盛岡食いしん爺日記
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盛岡の官庁街から中津川を東に渡ると、
マンションに負けずに古い町並みが目立つ。
盛岡らしい街。
畳一畳ほどもある濃紺の暖簾。
この暖簾が営業中の証。
支那めん処「はすの屋」。
入口には簾。
潜るとまた引戸がある。
長年通う店。
Emmet Cohen w/ Cyrille Aimée & Dan Wilson | Come Fly With Me
スープがある限り3時半頃でも暖簾が下がる。
ランチを逃しそうになった時にはありがたい。
気温35度。
今日目指して来たのは「冷たい支那麺」。
温かいのもいいが、疲れ気味の今日はひんやりといきたい。
もともと奥さん一人でやりくりしており、取材お断りの店。
それが、芸能人が美味しいとメディアで言ったことから始まり大混雑。
1年半以上も続いた。
常連さんは行きにくくなった。
ようやく今は昼休み時間には混むが、1時半を過ぎればゆっくり食べられる。
「あら、今日は冷たい支那麺ですか?」
「はい、この頃、凄く暑いので」
しばらくして湯気のない支那麺がでテーブルに。
「前にも食べたことがありますよね」
「はい、何度か」
温かい麺はあっさりとしているが、
冷たいのは味の輪郭がはっきりしている。
コクは深く感じられる。
麺は冷たい水でしっかり洗われている。
どんぶりを彩る具も少し違う。
今はカウンター席だけだが、
ご夫婦でやっていた頃は奥に小上がりもあった。
何人かで来て座ったものだ。
チャーシューも冷やされており、
少し硬めになっているが、口の中で溶けていく。
そして、透明感のあるスープ。
温かい支那麺より、ほんの少し濃い味。
「う~ん変わらずに美味しい!」
「あら、よかった」
奥さんと話した。
シンプルな中華そばほど難しいという。
味のアクセントなどで誤魔化せない。
食材の変化などもあり、
同じ味を続けることも努力なしではできない。
ちょっとしたことで味のバランスが崩れるらしい。
「ごはん食べます?」
「はい」
チャーシューの炊き込みご飯。
これは見た目ほど濃い味ではない。
残ったご飯に冷たいスープをかける。
色々と配合した胡椒をふる。
ほのかに柚子の香りも。
これが美味しい。
スープまで完食。
紫蘇ジュースをいただきながらワンちゃんの話。
雪が積もると絶対に散歩に出かけない。
外が暑いと、すぐ引き返すそうだ。
気温が35度だとすればアスファルトは40度を超えるだろう。
早朝と夜に散歩するそうだ。
全国から醤油や煮干しを取り寄せ、
夫婦で味を確かめ選んだ。
試行錯誤で完成した支那麺。
開店して数年後からは奥さん一人で営んでいる。
二人で作り上げた味を守っている。
ご主人は、空から安心して見守っている気がする。
帰ろうとすると、
カウンター席には、若い人が並んで食べていた。
こういう味は世代関係なくファンがいるのだと思った。
サラリーマン時代にはこの界隈で、
ランチや残業前に食べる場所には事欠かなかった。
数軒が店を閉め、だいぶ少なくなった。
はすの屋は、いつまでも残っていて欲しい味の店だ。
盛岡市紺屋町
「支那めん処 はすの屋」