風が、木々とダンスをしたり、

気まぐれにかけぬけたり。

初夏のこの清々しい季節は、

家にいても、住宅街や公園を歩いていても、

オフィスビルの谷間から空を見上げていても

サラサラと心地良い風の音が絶えず耳をくすぐっている。




こんな気持ちのよい季節は本当に短くて、

少しでも長く戸外で過ごしたいと思う。




たとえば、早起きした休日は、芝公園方面へ。

増上寺の隣のカフェ・レストラン、

ル・パン・コディディアンへ車で直行。




ベルギーから来た、パン屋さんも併設しているここは

プリンスホテルの敷地内にあり、

なんと朝7時30分からオープンしている。




室内のレストランで、ボリュームたっぷりのブランチもいいが、

とにかく緑を肌で感じたいこの季節は、外に置かれているテーブルに座りたい。

初夏も進んでくると、日中の最高温度は真夏並になるので、

朝の涼しいうちに、みずみずしい緑を楽しんでおくのだ。





外のスペースでは、テイクアウトメニューしか注文できないが、

とりあえずブドウ糖をとり込んで、脳を目覚めさせるにはそれで十分。




今日のチョイスは、

コーヒーと、圧倒的なベルギーチョコレートが生地に化けたパン。

ナッツとオレンジピールがアクセントになっているリッチなパンは、

後味がスッキリとしたヨーロピアンコーヒーによくあう。




おなかと脳にほどよいインパクトが与えられたところで、

空気がまだ新鮮なうちに散策開始。




ル・パンから増上寺はすぐなのだが、

そこはあえて地下鉄大門駅の入り口あたりまでいったん歩いて遠ざかり、

そこから再びアプローチしていく。

目の前にはオレンジ色の東京タワーがそびえる。

徐々に近づくにつれ、その大きさと存在感に圧倒される増上寺の赤門と

まだフレッシュな木々の黄緑色のコントラストは

本当に美しい。

新緑の季節にここに足を運ぶのはおすすめだ。

お天気がよければ明るく緑は輝き、そして、

風が心地よく通り抜けていく。




もしも、桜の季節ならば、

夜、増上寺の右の脇道を歩くのがロマンチック。


道沿いに植えられた夜桜と、

ライトアップされた東京タワーの組み合わせにため息が出る。

とくにかわいくドレスアップしたような

特別なイルミネーションの時の東京タワーは

桜とのデートに浮かれているかのよう……。




初夏の東京スケッチは、今のうちにもう少しできればと思う。

また次回に
。




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


白い洋窓を下から上に押し上げて、風を入れる。

新緑をわたってきた風にふわりと包まれて、とても気持ちがいい。

どこに出かけても混雑するゴールデンウィークは、ただ自宅でゆったりと過ごすだけでも、

極上の時間となると私は思うのだ。




お天気のこの日、表のみどりを映してか、室内はいっそう明るく感じられる。

老眼が進んだ目にはありがたい。

日頃読もうと思いながらたまっていた本を、リビングのソファーに運びこむ。




ここでお気に入りの音楽をかけるのもありだが、

今日は爽やかな自然のBGMのままがいちばんいい。

サワサワと木々が風にそよぐ音が、なんとも耳に心地良いのだから。

そして、時折、鶯などの鳥の鳴き声も響いてくる。





少し離れた大表通りの交通量もずいぶんと少ない様子。

車の通過する音は時々聞こえるだけ。

ここ、郊外の住宅地はいつもよりずっと静かだ。




さて、肌で季節を感じ、新緑と風に目も耳も刺激されたなら、

あとは嗅覚と味覚で味わうべく、大好きなお茶でも入れようか。




ストロベリーとバニラをミックスしたフレーバーティーの甘い香りとともに、

私の休日の満たされた時は流れていく……。




あーー、完璧。
















 

ゴールデンウィークは、むしろ東京で過ごしたい。

大勢の人が国内にしろ海外にしろ、東京の外に出掛けて、

総人口が減少するに違いないめったにない期間、

都内を走る車の量もぐんと減って、空気もいつもよりきれいなはず。





気候的にも、1年でもっとも爽やかで過ごしやすい新緑の季節。

お盆休みやお正月にも人口減少はあるに違いないが、

出歩くのに適した季節でもない。

こんな時に東京にいないなんてもったいない!






