医者の4割近くが“自信ない”!? 更年期医療の課題とは
【2022年4月放映 NHKスペシャル「♯みんなの更年期」】
上記の記事は、2022年4月にNHKスペシャル「♯みんなの更年期」で放映されたもの。
更年期について特集するメディアが少ない中、かなり切り込んだ内容の番組は大きな反響があったようです。
今回は私自身が更年期障害治療で病院選びに奔走した経験を元に、信頼できる病院・医師の選び方についてお話したいと思います。
身体の不調を感じたとき…まず何科を受診する?
疲れが取れない、眠れない、手の関節が痛い、手足が冷える、抑うつ気味…
更年期の症状は100人いれば100通り。
「あれは更年期症状だったんだ」と気付くまでに数年かかることも。
身体の不調を感じたとき、あなたはまず何科を受診しますか?
疲れが取れない・眠れない → 内科
手の関節が痛い → 整形外科
抑うつ気味 → 心療内科
こうした選択肢が一般的かと思います。
例えば手の関節が痛い時、まず整形外科を受診するのは間違っていません。
関節リウマチや関節症などの症状と酷似しているため、その可能性がないという根拠が必要です。
問題はそうした可能性を排除していき、いざ更年期障害と診断された後のこと。
そのまま診断された病院に通って治療を続けることは、良い選択なのでしょうか?
「良い」かかりつけ医とは
更年期障害の患者が自分のところに受診した際、7割弱の医師が婦人科でなくとも自分で治療すると答えています。
さらに、初診の問診時間は半数が10分以内という結果です。
ただでさえ精神的に不安定になりやすい中、初めての病院を訪れ、初対面の医師相手に自身の症状を説明するというのは大変なエネルギーを使うもの。
私が勤務するクリニックの患者さんの中には、あまりにもいろいろな症状があり、何から話せばよいかわからず泣き出してしまう方もいます。
初診時にしっかりと話を聞いてくれるドクターかどうかはかかりつけ医を選ぶ上で重要な判断材料ですね。
「とりあえず漢方薬」と処方されたけれど……?
更年期障害で病院を受診した場合、80%以上の医師が「漢方療法」を第一選択としています。
私の勤務するクリニックでも、「ひとまず漢方薬で様子を見ましょう」という診断がほとんど。
では、なぜ多くの医師がHRT(ホルモン補充療法)を避けるのか?
その理由としては、
・ 自分の専門外で詳しくない
・ 実際に処方した経験がない
・ 漢方薬に比べて副作用などの管理が難しい
・ 乳がん発症のリスクがあると聞いた
……などなど。
これらの理由はどれも医師の知識や技量に由来するもの。
はっきりと「詳しくないので別の病院を紹介します」と言ってくれるのが患者にとっては最善なのですが、そうはならずに「とりあえず漢方薬」が日本における更年期治療の現状です。
さて、それでは上にある「乳がん発症のリスクがある」という話は事実なのでしょうか?
HRTは乳がんのリスクが高い?
20年ほど前、米国で「ホルモン補充療法により乳がんのリスクが高まる」という報告があったものの、その後の研究で1000人の女性が1年間HRTを使用した場合、乳がんの増加は1人未満で影響はとても小さいとわかりました。
実はHRTが乳がん発症のリスクに及ぼす影響は非常に小さいというのが、世界では標準的な考え方です。
医師が前者の情報をアップデートしていなければ「HRTは危険」という認識で止まってしまいますが、現在はリスクを限りなく減らせる投与方法についても研究が進んでいます。
(天然型のホルモン剤使用、貼るタイプの薬を選択するなど)
医学の世界は日進月歩。
昨日有効とされていた治療が、今日には根底から覆されるなんてことが珍しくありません。
「常に最新の知識を追い続けている」
「自分が必ず正しいと過信せず、適切な情報を柔軟に取り入れている」
これもまた、良いかかりつけ医を選ぶために大切な要素です。
医師は女性の方がいい?
最近は、「スタッフは女性医師と女性技師だけ」という婦人科が増えています。
女性にとってデリケートな分野だけに、安心して受診することができるでしょう。
ただ、女性医師も男性医師でも知識や経験・力量・考え方は千差万別。
私自身がHRTを開始する前に3人の女性医師のクリニックを受診し、最終的に男性医師のクリニックに決めました。
まずは受診したい病院のホームページや投稿レビューなどをよく調べ、信頼できる医師を探すことが大切です。
信頼できるかかりつけ医を探す大切さ
世間に「ドクターショッピング」という単語が浸透してずいぶん経ちました。
医療機関を次々に渡り歩く患者を揶揄する意味合いを含んだ言葉ですが、こうしたイメージばかりが先行し、一度受診した医師を変えることに抵抗を感じる方は多くいます。
もしかしたら、遠慮や義理を重んじる日本人の気質も作用してしまっているのかもしれませんね。
「治療についてはよく分からないけれど家から近いから、とりあえず」
「昔から診てもらっているから、とりあえず」
どうか、そんな「とりあえず」であなたの身体を疎かにしないで。
症状や治療について不安があれば、まずは率直に医師に相談しましょう。
そこで話を聞いてもらえない・嫌な顔をされるようなら、その時点で更年期障害を治療する医師としては落第点。
セカンドオピニオンという患者の権利をもって、あなたの症状に寄り添ってくれる、信頼できる医師を探してください。