それでは今回から、実例を元に更年期に関する情報を説明していきます。
各事例の個人的な情報については、プライバシー保護のため脚色を入れていることご了承ください。
事例1. Aさん、40代女性
【患者情報】
Aさん、40代、既婚(中学生の娘・夫)、パート勤務
・疲れやすく、寝ても疲れが取れない
・なかなか寝付けず、眠りも浅い
・イライラして、つい家族にあたってしまう
・ジーンズを履いたり、自転車に乗った時にデリケートゾーンの不快感がある
【検査オーダー】
・経腟エコー(膣・子宮・卵巣を見る)
・血液検査(一般+女性ホルモン)
【ドクターよりの説明】
・女性ホルモンの値はまだ出ていないが、自覚している症状は更年期症状だと思われる
・病名は萎縮性膣炎(以前は老人性膣炎と言われた)
・治療の選択肢として、ホルモン補充療法(HRT)・漢方薬などがあるが、希望を聞かせてほしい
・デリケートゾーンの不快感については、保湿剤などを販売しているので使うとよい
【Aさん】
「やっぱり…更年期なんだ、治療を自分で決めろと言われてもよくわからない。具体的に説明してくれないし。ホルモン剤ってなんだか怖いから、とりあえず漢方薬にしておこう」
更年期・更年期症状・更年期障害
更年期
閉経をはさんだ前後5年ずつの10年間をいいます。日本人女性の閉経の平均が50歳位のため、45~55歳ごろが更年期にあたると言われます。ただ、これには個人差があり45歳くらいで閉経を迎えるとすると、30代後半には何らかの不調を感じるようになります。
更年期症状
女性ホルモンの分泌低下による様々な心身の不調を言います。
更年期障害
心身の症状が重く仕事や家事ができない、寝込んでしまうなど、日常生活に支障をきたす場合を言います。
更年期には8割以上の女性が何らかの不調、不定愁訴を感じていると言われます。以前のように仕事や趣味に気力が湧かない、集中力が低下した、寝ても疲れが取れない…など
2割近い人は更年期の症状を感じなかったことになりますが、この人達にはいつくかの共通点があることがわかっています。
更年期の不調の要因
更年期に不調が起きる要因は、いくつか重なっているほど重くなりがちです。ひとつでも取り除くことが、今の不調を改善することにつながります。できることからはじめましょう。下記の図のように、それぞれの要因が重なり合う部分が多いほど不調がひどくなりやすくなるでしょう。
卵巣機能の低下
原因:女性ホルモンの急激な現象
対応:婦人科で相談(ホルモン補充療法、漢方薬、幸せホルモンを意識的に増やすなど)
性格・気質
原因:生真面目な性格、ストレスへの感受性、抵抗力など
対応:適度な運動、カウンセリングなどでストレスをためないなど
環境
原因:仕事でのストレス、子育て、子育ての巣立ち、親の介護など
対応:環境の改善、人間関係の改善など
まとめ
Aさんの事例でもわかるように、病院を受診して更年期症状だと言われ、どの治療を希望するかと聞かれてもすぐに判断することは難しいものです。ドクターもひとりひとりの患者さんに対応する時間は限られているため、それぞれのメリット・デメリットを丁寧に説明してくれることは期待できません。自分自身で治療についての知識を持ち、自分で選択できることが理想と言えます。
次回は、その治療のメリット・デメリットについてお伝えします。