連休の2日目、初日からのお天気に恵まれて、

やってきたのは、天王洲アイル。

普段はオフィス街で人があふれているここも、

閉店している店がいくつかあり、

ビルから人が消えた閑散とした感じは、

かえって非日常感をあおる。





そんな天王洲アイルで、休日でもひときわ賑わっているレストランがある。

それが、運河沿いのテラスがある水辺のレストラン、

T.Y.HARBOR(ティー・ワイ・ハーバー)





倉庫を改築した外観だけでも目を引く抜群の雰囲気で、

ドラマの舞台になったりして長い間気にはなっていたが、

そうわざわざ天王洲に来ることもなく、また一人で入る勇気はなかった。

連休も始まり、開放的な気分で食事を楽しみたいと思って、

この好機に夫を引っ張ってやってきた。





とは言っても、こんなに人気のレストラン、

ましてやゴールデンウィーク中で、予約もなしに、

テラス席を陣取りたいなんて無茶もいいところ。

時間も、ブランチにも早めのランチにも最適の11時半となると、

もう絶望的というものだ。





しかし、ここまできて諦めるわけにはいかない。

お店にタクシーで乗りつけたご婦人たちのあとについて、

受付に向かう。

口コミによれば、船で乗り付けるラグジュアリーな人々もいるらしい。






前のご婦人に、お店の女性が、「ご予約は?」と聞き、ないと答えると、

「ただいまは店内のカウンター席ですと、すぐにご案内ができますが」などという案内。

そしてご婦人たちが店内に案内されていくのを尻目に、内心気合を入れる。





「ご予約は?」

「ありません」

「店内のカウンター席ですとすぐにご案内ができますが」

「テラス席希望なんですが」

「ただいまご予約で全て埋まっておりまして、

だいぶお待ちいただくことになりますが、よろしいですか?」

「はい。どのぐらい待ちますか?」

「1時間ぐらいお待ちいただくかもしれません。

キャンセルも入ったりするので、なんとも言えないのですが」





携帯番号を伝えておいて、席が空けば呼び出してもらえるらしい。

近くを散策して時間を潰せるので1時間ぐらいすぐに経つだろう。

店の裏には大きな雑貨店もある。

待つのには何の問題もなかった。





しかし、携帯番号を伝えた直後、

その受付の女性のところに店内から連絡がきたようで、

「たった今キャンセルが出ました。

すぐご案内できます。そちらの椅子でお待ちいただけますか」

なんという絶妙なタイミング!


もしもあのご婦人たちを抜かして、先を進んでいたら

この幸運にはあやかれなかっただろう。






案内されるまで木製の椅子に腰掛けて待っていると、

あとから来た男性客たちと店の女性が同じやり取りを繰り返している。

「テラス席がいいんですが」「ご予約で埋まっております……」

優越感この上ない。
てへぺろ





受付けの横には、セルフサービスで飲めるように、

氷とレモンとライムが入った水のタンクが置いてあり、

いかにこのレストランで待つ客が多いかを物語っている。





そして案内されたのは、目の前に運河をのぞむ、

もっとも景色を楽しめる望んでいた通りのテーブル席。

それだけでもう大満足なのに、

お店の女性が少しガタつくテーブルに気がついて、丁寧に調節してくれて、

サービスの細やかさに感心もした。

そういえば、席までたどり着く途中にも、

たくさんのスタッフの人たちが、こんにちはと挨拶をしてくれて、本当に感じがいい。




すぐ近くから英語が聞こえて、見回すと、外国人客もちらほらいるようだ。

従業員にも外国人がいる。




席で落ち着くと、清々しいお天気、運河の上に広く見渡せる青空に白い雲。

東京湾からあがってくる水のにおいは、かすかに生臭いが

それも海を近くに感じられていい。

運河側に沈丁花などの香りのある花が植えられていて、

風に乗って強くかおったりする。





ここはクラフトビールの醸造所が併設された、

都内でも珍しいブルワリーレストランのようだ。

残念ながらアルコールに弱い二人は、その恩恵にはあやかれず、

ソフトドリンクと料理だけを堪能した。






ビールにあわせることを考えてあるのか、料理は幅広く、

前菜、サラダ、肉、魚のメイン、ピザ、パスタ、ハンバーガーなど、

食べたいものを好きな組み合わせでカジュアルに楽しめる。

お店の雰囲気と立地を考えたら、値段は安いと思えるくらいだ。

もっとも、お酒は抜きなので、その分安くあがっているわけだが。
(^_^;)




