弁護士の僕ならこうやって立退きに対処します-6(「正当の事由」と立退料) | サラリーマン弁護士がたまに書くブログ

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2019年7月にうつ病を発症したことをきっかけにブログを始めたサラリーマン弁護士が、書きたいことをたまに書いています。

 

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

 

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

 

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

 

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

 

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

 

【 今日のトピック:賃貸物件の立退き 】

 

今日も、引き続き、立退きについて書いていきます。

 

さて、昨日までの2日間で、立退きに関する法的知識を確認しました。

 

「法的知識」といっても、大家さんが法的に立退きを請求するためには、借主(住人)との「賃貸借契約を終了させなければいけない」という単純な話なので、つらつらと、賃貸借契約を終了させる方法について説明してきました。

 

家賃の滞納があれば、滞納家賃全額を督促して、期限までに全額の返済がなければそれで契約が終了します。

 

でも、家賃の滞納がない場合は、契約期限の6ヶ月前までに「更新の拒絶」をするか、または、「解約の申入れ」から6ヶ月が経過することで、契約が終了します。

 

「更新の拒絶」とは、「6ヶ月後に契約期間が満了しますけど、それ限りで自家は契約を更新しませんからね」という大家さんからの通知のことです。「解約の申入れ」とは、「6ヶ月後に契約が終了しますのでそれまでに立ち退いてくださいね」という大家さんからの通知です。

 

ただ、「更新の拒絶」または「解約の申入れ」によって、6ヶ月後に必ず契約が終了するかというとそうではなくて、大家さんが「更新の拒絶」または「解約の申入れ」を借主に通知した時点で「正当の事由」が必要です。

 

「正当の事由」がなければ、いくら、大家さんが「契約は更新しませんからね!」とか「6ヶ月後に契約は終了しますからね!」と言っても、契約は終了しません。

 

契約が終了しないのであれば、借主の「住む権利」も消滅しないので、大家さんが法的に立退きを求めることはできません。

 

そうすると、大家さんが法的に立退きを請求できるかどうかは、「正当の事由」の有無に左右されることになります。

 

「正当の事由」があれば、法的に立退きを請求できます。

 

逆に、「正当の事由」がなければ、法的に立退きを請求できません。

 

そして、昨日は、「正当の事由」の判断基準について説明しました。

 

「正当の事由」の有無を判断する際は、①大家さんが契約を終了させたい理由と、②借主(住人)が住み続けたい理由を「比べ」ます。

 

そして、①が②を上回ることが必要です。

 

ただ、①が②を上回れば、それだけで「正当の事由」が満たされることはほとんどなく、立退料を支払うことで初めて、「正当の事由」が満たされるようになります。

 

ここまでが昨日の復習で、いよいよ、「僕が大家さんから立退きを求められた」というエピソードに戻ります(笑)。

 

このブログは、「弁護士である僕が仮に法的紛争に直面したらどうやって対応するか?」というテーマで進めていますが、今日やっと、ここに戻ってきます。

 

さて、↑に書いたような法的知識を前提にすると、大家さんから立退きを求められた僕は、いったいどうするか。

 

↓のブログでは、「とりあえず無視します」と書きました。

 

で、「とりあえず無視」すると、本気で大家さんが立退きを求めているのであれば、無視している僕に対し、大家さん(または管理会社)から、次のアプローチがやって来ます。

 

実際に家まで来たり、電話がかかってきたりして、立退くよう説得を受けるわけです。

 

まあ、怖がることはありません。相手をこわがらせるようなやり方をしてしまうと、確かに、うまく運べば、怖がった相手がさっさと立ち退いてくれるかもしれませんが、逆に、相手が怖がるどころか感情的になって、意地でも立ち退かないと宣言してしまうかもしれません。

 

そうなると、立ち退かせたい大家さんとしては非常に困ってしまいます。

 

「立退き」とは、「アパートの中身を全部ほかの場所に移動させる」ということですが、いくら大家さんがマスターキーを持っていたとしても、家の中身を勝手に全部移動させたら犯罪です。

 

そんな強硬手段ができないのは大家さんもよくわかっていますし、仮にそんなことしてしまうと、住民から刑事告訴されかねません。

 

だから、立退きは、なるべく穏便に進めるのがいちばんなんです。

 

なるべく穏便に説得して、自発的に立ち退いてもらえるのがいちばんです。

 

こう考えると、大家さんとしては、立退き要求を無視している僕に対し、次のステップとして、管理会社の担当者から電話させたり、担当者を家によこしたりして、立退きの説得を試みるでしょう。

 

もし仮に、アポイントもなく担当者がやってきたら、僕は激おこです。

 

事前の約束もなく自宅を訪れて立退きを説得するなんて、そんな非常識なマネするような大家さんからの立退き要求なんか応じるわけありません。

 

こう考えると、担当者は、電話か何かで事前にアポイントをとってくるはずです。

 

その事前アポイントの電話で、僕だったら、大家さんが立退きを求めている理由を聞き出します。

 

「急に立ち退いてほしいと言われても、こちらもすぐに引っ越すことは仕事も忙しくてムリですし。そもそも、どういった理由で立ち退いてほしいんですか?」と聞きます。

 

管理会社や大家さんとしては、立退きをお願いしている立場ですから、こういった質問には丁寧に答えるでしょう。

 

「理由は教えられません」なんて言えば、「理由もわからずに立ち退けなんて虫が良すぎるだろ」と僕に思われて、いちばんに目指すべき「穏便な立退き」が達成できなくなってしまいますからね。

 

「理由を聞き出す」といっても、僕ならかなりつっ込んで聞きます。

 

「老朽化で取り壊す予定です」という理由だけを聞き出して終わることはありません。

 

・「老朽化」って、どこかガタがきたりしているんですか?

