少し改訂(青文字部分を追記)したものに写真の追加と差し替えを行ったので、再再掲いたします。
LPレコードでのマーラー受容の歴史の上で、ヴァルターと並んで重要な人物にオットー・クレンペラーがいることは今さら言うまでもないことでしょう。
そのクレンペラーの、2種類ある『大地の歌』のセッション録音は、対照的と言ってもいいぐらいに違っているのですが、どちらもとても有名なものです。
まずは、1951年3月8~12.15日のヴィーン交響楽団との録音です。米VOXからこのLPが最初にリリースされたのは1951年6月のようです。これこそが、この曲の記念すべき最初のセッション録音であり、LP第1号でもあります。
VOX PL7000 1951年6月発売(この記録はピーター・フュロップによる)
1960年代初頭(?)に再発売されたもの。
米VOX PL11.890
エルザ・カヴェルティとアントン・デルモータの歌唱によるこの録音は、CD時代になってからも何種も復刻されていますが、最近国内盤として出た次のものが現在では一番入手しやすいだけでなく、音質も良く、また、ライナーノートも充実していると思います。
- ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」&マーラー:大地の歌/クレンペラー(オットー)
- ¥2,100
- Amazon.co.jp
この演奏は、たいへん速いテンポの演奏(『大地の歌』の録音の中で最短の演奏時間のもの)として昔から知られているものです。
このレコードに続く50年代から60年代初めの『大地の歌』のレコードのほとんどのものがLP2枚組み3面であったことを思うと、それだけでも速さが実感できると思います。
壮年期のクレンペラーによる速いテンポの演奏ということで、何か激しいものを想像しがちですが、むしろ「颯爽」とか「爽快」といった言葉がふさわしいような演奏です。
そのような印象はデルモータのリリックな歌唱によるところが大きいのかもしれませんが。
そして、もう一つは、これこそヴァルターのDecca盤と並んで、いや、もしかするとそれ以上に、『大地の歌』の代表的なレコードとして長く聴かれてきたものですから、特にここでは付け加えることはありません。イギリス盤とフランス盤のLPジャケットを紹介するだけにします。
- マーラー:交響曲「大地の歌」/クレンペラー(オットー)
- ¥1,300
- Amazon.co.jp
- マーラー:交響曲「大地の歌」 【HQCD】/クレンペラー(オットー)
- ¥2,100
- Amazon.co.jp
以上の二種のセッション録音は先に書いたように非常に有名なものですが、これらの他に、ハンガリー放送オーケストラとの1948年11月2日のライヴが残されていることはあまり知られていないようです。
archiphonがプライベート・エディションで少枚数だけ作ったCD-Rなのですが、1951年のVOX録音以上に速いところがある、非常に個性的な演奏です。VOX盤でのデルモータと違って、テノールのEndre Roeslerの歌唱がより重厚というか劇的であることが、クレンペラーのここでの速いテンポと相俟って独特の緊張感を生み出しているように思います。
また、この、VOXの録音と同じぐらい、ところによってはそれを上回るぐらいの速いテンポによるライヴの存在は、昔からVOX録音に対して時々言われている「LP一枚に収めるためにクレンペラーが無理に速いテンポで演奏したのではないか」という考えに対しての強力な反証となるのではないでしょうか。
『大地の歌』の演奏の歴史を考える上でも、また、クレンペラーという人の演奏を考える上でも、興味深い問題を提起してくれる録音だと思います。どこかがきちんとした形で出してくれるといいのですが。
以上の3種類の演奏時間を書いておきます。
ブダペスト・ライヴ Ⅰ 6:43 Ⅱ 7:37 Ⅲ 3:12 Ⅳ 6:12 Ⅴ 3:52 Ⅵ 22:58
VOX Ⅰ 7:04 Ⅱ 9:06 Ⅲ 3:15 Ⅳ 6:25 Ⅴ 4:06 Ⅵ 22:48
EMI Ⅰ 7:59 Ⅱ 10:03 Ⅲ 3:37 Ⅳ 7:41 Ⅴ 4:36 Ⅵ 29:25
宮下誠先生が突然お亡くなりになって今日で1年になります。
もう1年経ってしまったのか、とも思いますが、まだ1年しか経っていないのか、とも思います。
よくわからないのです。
ただ、何か宮下先生の絶望の大きさだけがのしかかっているような気もします。
心残りです。
特にベンヤミンとアドルノに対してはかなり考え方が違っていたようなので徹底的に論争したかった。
そしてこれを聴かせたかった。
語りたかった。
マーラー:交響曲第7番 ヘルベルト・ケーゲル指揮東京都交響楽団/ケーゲル(ヘルベルト)
本日、2010年5月18日は、グスタフ・マーラー(1860-1911)の99回目の命日に当たります。
それで、今日は少々珍しいものを取り上げたいと思います。
まず未完に終わった交響曲第10番のデリック・クック版をさらにピアノ・ソロ用に編曲したものです。
実にさまざまなことに気づかせてくれる興味深いCDです。
もう一つ、第10番に関連する録音を。
こちらは交響曲第10番の第1楽章を15の独奏弦楽器のために編曲したものです。
編曲者はハンス・シュタットルマイアという人で、スコアは1971年に出版されています。
表紙をまずご覧ください。
冒頭部分をアップで
編曲者のシュタットルマイア自身が指揮をして、1973年にレコードになっています。
演奏しているのは、ミュンヘン室内オーケストラで、A面にはリヒャルト・シュトラウスの『メタモルフォーゼン』が入っています。そのA面ととても調和しているといえばこのシュタットルマイアによる編曲がどのようなものかある程度お察しいただけると思います。
ただ残念なことにこのLPは1973年にフランスで出ただけでそれ以後まったくどのような形でも出ていないようです。もし中古レコードを取り扱っているお店で見かけたらぜひ入手されることをお勧めいたします。
ところが3年ほど前にこのシュタットルマイアの編曲にさらにクレーメルが手を加えた録音(20の弦楽器によるもの)がCDで出されました。シュタットルマイアのものに比べるとかなり濃厚な味付けになっていますが、これも素晴らしいものだと思います。
また、一緒に入っているショスタコーヴィチの交響曲第14番も聞き逃せません。
クレーメル/マーラー・ショスタコーヴィチ
HMVへ
そういえば、マーラーの交響曲第10番とショスタコーヴィチの間には大変に深い関係があるようなのですが、今後の課題にしたいと思います。
このところ、ほとんど更新のないブログになっておりました。
5月の中旬ぐらいから、少々新しい方向で書き始めようと思っております。
ということで、初心に戻る・・・という意味も含めて、アイコンをブログを始めた当初のものに戻してみました。
やはりこの世界が好きです。
あらためまして、どうぞ宜しくお願いいたします。
Mr.M