しかし、何より印象に残ったのは、おしゃれな外観からは少し意外にも思えた、

店全体を包み込む活気とあたたかさのようなもの。

それはスタッフの人たちの応対から感じられたものだ。

料理を出し下げする時に、親しく話しかけてくれて、




料理のことやお店のことについて教えてくれた。

彼らの気さくな話しぶりから、

楽しんでこのレストランで働いているのが自ずと伝わってきた。

スタッフが喜んで働いているならば、

おのずと懐の深い経営者のイメージ像も浮かんでくる。

だからこのお店は20年近くも続いているのだろう。

東京にスタイリッシュなお店は数多くあっても、

表面的なものだけでは、やはり長続きしない。





次回は夕涼みがてら、お店の女性がお薦めの夜の表情も見てみたい。

そして、今度は予約は忘れないでおこう。






I LOVE TOKYO

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(サイトより)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一年でたった一、二週間のあいだ、短い花の命に日本中の人々が心酔する季節。

今年は、開花から満開までの期間が長く、桜によってもたらされる幸せは、

より多かったように思う。

特別どこかに花見に出かけなくても、至るところに桜の木はあるわけで、

この季節になると、普段気にもとめていなかった木が

あれよというまに薄紅色の華やかな衣をまとっていて

ああ、ここにも桜の木はあったのかと毎年のように発見するのである。




現代は、夜桜もいっそう楽しめる。

人口の光との共演が見られるからである。

電子的な明かりが自然の桜を照らすという、この対極的な組み合わせによって

かえって幻想的な光景が生み出されたりする。




私がこれまでで最も印象深かったのが、やはり東京一の名所と言ってもいい千鳥ヶ淵。

淵沿いの遊歩道は長い桜のトンネルとなる。

ライトアップされた夜のトンネルは、桜、桜、桜でひしめくなかにも濃淡がはっきりする。

多く光を含んだ花びらは浮きたち、光から遠ければ暗い夜空に溶け込む。

その立体的に迫ってくる圧巻の夜桜を見上げながら歩くだけでうっとりしていたが、

向こう岸を見て思わず立ちすくんだ。

対岸の桜も光を帯びて美しく浮かび上がっていて、それにも心奪われたが、

さらにその下に、深い闇色の堀が見事な鏡となって、

桜で埋まる土手をそっくり映し出していたのだ。

優美な日本画そのものだった。




この日は風がなく、水面がほとんど波立っていなかったことが幸いした。

この夢のような光景はそう見られるものではない。

またこの日が平日で繰り出す人が比較的少なめだったのも

景観に陶酔できる大きな要因だったかもしれない。

喧騒の激しい中ではなかなか浸りきることができないものだ。




一生心に残る夜桜となった。

この風景に出会ったのは、3年前の4月。

また今年も夜の千鳥ヶ淵を訪れてみたいと思う。

(4月初旬のある日に)




ありがとう、TOKYO






































 

なんといってもここのところ贅沢に感じるのは、

外から聞こえてくるうぐいすの鳴き声で目をさますことである。

東京郊外にある我が家では、すぐ近くに畑や竹林や小さな森があり、

おそらくそのどこかにこの春を告げる鳥が棲息していると思われる。




たったひと声でも人の心を魅了してしまう、

あの美しいさえずりのシャワーを浴びて目覚める気分はこの上ない。

まどろみの中で潜在意識まで清められて、笑顔で起床できる。




東京の都心に住むのも魅惑的だけれど、

この極上の目覚ましはなかなか失いがたい喜びである。


(3月のある日に)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬空に向かって突き刺すように
 

立ち並んでいる銀杏の巨木は、勇壮な感じさえして、

通る度に惚れ惚れしていたものだが、

春先になると少し様子が変わってくる。

黒々としていた幹や枝から細くて白っぽい枝が無数に伸びてきて、

木全体の色もいくらかライトになった印象。

絵画館のオレンジ色のライトアップも2月いっぱいで終了したようで、

夜でも分厚い雲があるとわかる春先特有の不安定なお天気の下、

白っぽく出てきた枝々が骨のようにも思え、

巨大な動物の死骸の間を歩いているようだと子供っぽい空想力を働かせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


