弁護士の僕ならこうやって立退きに対処します-4(法律知識の確認:きちんと家賃を払っている場合) | サラリーマン弁護士がたまに書くブログ

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2019年7月にうつ病を発症したことをきっかけにブログを始めたサラリーマン弁護士が、書きたいことをたまに書いています。

 

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

 

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

 

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

 

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

 

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

 

【 今日のトピック:賃貸物件の立退き 】

 

今日も、昨日に引き続き、立退きに関する法的知識を確認していきます。

 

「法的知識」といっても、難しい話ではありません、と昨日もお伝えしました。

 

要は、「立ち退かせたいなら契約を終了させなきゃいけませんよね」という話でした。

 

契約が続いている限り、大家さんが、借主を立ち退かせることはできないのです。借主との賃貸借契約が続いている限り、借主は「住む権利」を持っているからです。

 

大家さんが借主を立ち退かせるには、契約を終了させて、借主の「住む権利」を消滅させなきゃいけません。

 

昨日は、家賃を滞納している場合に、大家さんが契約を終了させる方法についてお話ししました。

 

家賃を滞納していても、それだけで契約が終了するわけではなく、まずは、滞納家賃全額の支払いを要求して、それでも全額返済されなかったら、契約が終了する、という話でした。

 

家賃を滞納している場合も、こうやって契約を終了させて初めて、大家さんは立退きを法的に請求できるようになります。

 

じゃあ、家賃を滞納していない場合は、どうやって契約を終了させるのでしょうか。

 

そもそも、アパートの賃貸借契約って、契約書に契約期間が書いてありますよね?

 

僕が現実に借りているアパートもそうです。借りた月から2年間の契約期間が書いてあって、ぱっと見だと、その契約期間が満了したら、出ていかなきゃいけないようにも見えます。

 

しかし、2年間の契約期間が満了しても、賃貸借契約って更新されますよね。僕も、今のアパートに住み始めて5年目になりますが、2回更新されています。

 

この「更新」って、大家さんが「更新してあげている」のではなく、僕が「更新してあげている」のです。

 

どういうことかというと、賃貸借契約を続けるかどうかの決定権は、基本的に借主が握っています。

 

借主は、引っ越したいときに引っ越すことができるし、2年の契約期間が満了しても、更新したいなら更新することができます。

 

これに対し、大家さんは、そうなっていません。

 

大家さんは、「新しい借主を募集するのもめんどくさいから、全員更新してほしいな」と思っても、借主を無理やり引き留めることはできません。

 

大家さんは、「去る者は追わず」なのです。「去る者を追えず」と言ったほうが正確でしょうか。きちんと家賃を払ってくれて、使い方もキレイでという借主は、大家さんとしては、引き続き住み続けてほしいですが、その借主を大家さんが法的に自分の物件に縛り付けることはできません。

 

この逆もそうで、「この住民には出ていってほしいな」と思って、契約を終了させたいと思っても、簡単には契約を終了させることができないのです。

 

契約を終了させる方法は2つあります。1つめは、「更新の拒絶」です。

 

「更新の拒絶」とは、その名のとおり、「次の更新は拒否しますからね」という意味です。

 

例えば、僕の住んでいるアパートの契約期間が10月30日までとすると、「10月30日までで契約は終了して、11月1日からは契約を更新しませんからね」というのが、「更新の拒絶」です。

 

もう1つは、「解約の申入れ」です。

 

これは、例えば、「来月いっぱいで解約させていただきます」という大家さんからの通知です。

 

契約期間とは関係なく、契約を終わらせようとするのが「解約の申入れ」です。

 

じゃあ、「更新の拒絶」なり「解約の申入れ」なりを、大家さんがすれば、家賃をきちんと払っていたとしても契約が終了するかというと、そうではありません。

 

そもそも、「更新の拒絶」と「解約の申入れ」は、6か月の猶予期間が必要です。

 

つまり、「更新の拒絶」は、契約期間の6か月前までに借主に通知しなければなりませんし、「解約の申入れ」をしたとしても、契約が終了するのは申入れから6か月後です。

 

だから、借主が、契約期限の1か月前に「もう更新しないからね」と通知しても、契約は更新されちゃいます。時すでに遅しです。

 

(しかも、アパートなどの賃貸借契約は、いちど更新されると、更新後の契約は、更新前とは違って、期間が無制限になります。2年の契約が更新されて、また2年になるのではなく、2年の契約が更新されると、期間無制限になります。契約書に、これとは違うことが書いてあっても、それは法的に無効です。)

 

そして、「来月いっぱいで立ち退いてくださいね」と「解約の申入れ」をされても、契約が終了するのは「来月」ではなく、「6か月後」です。

 

↑に書いたとおり、契約が更新されると、期間無制限となるので、「更新」はあり得なくなります。そうすると、大家さんが契約を終わらせるには、「解約の申入れ」をするしかなくなるのですが、その「解約の申入れ」も、申入れから6か月が経過しないと、契約は終了させられません。

 

このように、大家さんが契約を終わらせたくても、契約が終了するのは早くても6か月後なのですが、いちばん大切なのは、「更新の拒絶」や「解約の申入れ」がそもそも有効なのか、という点です。

 

つまり、契約期限の6か月前までに「更新の拒絶」をすれば、必ず更新を拒絶できるわけではないし、同じように、「解約の申入れ」も、それをすれば必ず6か月後に契約が終了するわけではありません。

 

「更新の拒絶」と「解約の申入れ」は、その時点で「正当の事由」がなければ、無効です。

 

つまり、大家さんが、契約期限の6か月前までに「もう更新しないからね」と通知しても、その時点で「正当の事由」がないのなら、契約は更新されちゃいます。

 

大家さんは、「契約期限の6か月前までに通知する」という法律の決まり事をきちんと守っていますが、「更新しないからね」と通知した時点で「正当の事由」がないなら、いくら↑の決まり事を守っても、契約は終わりません。

 

同様に、「6か月後には契約終了となります」と通知して、大家さんが「解約の申入れ」をしたとしても、通知した時点で「正当の事由」がなければ、6か月後も契約は終了しません。

 

今日はこれくらいにして、明日、「正当の事由」について説明したいと思います。

 

今日のブログは少し難しかったかもしれませんが、大家さんから契約を終わらせることがめちゃくちゃ大変だということがイメージできたでしょうか?

 

大家さんは、契約を終了させないと、法的に立退きを請求することができませんが、しかし、きちんと家賃を払っている借主との契約を終了させるには、契約期限の6か月前までに「更新の拒絶」を通知しなきゃいけなかったり、「解約の申入れ」も、契約が終了するのは、それから6か月後だったりしません。

 

今すぐにでも立ち退かせたい大家さんとしては、「そんなに待てない!」と思うでしょうが、法律にはこう書いてあります。

 

しかも、「更新の拒絶」や「解約の申入れ」は、「正当の事由」があって初めて有効になります。

 

いやはや、大家さんが契約を終了させるのは、なかなか骨が折れそうです。

 

「正当の事由」については、明日説明します。

 

それではまた明日!・・・↓

 

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