今日のスケッチ。
鳩ノ巣渓谷。
世界にはさまざまな民族がいて、さまざまな生き方をしている。
南洋の島々の人たちは、椰子の葉陰で昼寝して夜は踊って暮らしているイメージがある。
しかし、実際はそれでは生きていけない。
どこでも働かざる者食うべからずなのだ。
ところが、女だけが働いて男は遊んでいられる社会がある。
中国雲南省の標高約2700メートルに位置する湖周辺に住まうモソ族である。
母系社会として知られるモソ族の男は働かず、トランプやビリヤードをして遊んでいる。
その一方、女は大きな荷物を背負ったりして熱心に働いている。
「男は夜に奮い立つために、昼間は休むべきだ」と考えられているから、男は仕事をする必要はない。
羨ましいと思うが、男は通い婚で、夜、女の家にいるだけであり、子育てにも関与しない。
男を選ぶのは女であり、飽きられるとすぐ捨てられる。
中には同時に何人も夫を持っ女もいるだろう。
男が女の家で鉢合わせしても、修羅場にはならない。
嫉妬しないからだ。
たぶん嫉妬してはいけないのだろう。
私も嫉妬することはまずないから、モソ族の男の資格はある。
しかし、男を選択するのは女であり、男は容姿と心で選ばれる。
容姿に自信がないと、一生通うところがないのではなかろうかと心配だ。
そうなると、働かなくては食べていけない。
他の男たちが女からもらった小遣いで遊んでいる横で、必死になって袋貼りなどの内職をしている自分を想像してしまう。
働くような男は、女にますます軽蔑されるだろう。
江戸時代の黄表紙で、そういう社会を空想して面白おかしく書いてあったな。
働くのは女で、男は化粧をして女の帰りを待つだけ。
吉原も花魁道中は男だ。
それを女たちが見物している。
「見てみいな、今度の蒲生屋の光花魁、いい男だね、おいらも女と生まれたからには、一度はあんな男と寝てみたい」
実際にそういう社会があるとは、世界は広い。