本作の情報が出始めた5月過ぎくらいから、とても待ち遠しく思っていた作品だ。
MGの連載は何話かをチラと読んだ程度。
私は前線で戦った機体(と扱った人々の人間模様)にしか興味がないので、戦間期の試作機に関しては殆ど知識がない。
宮崎駿は漫画では(やや抑制されながらも)存分に戦闘シーンを描くが、アニメは非常に抑制された描き方しかしないので、戦闘シーンは全く期待出来ないだろう。
つまり、この作品の煽り文句である「零戦を作った堀越二郎」は最初から信用していない(笑)。
九六艦戦や十二試艦戦が大陸で、国府軍のポリカルホフを墜としまくる栄光の日々なんて120%描かれないのは判りきった事だから。
『紅の豚』でガッカリさせられたのと同じ轍は踏まない。
だが、富野、押井らの感想を読むと、期待度MAXになってしまった。
嫉妬心含む(駿と同い歳の)業の富野、シニカルな押井両名も褒める作品って一体!?
実はここまで、映画を見る前に書いた文章。
つい先程、観終わった。
全体的な印象。
想像以上に戦間期の日本(三菱)航空史を描いた作品だった。
私はラブロマンスはどーでも良いと思っているせいかも知れないが。
感動したとか泣きそうになったシーンが一つもなかったのも印象的だった。
ポニョですら涙腺を刺激されたシーンがあったにも関わらずだ。
(ほぼ100%、普通の人は何とも思わないシーンだが)
何かの感情的衝動が全く起きなかったという事。
今にして思えば、全体を抑制して描いていたせいなのかも。
庵野や押井がよく使う比喩、「パンツまで下ろ」しているようには感じなかった。
富野の感想である「この映画の肝は航空映画」というのは完全に納得。
押井の感想に対しては、まあ判るけどラブロマンスには興味ないんで(笑)という感じか。
ちょっと良いな、と思った所を列挙すると。。。
母艦鳳翔での離発艦シーン。
発艦失敗し着水した搭乗員を救助する為、舷側から越中一丁で飛び込む乗員を描いていたりはサスガ。
『死の翼アルバトロス』とほぼ同じようなカットがあって、本当にああいう機体が好きだねと微笑してしまった。
戦闘シーンはゼロかと思いきや、渡洋爆撃する九六陸攻がI-15に襲われ発火するイメージシーンが一瞬あった。
零戦は10秒くらいしか出ないがw、搭乗員をちゃんと描いていた。
みんな鳥になって飛び去ったが。
SLは時代変遷に合わせて、輸入の外国製小型蒸気、96、86が使われていた(と思う)。
ラブロマンスでは「タバコが吸いたくなっちゃった」というシーン、仕事明けで喋りながら寝てしまうシーンは良かった。
ほんの5ミリくらい、再婚するのもいいのかもねとか思ってしまった(笑)。
どうでも良い事だが、カストルプってゾルゲがモチーフだったのね。。
計算尺を知っていて(使い方は知らないが)、戦前の航空史や機体構造を知ってる人にはお勧め出来る作品かも知れない。
何度か観たら違う感想が出るかも知れないが、一度目の感想はこんな所。