#106 不倫・損害賠償請求-⑥ | サラリーマン弁護士がたまに書くブログ

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2019年7月にうつ病を発症したことをきっかけにブログを始めたサラリーマン弁護士が、書きたいことをたまに書いています。

昨日のブログ(こちら)の続きです。もう今日で6日目です。

こういう個人的なブログは,書きたいことを書きたいように書けるので,本当に良いです。

 

憲法では「表現の自由」というのが保障されています。「表現の自由」という権利の存在については,ご存じの方が多いと思いますが,法学部ではもう少し突っ込んで,表現の自由がどうして保障されているのか,その理由についても学ぶんですね。

で,その中で,「自己実現の価値」という概念が出てくるんですが,要は,表現する行為(例えば,文章を書いてそれを発表したり,集会をしたりする活動)は,その表現者にとって,「自己実現」になるから重要なんだ,ということで,この「自己実現の価値」が表現の自由が保障されている理由となっています。

 

毎日文章を書いていると,表現活動が自分にとって「自己実現」になることを日々実感しています。憲法で表現の自由が保障されていて本当に良かったです。おかげで自己実現できています。

 

それと,このブログでも簿記の話をしていましたが,簿記合格しました!2級も3級も合格しました!点数もわかるのですが,2級は90点,3級は100点でした!なかなか良い成績だったので,嬉しかったです。

 

さてさて,本題に入ります。

 

昨日は,不倫が,不倫した配偶者と不倫相手の2人で1つの「共同不法行為」であるため,どちらか一方が慰謝料全額を支払った場合,例えば,不倫した夫が妻に慰謝料100万円全額を支払った場合,夫は,後日,不倫相手に対して100万円のうち不倫相手の負担部分を支払うよう請求できるということでした。これが「求償」という話です。

 

理屈の上では,

・不倫した夫と不倫相手は,どちらも慰謝料全額の支払いを拒めない

・慰謝料全額を支払った夫は,後から不倫相手に求償する

というのは間違いありません。

 

ところが,昨日のブログでも説明しましたが,実際は,「求償あり」か「求償なし」か,よく問題となって,理屈上は「求償あり」なんですが,不倫相手側=慰謝料支払う側の弁護士は,「求償なし」を要求してきます。

つまり,「慰謝料全額は支払わないよ。自分が負担する部分だけ支払うよ」と主張してくるわけです。これが「求償なし」という意味です。「求償なし(求償しない)」ということは,つまり,「いったん全額支払った上で後から不倫した夫に負担部分を支払ってもらう」=求償をしないということですから,「最初から自分の負担部分しか払わない」ということです。

 

「求償なしがイヤなら裁判して」という捨て台詞を弁護士が吐くこともあります(言い方はもっと丁寧ですが)。

 

こういう要求を受けて,「求償なし」で話がまとまることも多いんです。この理由については,昨日のブログでもいろいろと書きましたが,やっぱり,訴訟を提起することによって,紛争が長引いたり,任意の支払いを受けられる可能性が低くなったりするリスクが出てくるので,法律上は全額の支払いを求められるけれども,このリスクを回避する(紛争の早期解決と自発的な支払いを確保する)ために,求償なしで交渉することが多いです。

 

その結果,不倫相手から不倫相手の負担部分のみの支払いを受け,慰謝料の残りは,不倫した夫から支払ってもらう,そういった結論になることも多いです。

 

(ちょっと独り言ですが,夫からは慰謝料もらうつもりない妻が結構います(その逆で妻からは慰謝料もらうつもりのない夫もいます)。不倫したのに離婚しない夫婦もいますからね。離婚せずに一緒に暮らしているんだったら,夫と妻で家計は同じですから,夫から慰謝料もらっても意味ありません。こうやって,不倫相手からだけお金をもらおうとする=不倫相手だけは許せない!という妻(又は夫)が結構いるので,不倫相手側の代理人になった場合は,夫にも慰謝料を請求しているのか妻側の弁護士に必ず聞きます。)

 

まあ,どうしても「求償なし」に納得できず(つまり,どうしても不倫相手から慰謝料全額もらいたい),なおかつ不倫相手も「求償なし」にこだわる場合は,訴訟を提起しますけどね。交渉はいつまでもやるもんじゃありません。そもそも,僕ら弁護士に依頼する理由の1つは,紛争が(少なくとも法的には)終わることです。弁護士は訴訟を提起して,判決をもらい,その判決に納得できなかったら最高裁まで上告して・・ということができます。そして,そうやったら,必ず法的に紛争は終わるんです。

