ゴールデンウィークは、むしろ東京で過ごしたい。

大勢の人が国内にしろ海外にしろ、東京の外に出掛けて、

総人口が減少するに違いないめったにない期間、

都内を走る車の量もぐんと減って、空気もいつもよりきれいなはず。





気候的にも、1年でもっとも爽やかで過ごしやすい新緑の季節。

お盆休みやお正月にも人口減少はあるに違いないが、

出歩くのに適した季節でもない。

こんな時に東京にいないなんてもったいない!






連休の2日目、初日からのお天気に恵まれて、

やってきたのは、天王洲アイル。

普段はオフィス街で人があふれているここも、

閉店している店がいくつかあり、

ビルから人が消えた閑散とした感じは、

かえって非日常感をあおる。





そんな天王洲アイルで、休日でもひときわ賑わっているレストランがある。

それが、運河沿いのテラスがある水辺のレストラン、

T.Y.HARBOR(ティー・ワイ・ハーバー)





倉庫を改築した外観だけでも目を引く抜群の雰囲気で、

ドラマの舞台になったりして長い間気にはなっていたが、

そうわざわざ天王洲に来ることもなく、また一人で入る勇気はなかった。

連休も始まり、開放的な気分で食事を楽しみたいと思って、

この好機に夫を引っ張ってやってきた。





とは言っても、こんなに人気のレストラン、

ましてやゴールデンウィーク中で、予約もなしに、

テラス席を陣取りたいなんて無茶もいいところ。

時間も、ブランチにも早めのランチにも最適の11時半となると、

もう絶望的というものだ。





しかし、ここまできて諦めるわけにはいかない。

お店にタクシーで乗りつけたご婦人たちのあとについて、

受付に向かう。

口コミによれば、船で乗り付けるラグジュアリーな人々もいるらしい。






前のご婦人に、お店の女性が、「ご予約は?」と聞き、ないと答えると、

「ただいまは店内のカウンター席ですと、すぐにご案内ができますが」などという案内。

そしてご婦人たちが店内に案内されていくのを尻目に、内心気合を入れる。





「ご予約は?」

「ありません」

「店内のカウンター席ですとすぐにご案内ができますが」

「テラス席希望なんですが」

「ただいまご予約で全て埋まっておりまして、

だいぶお待ちいただくことになりますが、よろしいですか?」

「はい。どのぐらい待ちますか?」

「1時間ぐらいお待ちいただくかもしれません。

キャンセルも入ったりするので、なんとも言えないのですが」





携帯番号を伝えておいて、席が空けば呼び出してもらえるらしい。

近くを散策して時間を潰せるので1時間ぐらいすぐに経つだろう。

店の裏には大きな雑貨店もある。

待つのには何の問題もなかった。





しかし、携帯番号を伝えた直後、

その受付の女性のところに店内から連絡がきたようで、

「たった今キャンセルが出ました。

すぐご案内できます。そちらの椅子でお待ちいただけますか」

なんという絶妙なタイミング!


もしもあのご婦人たちを抜かして、先を進んでいたら

この幸運にはあやかれなかっただろう。






案内されるまで木製の椅子に腰掛けて待っていると、

あとから来た男性客たちと店の女性が同じやり取りを繰り返している。

「テラス席がいいんですが」「ご予約で埋まっております……」

優越感この上ない。
てへぺろ





受付けの横には、セルフサービスで飲めるように、

氷とレモンとライムが入った水のタンクが置いてあり、

いかにこのレストランで待つ客が多いかを物語っている。





そして案内されたのは、目の前に運河をのぞむ、

もっとも景色を楽しめる望んでいた通りのテーブル席。

それだけでもう大満足なのに、

お店の女性が少しガタつくテーブルに気がついて、丁寧に調節してくれて、

サービスの細やかさに感心もした。

そういえば、席までたどり着く途中にも、

たくさんのスタッフの人たちが、こんにちはと挨拶をしてくれて、本当に感じがいい。




すぐ近くから英語が聞こえて、見回すと、外国人客もちらほらいるようだ。

従業員にも外国人がいる。




席で落ち着くと、清々しいお天気、運河の上に広く見渡せる青空に白い雲。

東京湾からあがってくる水のにおいは、かすかに生臭いが

それも海を近くに感じられていい。

運河側に沈丁花などの香りのある花が植えられていて、

風に乗って強くかおったりする。





ここはクラフトビールの醸造所が併設された、

都内でも珍しいブルワリーレストランのようだ。

残念ながらアルコールに弱い二人は、その恩恵にはあやかれず、

ソフトドリンクと料理だけを堪能した。






ビールにあわせることを考えてあるのか、料理は幅広く、

前菜、サラダ、肉、魚のメイン、ピザ、パスタ、ハンバーガーなど、

食べたいものを好きな組み合わせでカジュアルに楽しめる。

お店の雰囲気と立地を考えたら、値段は安いと思えるくらいだ。

もっとも、お酒は抜きなので、その分安くあがっているわけだが。
(^_^;)




しかし、何より印象に残ったのは、おしゃれな外観からは少し意外にも思えた、

店全体を包み込む活気とあたたかさのようなもの。

それはスタッフの人たちの応対から感じられたものだ。

料理を出し下げする時に、親しく話しかけてくれて、




料理のことやお店のことについて教えてくれた。

彼らの気さくな話しぶりから、

楽しんでこのレストランで働いているのが自ずと伝わってきた。

スタッフが喜んで働いているならば、

おのずと懐の深い経営者のイメージ像も浮かんでくる。

だからこのお店は20年近くも続いているのだろう。

東京にスタイリッシュなお店は数多くあっても、

表面的なものだけでは、やはり長続きしない。





次回は夕涼みがてら、お店の女性がお薦めの夜の表情も見てみたい。

そして、今度は予約は忘れないでおこう。






I LOVE TOKYO

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(サイトより)