それはさておき、銀杏並木の終わり絵画館の前を左に入り、ほぼ道なりに行くだけで、

20分もすれば千駄ヶ谷駅に着いてしまう。

銀杏並木からすぐの左手に神宮球場があり、時間帯や日によって試合などがある時は、

歓声が外まであふれて、通行人の私まで興奮のおこぼれをもらえる感じがする。

今夜は遅いので静まり返っているが、そこからさらに歩き進むと、

今度は右手にスカイツリーが見えるスポットがある。

初めて発見したときは、神宮外苑のこんな場所からも見えるのかと軽い驚きだった。

小さな宝物を発見した気分である。





それを過ぎると右手に、物議をかもした新国立競技場の建設予定地が見えてくる。

工事用バリケードで囲われているが、今は何もない広大な更地のおかげで

遠くに高層ビル群がそびえ立ってるのが見える。

一番手前にあるニューヨークのエンパイアステートビルを模したNTTドコモのビルが

大きく印象的で、その背後にかたまって見えるのは新宿のビル群だろうか。

どこの高層ビルでもたいていそうだが、

夜は黒っぽく影のようになったビルにいくつかの赤い光が点滅している。

その規則正しい点滅を見ていると、ビルが呼吸しているように私には思われるのだ。

いずれにしろ、新しい国立競技場が建設されてしまえば、この位置からは

このビル群は見えなくなってしまう。今だけの光景には違いない。




さて、千駄ヶ谷の駅がまもなくという時、突然春の匂いを私の鼻がとらえた。

とても香しいとは言えない、しかし強烈な独特の匂いである。

この匂いのもとはヒサカキという植物らしい。

この強い香りは決して不快ではなく、むしろ春を想起させて気分を上げてくれる。

住宅街など庭や緑があるところで匂ってくるのは珍しくはないが、

この場所では意外だった。

今日はだいぶ気温が下がって、冬の日と変わりなく思えるけれども、

こんな都心のどまん中でさえ、春への変化を感じられるのはかえって感慨深い。




すでに目の前は千駄ヶ谷駅。

駅のすぐ上は高速が通っている。

高速道を照らすオレンジ色のライトの色も心なしかぼやけて見えた。

そして、高速の上をサーッと車が通過する音でさえもやわらかく響き渡る気がするのである。

(2016年3月中旬のある日に)




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のびやかに青空を渡るかもめを思わず目で追ってしまう。

 

かつての休日の喧騒が嘘のように引いた、ことに平日のお台場は、

 

今日のように晴れ渡った日には、自然と足が向いてしまう場所になった。

 

 

 

 

不安定なお天気が長く続いた後の、ようやくの一週間ぶりの、光にあふれた日。

 

昼下がりのティータイムを楽しむため、デックス東京ビーチにやってきた。

 

昔ここができたての頃は、人であふれていたことを思い出す。

 

今はお台場の商業施設はずいぶんと増えて、この場所は観光スポットとしては古株と言えようか。

 

今でも多くの観光客が訪れているに違いないが、

 

私にとってはありがたいことに、平日は人がまばらで、

 

本当に落ち着いていられる場所となった。

 

 

 

 

晴れた日は何より景観がいい。レインボーブリッジと東京タワー、

 

高層ビル群を目の前に、潮風にあたりながら空と海の青さを感じて歩くと

 

自然と開放的な気分になる。

 

ところどころ、外のスピーカーから流れるボサノバやハワイアンが

 

より気分をなごませてくれる。

 

 

 

 

外気にさらされる席ではまだ少し肌寒く思ったので、

 

屋内のカフェの一つに入り、窓辺の席で本を読みながら時間をつぶす。

 

 

 

 

気がつくと、いつの間にか夕刻が忍び寄っていたらしい。

 

目の前に見えるビルのところどころが、

 

まるで金箔を貼り付けたように輝いている。

 

夕方の自然光と人工物のコラボのとも言えるこのとびっきりのゴールドは、

 

都市ならでこそ映えるのかもしれない。

 

 

 

 

しかし、この日のゴージャスな色の収穫はこれだけではなかった。

 

ビルの向こうに沈みゆく太陽、それを眺めながらはっと気がついた。

 

夕日の周りに大きく虹色のような半円ができているのだ。

 

(これは後でニュースで知ったが、水蒸気の多い春に多く見られる光環という現象らしい)

 

太陽をまじまじと見ていた私だからたぶん気がついたのだ。

 

周囲の人で気がついている人は多くなかったに違いない。

 

思いがけなく神々しい風景を目にしたことで、自然と顔はほころび、足取りはかろやかになる。

 

 

 

 

そしてさらに、そんな自然と都市建造物の共演で醸しだされる、

 

フィナーレの色を見つけて、また心の中でひとり歓声をあげたのだった。

 

レインボーブリッジがなんと美しい桜色に染まっていたのだ。

 

晴天の日とはいえ、冬のキリリと澄み渡った大気とは違う、

 

よりやわらかな空気がこの季節にふさわしい色を作り出したのだ。

 

そういえば、太陽が沈んで影になりゆくビルの色もほんのり赤紫がかっている。

 

 

 

 