そうやって,法的に紛争をむりやり終わらせることができるのが弁護士ですから,あくまで任意の話し合いでしかない交渉をいつまでも弁護士が続ける意味はないのです。

 

閑話休題

 

こう話してくると,じゃあ,「不倫相手の負担部分」ていくらなんだよ?という疑問が当然浮かんできますが,どちらかがよほど強引に不倫を迫ったのでない限り,負担割合は2分の1ずつになると考えていいでしょう。つまり,慰謝料全額を払った後に求償できるのは,支払った金額の2分の1です。

 

↑に書いた「慰謝料100万円」の例だと,100万円を支払った夫は,不倫相手に対し50万円を請求できることになります。もっと支払ってほしい場合は,不倫相手に2分の1以上の責任があることを立証しなければなりません。逆に,不倫相手が50万円も支払いたくないのであれば,夫の責任が2分の1以上であることを立証しなければなりません。

 

で,ここまで「不倫は2人で1つの不法行為」と説明してきましたが,そうじゃない場合もあります。不倫事件では本当に頻繁に問題となるのが「結婚しているなんて知らなかった」という主張です。「セックスはしたけど結婚しているなんて知らなかった!」という主張,僕も経験があります。

 

しかし,よくよく考えると,「結婚していることを知っていたかどうか」にかかわらず,結婚している人とセックスしてしまえば,それが「不倫」=不貞にあたることは否定しようがありません。

 

じゃあ,「知っていたかどうか」の問題は法的にどんな意味があるかというと,不法行為の要件とされている「故意又は過失」の有無と関係してくるのです。

不法行為が成立するには,「故意又は過失」が必要と民法には書かれているのですが,「故意」とは「わざと」という意味で,「過失」は「不注意で」という意味です。不倫に置き換えれば,「わざと不倫した」又は「不注意で不倫した」ということです。こういった「故意又は過失」がないと,不倫を理由に慰謝料を請求することはできません。

 

で,最初に断わっておきたいのは,「結婚していることを知らなかったらOK=慰謝料払わなくていい」じゃないんです!そんな単純じゃない。

 

確かに,結婚していることを知っていたら,慰謝料払わなくちゃいけません。だから,「結婚していることを知っていたらダメ=慰謝料払わされる」は正しいです。

 

でも,その逆は違います。

「結婚しているのを知っていた」というのは,↑の「故意」があったということです。つまり,「結婚していることを知りながらわざとセックスした」ということになるわけです。

 

そう考えると,「結婚していることを知らなかった」場合は,確かに「故意」はありませんが,「過失」があるかもしれませんよね。過失があったら,結婚していることを知らなくても,慰謝料を支払わされるのです。

じゃあ,「過失」というのはどういう状態かというと,「不注意で知らなかった」ということですから,言い換えると,「常識的に考えて,結婚していることを知っている(認識できている・理解できている)はずなのに,結婚していることを知らない」というのが「過失がある」状態を指します。

 

じゃあ,具体的にどういった場合に過失があるかというと,「常識的に考えて結婚を認識できている状態」なんてケースバイケースで,一般化しにくいです。各事件の事情によって,全然違う。

ただ,1つ着目するべきと思っているのは「出会い」です。

当たり前ですが,夫(又は妻)は,不倫相手とどこかしらで出会って不倫に至るわけです。その出会いが,例えば,お互いの家族構成を把握しているご近所さん同士であれば,「結婚しているなんて知らなかった」というのは過失アリとなるでしょう。

そうじゃなくて,出会いがマッチングアプリで,結婚していることを夫(又は妻)が一切匂わせていなければ,過失ナシとなるでしょう。「平日夜しかデートしていなかった」という事情があったとしても,夫(又は妻)が「平日は仕事で休日出勤も多いんだよね」と説明していたとしたら,結婚していることに気づかないとしても無理はなく,やはり過失ナシになるでしょうね。

 

いろいろと書いてきましたが,これくらいで不倫の話は終わりたいと思います。

 

また明日から違うテーマでいきます!


それではまた明日
 

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