1970年録音のクーベリック盤以降、ドイツ・グラモフォンは1984年のアバド盤まで実に15年近くもの間、交響曲第7番の新録音がありませんでした。

その間、クーベリック盤がいくつかの形で再発売されていますが、その曲名表記にドイツ・グラモフォンの逡巡が見られるように思います。


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど

アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
日DG MGX 9929-30

1978年にドイツ盤で再発売されたものと同じデザイン。



アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど

アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
仏DG 2726 066

上のものと全く同じデザインですが、フランス語で『夜の歌』とあります。


そしてさらに次のようなジャケットで再発売されました。


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど

アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
西独DG 415 631-1(1986年に市場に出たようです)


この時点ですでにDGとしては二番目の録音にあたるアバド指揮/シカゴ交響楽団盤が出ていますので、80年代に入ってからはDGとしては完全に交響曲第7番という表記だけにする方針が確立したと考えられます。


そのアバド盤です。


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
西独DG 413 773  (1984年1月30日、2月2日録音 1985年4月リリース)


続くときには続くもので、翌年バーンスタイン指揮のニューヨーク・フィル盤が出されます。


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど

アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど

アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど

西独DG 419 211 (1985年11月25日~12月3日録音、1986年12月リリース)


このあたりからCDがかなり一般的になっていたので、ブックレットがCDのものと共用できるようなサイズになっています。


そしてこのあとドイツ・グラモフォンはシノーポリ指揮/フィルハーモニア管弦楽団(1992年録音)、ブーレーズ指揮/クリーヴランド管弦楽団(1994年録音)、アバド指揮/ベルリン・フィルハーモニー(2001年録音)というように、この曲の録音が充実していくことになりますが、すべて実にシンプルにSymphony No.7という表記です。



アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど



60年代の終わりから70年代の初頭にかけて、偉大なマーラー指揮者によるこの第7番の録音が続けざまに行われたわけですが、ちょうどその時期に東ドイツでもヴァーツラフ・ノイマン指揮のゲヴァントハウス管弦楽団による録音がリリースされています。


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど

アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
東独Eterna 8 26 103-4 1968年録音、1970年リリース


このレコードはどうやら東独Eterna盤が出ただけのようで、西側ではあまり知られなかったようです。東西ドイツが統一されてから一般には知られるようになりました。

ご覧の通り、シンプルにSINFONIE NR.7とだけ書かれています。


『夜の歌』というあだ名がレコード会社の商業主義の表れであることを別の面から照らし出してくれるように思いますので、良くも悪くも「商業主義」とは縁がなかったと思われる旧共産圏で出されたこの第7番のレコードジャケットを次に並べてみます。





アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど

アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど

キリル・コンドラシン指揮/レニングラード・フィル

露Melodiya C10 07207-10  1975年3月録音、1977年3月リリース

アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど

アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
同上の別のジャケットによるもの。

レコード番号は同じ。



アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど

アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
ヴァーツラフ・ノイマン指揮/チェコ・フィル

チェコSupraphon 1410 2721-2 1977年9月~1978年1月録音



アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど

アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
クルト・マズア指揮/ゲヴァントハウス管弦楽団

東独Eterna 8 27 790-1 1982年9月~1983年3月録音、1984年リリース



クラシックジャーナル041

マーラーを究める

アレグロ・オルディナリオ~マーラー資料館とわたしの大切なこと-100610_2234~01.jpg


6月15日までには書店の店頭に並ぶはずです。


「マーラーについて

あまり知られていないこと、いろいろ」

ということで書かせていただきました。


どうぞよろしくお願いいたします。


クラシックジャーナル 41/著者不明
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こちら左矢印Fujisan.co.jpにリンク)でもご購入していただけます。


また、中川編集長のお話では早いところでは明日ぐらいに店頭に並ぶということでした。

70年代の初頭に、マーラーの交響曲第7番の、今日に至っても価値を失わない素晴らしい録音が続けざまにリリースされました。

まず、ベルナルト・ハイティンク指揮のコンセルトヘボウによるもの。


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
1969年12月19日、22日録音。

蘭Philips6700 036(1971年3月リリース)


これの国内盤が次のものです。


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど

アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
フィリップス(日本フォノグラム) SFX-7836~7

『夜の歌』ならぬ『夜の音楽』というタイトルをジャケットの表に掲げたものはかなり珍しいと思います。


続いてラファエル・クーベリック指揮/バイエルン放送交響楽団なのですが、これは交響曲全集の形で出されたものが初出となります。

こちらです。


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
西独DG 2720 033

第7番の録音は1970年11月27~29日

交響曲全集としてリリースされたのは1971年9月

マーラー交響曲全集としてセット化されたものとしてはバーンスタイン盤に続く史上2番目、第10番のアダージョを含むものとしては史上初のものということになります。


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど

アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
このセットでは3面にカットされていました。


全集として出されたあと、第7番単独では次のような形でリリースされました。


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど

アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
1970年11月27~29日録音

西独DG 2707 061

単独でリリースされたのは1973年1月でした。


国内盤も全く同じジャケットで出されました。

独語と英語で表記されているところもそのままです。


そしていよいよショルティ登場です。


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
1971年4月録音 

米LONDON CSA2231(1972年1月リリース)


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
英DECCA SET518-9(1972年10月リリース)


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
曲名表記の部分の拡大

シンプルにSymphony No. 7だけです。

それに対して日本盤は次のようなジャケットで出されました。


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
LONDON(キングレコード)SLC2311~2


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
曲名表記部分の拡大。


表記といい、ショルティの写真といい、う~ん。

オットー・クレンペラーが残した唯一の録音での尋常ではないゆっくりとしたテンポについてどのように考えるかというのは大変難しい問題であるように思います。

ただ、晩年のクレンペラーがいくつかの演奏で非常に遅いテンポを採用していたことを考えると、この曲について言われることがあるこのテンポが「マーラーの真意を伝える」とか「マーラー直伝である」というようなことはあまり妥当ではないように思います。


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
オットー・クレンペラー指揮/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(1968年9月18~28日録音)

英EMI ASD2491-2(1969年9月リリース)


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
曲名表記の部分の拡大


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
米Angel SB3740(1969年10月リリース)


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
曲名表記の部分の拡大


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
独ELECTROLA C 063 01931-2


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
曲名表記部分の拡大


ケースのデザインは全く同じなのですが、アメリカ盤とドイツ盤には小さく「夜の歌」と書かれています。

このささやかな書き方にはレコード会社の迷いというか試行錯誤が感じられるような気がします。


ちなみに国内盤は次のようなジャケットで出されました。


アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど

アレグロ・オルディナリオ~マーラーを中心としたクラシック音楽のことなど
東芝EMI AA-8581~2



国内での再発売盤はこのようなジャケットでした。


アレグロ・オルディナリオ~マーラー資料館とわたしの大切なこと
東芝EMI EAC-50036~7


アレグロ・オルディナリオ~マーラー資料館とわたしの大切なこと