・僕は普通に住めていますけど、どこが「老朽化」しているんですか?

・取り壊した後の土地はどうやって使うのですか?

・今の収益と取り壊し後の収益は、どれくらい差があるんですか?

 

こんなことを聞き出します。

 

そして、こういった質問にある程度具体的に答えてきたら、正直なところ、最終的に「正当の事由」が認められてしまうことを覚悟します。

 

というのも、僕は現在ひとり暮らしなので、このアパートに住み続けなきゃいけない理由は、正直なところ、それほど見出し難いからです。

 

職場の近くで、同じような間取りで同じような価格帯のアパートは、正直なところ、いくつかありますから、「そっちに住めばいいでしょ!」と言われれば、反論のしようがありません。

 

もちろん、立退き料なしで「正当の事由」が具備されることはないでしょうが、ただ、「正当の事由ナシ」で、大家さんからの立退き要求が法的に否定される可能性はかなり低いと予測します。

 

ただ!

 

ここで大切なのは、最終的に「正当の事由」が具備されそうだとしても、「わかりました。じゃあ、立退きます」と言わないことです。

 

「立退き料」というのは、「立ち退きません!」と言っている人に対して、「お願いだから立ち退いてください・・・!」と大家さんが支払うお金です。

 

立ち退いてくれる人に、大家さんは立退き料は払いません。払わなくても立ち退いてくれるからです。

 

だから、「立ち退きますね」と大家さんに伝えて、自分で物件を探して、初期費用を払って契約を結んで、引越しも済ませた後に、「じゃあ、立退き料ください」と大家さんに伝えても、「は?立ち退いてるじゃん」と言われてオシマイです。

 

次の物件の初期費用を払って契約を済ませてしまったら、もう完全にアウトです。立退き料貰えません。

 

黙っていても立ち退いてくれるからです。

 

だから、とにかく、大家さんに、「こいつは立ち退かねえな」と思わせることが大切で、その点では、「とりあえず立ち退き要求を無視する」という作戦は有効だと思います。

 

そうすると、次の一手を大家さんが打ってきますので、その際に、「どうして立ち退きを求めているんですか?」と聞き出します。

 

で、聞き出すだけで、その電話が終わるわけなく、大家さんは大家さんで、こちら側の事情を聞き出そうとします。

 

大家さんとしては、「この物件じゃなくてもいいでしょ?」という事情を知りたいわけで、職場とか生活の基本情報を聞き出そうとしてきます。

 

「ああ、その職場だったら、他の物件でもいいですよね?」とか「ひとり暮らしなら別にこの物件じゃなくてもいいでしょ?」とか言ってきます。

 

そう言われたら、「いやあ、この物件、職場にも近くて、収納も多くて家賃も手頃で、築年数の割にキレイだし、他に替えがきかないんですよねぇ」と、物件を褒めながら立ち退きたくない意思をさらっと伝えます。

 

とにかく、立ち退きたくないという体裁を整えます。あくまで、「僕なら」です。

 

僕は、この物件が気に入ってくれているので、大家さんが立退きを諦めてくれたら、それはそれでいいと思っているので、かなり強気で交渉します(という設定です)。

 

ただ、「立ち退くのはいいんだけど、なるべくたくさん立退き料もらいたいなぁ」という考えだと、少し話は変わってきます。

 

強気で突っぱね続けると、最終的に大家さんが立退きを諦めてしまう可能性があるからです。

 

大家さんが立退きを諦めてしまうと、立退き料は貰えませんよね。

 

大家さんがどれくらい本気なのか判断するためにも、情報を聞き出すのが大切です。

 

例えば、僕が過去に扱った案件では、大家さんが、住民に立退きを求める前に、既に、その建物を取り壊して駐車場として貸し出す約束を済ませていて、その期限が迫っていた、という事情がありました。

 

大家さんは、駐車場として貸し出す相手との力関係が弱かったので、是が非でもその期限までに建物を取り壊す必要があり、その期限までに立退かせるために、法外な立退きを払う用意がありました。

 

この「大家さん」は、不動産会社で、資金力もありましたし。

 

こういった事情があれば、大家さんが立退きを諦めることはありませんので、かなり強気で交渉して、高額の立退き料を獲得することができます。

 

そこを目指すためにも、

 

・立退きを求める大家さんの事情を聞き出す

・聞き出した結果、大家さんの本気度が高いと判明したら、「こいつは立ち退かねえな」と大家さんに思わせる

 

こういった点が大切になってきます。

 

もちろん、あくまで紳士・淑女的に対応しましょう。極端に嫌がらせ的な言動をとるよりも、冷静に対処したほうが、最終的な立退き料は高額になるはずです。

 

今日はこれくらいにします。

 

それではまた明日!・・・↓

 

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