッパを外遊し、アメリカではクーリッジ大統領、イギリスではH.G.ウェルズとも面会。
しかし、「精神界の帝王」「人類の征服者」と自称するなど傲岸不遜な言動は文壇で嫌われ、おまけに海軍少将令嬢を誘拐監禁したというスキャンダルによって人気は一気に急落。
出版社からも作品を受け取ってもらえなくなり、吉野作造や菊池寛らの家に押しかけて居座るなど、たびたび問題を起こすようになる。
やがて放浪の果て、清次郎は巣鴨町庚申塚にある私立精神病院「保養院」に収容された。このとき満二十五歳。天才と呼ばれた青年作家は、精神病院の患者となった──。
忘れられた作家・島田清次郎は、本当に天才だったのだろうか。そして本当に狂人だったのだろうか。その答えを知るために、生い立ちから絶頂期、精神病院入院後の生活までを、現役精神科医が丁寧にたどり直す新たな人物伝。将来への野心と不安の間で揺れる等身大の青年がここにいる。」
島田はいわゆる性格異常だと思う。
尊大な性格と異常な自己愛。
自分以外はすべて馬鹿であったろう。
連続拳銃殺人事件の犯人で死刑囚そして作家であった永山則夫が、たぶん、外の世界との接触が制限されているせいもあると思うが、獄舎の中で自己が肥大していき、自分こそ天才であるという妄想にとらわれていったのと同じだろうか。
しかし、島田の場合、小学生の時から、自分は天才だと思っていたようだから、永山の病気と違い、先天的にそういうものを持っていたのだろう。
ところで、地上という作品、全部は読んではいないが、面白いのだ。最初のうちは。
ベストセラーになるだけはある。
まだ20歳で、しかも異常といっていい性格で、なぜこのような人の心理を描きわけられるのだろうか。
「地上 地にひそむもの」 を読み終わったら感想を書く。ただ、読み終えないかもしれない。
読み進むにしたがって、そのストーリー展開についていけないような予感がある。
絵はがき。
キキョウ。
クズ。