まだ本物の桜の花はかたい蕾のままだけれど、

 

もうまもなくやってくる桜の季節を告げるような、

 

自然の粋な演出と言えなくはないか。

 

勝手にそう決めこみ、ひとり盛り上がった早春の宵であった。クラッカー

 

(2016年3月中旬のある日)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海岸一丁目。

東京の地理に詳しくなければ、

この住所を聞くと、ちょっと想像力をかきたてられるかもしれない。

忙しすぎる日常の気分転換にふと訪れてみたくなる、

なんだか魅力的な響きがある。




実際はここには、小笠原諸島などに船が出る、竹芝桟橋がある。

今週の3月8日は突然1日だけ陽春さながらの日になった。

暖かな気温に気持ちも自然と浮き立って、

春の埠頭が見たいなあと突然思い立つ。




見上げると、春特有のふんわりとした柔らかな空の色。

電車に乗り、浜松町に近づく頃窓越しに外を見ると、

ビルの上のほうがかなりもやっていた。

前日は、東京でも珍しく霧が発生して、その名残が

見られていたのだ。




浜松町で下車し、

北口を出て右手をほぼ真っすぐに5分ほど進むと、

竹芝桟橋はもうすぐそこだ。

ターミナルの前には、実際に船で使われていたであろう大きな

マストが立てられているので、目印になる。

その巨大なマストを仰ぎ見ながら、

階段を登って、見晴らしのいい2階の展望広場に登ると

おだやかな春の海の景色が広がっていた。




水面はぼんやりと白い帯状のもやが這っているのだが、

ところどころキラキラと太陽の光が踊っていた。

その向こうにはレインボーブリッジが

かろうじてか細いラインをとどめていた。

その時、ちょうどどこかの島へ向けて船が出港したらしい。

ポーッとやわらかい汽笛音が春霞の海に響いた。

その音はそのまま心の中に染み通っていく……。




お天気がいいので、ここのベンチでランチをしたら

さぞかし気持ちがいいだろう。


既に近くのオフィスの会社員やOLらしい人たちが

思い思いにベンチでお昼を食べていたり、ひなたぼっこを楽しんでいた。




いったん下に降りて一階のターミナルに入る。

一角にある愛らんどカフェで何か食べ物を探すためだ。

カフェの前のメニュー板を見ながら、ランチを決める。

料理は全て島の食材を使っているようで、どれもおいしそうだ。

迷った挙句、屋外でも手軽に食べられそうな、

ムロアジバーガーを買った。

自販機でドリンクを買って、また上の展望広場に戻り、

海を真正面してベンチに腰掛け、バーガーにかぶりつく。




パンに挟まっているのは、ムロアジのメンチカツとチーズと

トマトとレタス。けっこうなボリュームだ。

驚きなのは、メンチカツがマグロと言われてもわからないほど、

青魚特有の臭みはまったくない。食材が新鮮な証拠だ。

明日葉か何かを使った、少し酸味のある緑のソースが

全体の味をうまくまとめていて、予想以上においしかった。

これで500円。ここでしか食べられないのだから、

けっこうなお値打ちバーガーだと思った。





味覚だけでなく、五感でフルに味わえた贅沢なランチタイム。


海岸一丁目はイメージを裏切らないリフレッシュできる場所。

また違う時間帯、季節に来よう。




I LOVE TOKYO























































 

 

東京に街路樹は数あれど、ここの銀杏並木は別格だ。

秋に鮮やかだった黄色の衣はすっかり消え失せ、

木の裸体とも言うべき、太い幹や枝を冬の外気にさらしている。



しかし、この堂々たる姿がまた惚れ惚れする。

巨大な街路樹なのに、てっぺんに至るまで美しく整えられ

天を突き刺すその姿はまるで、絵画館の前に整列している

兵士のような勇ましさを感じさせる。



夜、ここを通りかかると、

絵画館はライトアップされて、オレンジ色に浮かび上がる。

冬の乾燥した大気は

視界をとても鮮明にするので、なお美しい。



爪の先よりも細い三日月が低い位置にあった。

その繊細な三日月が、並木の枝の間を真横に移動するのを

楽しみながら歩いた。

子供じみてはいるけれど、

私はそんなふうに風景と遊ぶのが好きだ。



そんな銀杏並木からほど近い、青山一丁目のとあるビルの一室で

小さなクラスを企画している幸せ。

運動不足解消のために青山一丁目から千駄ヶ谷間を歩く私の

銀杏並木は心躍る散歩道です。

(2016年2月のある日)



I LOVE TOKYO