遺言を残そうと思ったら-15(遺言を残すならお早めに) | サラリーマン弁護士がたまに書くブログ

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2019年7月にうつ病を発症したことをきっかけにブログを始めたサラリーマン弁護士が、書きたいことをたまに書いています。

 

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

 

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

 

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

 

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

 

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

 

【 今日のトピック:遺言を残す 】

 

今日も引き続き遺言について書いていきます。

 

さて、一昨日ぐらいから「遺言能力がないと遺言は無効です」ということを前提にいろいろとお話してきました。

 

ただ、「遺言能力がないと遺言は無効です」というのは、「遺言の内容を本人が理解することができない状態で作成された遺言は無効です」ということで、なんか当たり前でわざわざ言わなくてもいいようにも思えます。

 

でも、遺言って自分1人で作成できるわけですから、これを踏まえると、「遺言の内容を理解できないまま作成する」って、ちょっと意味がわかんないですよね?

 

とはいえ、結構頻繁に、遺言能力の有無は紛争になっていて、そのほとんどのケースで、遺言を作成しようと思ったきっかけが、本人ではなく、本人以外なんです。

 

本人が「遺言残そう」と思い立って遺言を作成したのであれば、そりゃあ、遺言の内容は理解できているでしょう。

 

しかし、本人以外の誰かしらの「働きかけ」なり「そそのかし」があったんだとしたら、「遺言の内容を理解できないまま作成した」という可能性が出てきます。

 

だから、遺言能力の有無を裁判で争う場合は、遺言を作成した経緯がめちゃくちゃ大切です。

 

例えば、本人が誰にも相談せず自分で公証役場に電話して公証役場と日程を調整し、遺言の内容を伝え、決まった日時に自分だけで公証役場に行き、公証人と話をして公正証書遺言を作成したのであれば、まず間違いなく公正証書遺言が無効とされることはないでしょう。

 

だって、本人がこれだけいろいろと段取りできているわけですから、遺言の内容も理解できていないんてあり得ません。

 

・公証役場に電話して遺言の内容を伝え

・公証役場と日程を調整し

・実際に公証役場に行って公証人と話し、

・最終的に公正証書遺言に署名押印し、

・最後に料金を支払って帰る

 

この各ステップをこなさないと、1人で公正証書遺言を作成することはできません。

 

そうすると、「1人で公正証書遺言を作成した」という事実は、それだけで、遺言能力を具備していたことを示すと思います。

 

この意味でも、公正証書遺言には、遺言能力の争いを回避する機能があると思います。

 

しかし、実際は、自分1人だけで公正証書遺言を作成することはそれほど多くないと思います。

 

というのも、多くの人は、かなり高齢になってから遺言を作成するので、自分ひとりだけでは、公証役場とやり取りしたり、実際に公証役場まで行ったりするのも不自由になっていたりするからです。

 

ちょっと脱線しますが、人はいつか死ぬわけで、それは若かろうが年をとっていようが変わりません。

 

多くの人は、年をとって初めて死を意識しますが、僕としては、これが合理的とは思えません。

 

確かに、世の中には「平均寿命」や「平均余命」なるものがあって、「平均すれば残りこれくらい生きる」ということはだいたい計算できます。

 

その計算によると、年をとればとるほど「生きられる平均時間」は減っていきますが、とはいえ、他でもない自分自身があとどれくらい生きられるかは、年をとろうが若かろうが、死ぬその瞬間までわからないままです。

 

僕らは、誰しも、いつ死ぬかわからないまま死んでいきます。

 

だから、死は常に隣り合わせで、死は常に意識して然るべきです。

 

しかし、毎日毎日死を意識しては生きてられませんし、それに加え、残念ながら、実際のところそんなに簡単には死なないので、僕も常に死を意識しているわけではありません。

 

とはいえ、「年をとったことで死を意識した」的な感じで遺言の作成を思い立つ人たちがいますが、「死ぬことなんて最初からわかっているでしょ」と僕は思ってしまいます。

 

「遺言を残さなくてもいい(残さないほうがいい)」と思っている僕が言うのもアレですが、遺言を残そうと思うきっかけは、「死を意識した」ではなく、「自分の財産を渡したい人ができた」というのが正しいと思います。

 

さて、だいぶ脱線しましたが、この「死を意識したから遺言を残す」という考えは、「死を意識するまで遺言を残さない」ということになり、その結果、頭も体も衰えた段階で遺言を残すという事態が起きてしまいます。

 

頭も体も衰えているからこそ、遺言能力について死後に紛争になります。

 

この意味で、「死を意識した」ことを遺言作成のきっかけにしないほうがいいと思います。

 

さて、かなり高齢になって公正証書遺言を作成しようとすると、息子や娘のお手伝いが必要になります。

 

息子や娘が、本人に代わって公証役場とやり取りしたり、遺言の内容を伝えたりします。

 

そうすると、本人が遺言の内容を理解できないまま遺言が作成されてしまう危険性が高まってしまいます。

 

しかし、公正証書遺言を作成する際は、公証人が本人の意思を確認し、その意思確認を、2人の証人が隣で見ています。

 

これの確認作業を通して、遺言の内容を本人が理解できていると認められる場合に限って、公正証書遺言が正式に作成されます。

 

公証人と証人2人の合計3人が、本人が考えているとおりに遺言が作成されたと思ったからこそ、公正証書遺言は作成されるのです。

 

公正証書遺言は、こういう方法で作成されるので、遺言能力が死後に否定される可能性は、一般的に言えば低いです。

 

これに対し、自筆証書遺言は、紙とペンと印鑑と朱肉があれば作成できるので、公証人と証人2人が本人の意思を確認するというプロセスはありません。

 

遺言の内容を理解できないまま、誰かが言ったとおりに本人が遺言書を書き上げれば、見かけ上は、方式ミスなく遺言が残されたような体裁が整います。

 

しかし、誰かが言ったとおりに作成し、本人がその内容を理解できていなかったのであれば、その遺言は無効となってしまいます。

 

こういう感じで、一般的に言えば、公証人と証人2人が意思確認プロセスのある公正証書遺言のほうが、自筆証書遺言よりは、遺言能力が死後に否定されにくいとは思います。

 

しかし、公正証書遺言でも遺言能力が否定された例はたくさんあります。

 

↑の確認作業だけでは遺言能力がないことを見抜けないこともそりゃあります。

 

やっぱり、「年をとって死を意識するまで遺言を作成しないこと」が根本的な原因だと思います。

 

「遺言」と「死を意識」は全く別問題なはずなのに(死は常に隣り合わせなので)、死と遺言が結びついていて、死を意識するまで遺言を残さず、そのせいで、自分ひとりだけでは遺言が作れない状態となってしまいます。

 

自分ひとりで公証役場に電話して公正証書遺言を作っておけば、遺言能力なんて全く紛争にならないのに、遺言を作成する時期が遅いからこそ、紛争なってしまいます。

 

遺言を残したいなら、もっと早く遺言を残さなきゃいけません。

 

遺言能力紛争の原因は、遺言作成時期が遅いことで、その遅さの根本的な原因は、死が常に隣り合わせであることを知らずに生きていることです。

 

残念ながら、他でもない自分がいつか死んでいなくなってしまいます。これは絶対に抗えない現実です。

 

だから、財産を渡したい相手がいるなら、今この瞬間が遺言チャンスです。

 

死後に紛争を巻き起こさないよう、今すぐ遺言を作成してください。

 

くれぐれも、明日は今日より1日だけ老化していることをお忘れなく。

 

それではまた明日!・・・↓

 

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