※この作品は国民的漫画「ドラえもん」15年後を描いた二次創作小説です。
皆様それぞれの原作イメージ壊したくない方はUターンをオススメします。
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前回まで。
25歳になった少年少女達は、第三次世界大戦という危機に直面していた。
政治家になった出来杉英才(できすぎ ひでとし)は、かつての旧友である源静香(みなもと しずか)を訪ね、ドラえもん=ブルーキャットの22世紀の未来技術を軍事利用しようと計画していることを告げる。
静香の身柄を拘束してまで秘密を聞き出そうとするが、その危機を救ったのは巨大企業の社長となった骨川周音夫(ほねかわ すねお)だった。
骨川は反戦運動に舵を切ると会社の方針を掲げることを宣言。
その広告塔に、人気絵師のクリスティーネ剛田を起用しようとした。
しかし、クリスティーネは骨川よりも更に過激な思想を持つ絵師仲間と連帯し、好戦派議員の出来杉を狙撃手を雇って暗殺しようと提案する。
それにより骨川サイドとは交渉は決裂したが、静香はその義賊的な狙撃手が旧友の野比伸太(のび のびた)ではないかと疑念を持ち、それを確かめる為にインドに渡る決断をした。
そこで再会した伸太はかつての優しさと大からさをそのままに供えていたが、その傍らには同じ日本人女性の月形まる代と、捨て子のプサディーが居た。
****
「さぁ、たくさん食べてね。
お客様はいつでも大歓迎よ!」
まる代さんの真意はわからないが、てんこ盛りの芋煮をよそうその姿は温かかった。勿論、それは「日本から来た観光客」としてだろうけど。
「…ここの芋はね、昔はドゥルイモと呼ばれててね、(こころの芋)って意味なんだよ。
大昔からここは外国人の往来が多かったらしくてね。
行商、兵士、留学生、僧侶、巡礼者、そして奴隷。いろんな人がこの地で芋を育てたんだ。
今でこそ技術や肥料が発達したけど、病気と気温差に弱いこの芋を育てるのは難しくてね。
生まれも育ちも違う人間達が、同じ芋を苦労して収穫にこぎつけたことから『相手の心がわかる芋』として長く愛されてきたんだ。…って、今はイギリスで入院中の伸郎叔父さんの受け売りだけどね。
静香ちゃんがインドまで僕を訪ねてきた理由は解らないけど、話したくなったらいつでも話してね。」
「ドゥルイモってね、育て方は難しくて弱々しいのに、他の作物の虫を避ける効果があるのよ。
誰かさんみたいでしょ?」
「まる代、それ僕のこと?」
続
「中学に入って直ぐに、母さんが倒れてね…。」
室内に案内され、チャイというお茶が出される。
想像以上に大きな家に驚いたが、ゾウタクシーや芋畑関連でたくさんの従業員やその家族で暮らしているからだと直ぐに理解した。
今、私にお茶を出してくれた女性も、まる代さんと交代でプサディーちゃんを育ててるんだろうなと思うと不思議な安堵を感じた。
そして伸太さんの口から「ママ」ではなく「母さん」という言葉が出たことに確かな時の流れを感じた。
「お母さまが?はるばるインドまで来て畑仕事をしてるのは、それがきっかけ?」
出来杉さんとクリスティーネ剛田さんの事を案じれば、じっくり身の上話を聞いてる暇はなく、伸太さんにもの周囲にもいつ危険が迫るかも知れないのに…。
「そうだね。父さんは片岡の実家に母を預け、自分も時間の都合が着く部署に配置転換を希望したよ。」
「急に転校して行ったのはそういうことだったのね…。」
「片岡の家には感謝している。
でも、僕も同級生よりも早く将来を意識するようになったよ。
なんとなく合格しただけの高校に惰性で通うよりも、伸郎叔父さんを慕って思い切ってインドに行こうって。」
「…まる代さんは、まさか貴方を追って?」
「まさか!彼女は高校の講演会に来た伸郎叔父さんの話に感激したけど、ご両親との約束で卒業してから海を渡ったよ。
まる代は今も言って るよ『あの講演会の時の、助手の伸太さんの頼りなさを見て、私でもゾウ使いになれそうって思った』てね。」
「ちょっと!私の居ない所で悪口はヤメテよ!
ほら、プサディーが泣いてるわ。私より貴方の方が泣き止ますの上手いから代わってよ!」
「わかった!静香ちゃん、ごめん後で。」
****
「…何の目標もなく、親やおじいちゃんが決めた相手と結婚させられるくらいなら、インドに…って甘い気持ちだったのは否定しないわ。
食べ物、医療、衛生、教育…自分がどれだけ恵まれていたか、ここに来て思い知らされたわ。
でも、『何も持ってなくてもいいんだよ』って教えてくれたのは伸郎先生よりも、伸太さんの方ね。
私ね、実は小学生の頃から伸太さんを知ってたの。」
「小学生から!?」
「驚かないの。
『隣町の野比君は遅刻記録に0点記録の更新中』って悪意のある噂の類いよ。高校に出席しないのも勉強についていけないからって勝手に思ってた。でも彼の生き方を知るほど自分が恥ずかしくなってきたわ」
続
室内に案内され、チャイというお茶が出される。
想像以上に大きな家に驚いたが、ゾウタクシーや芋畑関連でたくさんの従業員やその家族で暮らしているからだと直ぐに理解した。
今、私にお茶を出してくれた女性も、まる代さんと交代でプサディーちゃんを育ててるんだろうなと思うと不思議な安堵を感じた。
そして伸太さんの口から「ママ」ではなく「母さん」という言葉が出たことに確かな時の流れを感じた。
「お母さまが?はるばるインドまで来て畑仕事をしてるのは、それがきっかけ?」
出来杉さんとクリスティーネ剛田さんの事を案じれば、じっくり身の上話を聞いてる暇はなく、伸太さんにもの周囲にもいつ危険が迫るかも知れないのに…。
「そうだね。父さんは片岡の実家に母を預け、自分も時間の都合が着く部署に配置転換を希望したよ。」
「急に転校して行ったのはそういうことだったのね…。」
「片岡の家には感謝している。
でも、僕も同級生よりも早く将来を意識するようになったよ。
なんとなく合格しただけの高校に惰性で通うよりも、伸郎叔父さんを慕って思い切ってインドに行こうって。」
「…まる代さんは、まさか貴方を追って?」
「まさか!彼女は高校の講演会に来た伸郎叔父さんの話に感激したけど、ご両親との約束で卒業してから海を渡ったよ。
まる代は今も言って るよ『あの講演会の時の、助手の伸太さんの頼りなさを見て、私でもゾウ使いになれそうって思った』てね。」
「ちょっと!私の居ない所で悪口はヤメテよ!
ほら、プサディーが泣いてるわ。私より貴方の方が泣き止ますの上手いから代わってよ!」
「わかった!静香ちゃん、ごめん後で。」
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「…何の目標もなく、親やおじいちゃんが決めた相手と結婚させられるくらいなら、インドに…って甘い気持ちだったのは否定しないわ。
食べ物、医療、衛生、教育…自分がどれだけ恵まれていたか、ここに来て思い知らされたわ。
でも、『何も持ってなくてもいいんだよ』って教えてくれたのは伸郎先生よりも、伸太さんの方ね。
私ね、実は小学生の頃から伸太さんを知ってたの。」
「小学生から!?」
「驚かないの。
『隣町の野比君は遅刻記録に0点記録の更新中』って悪意のある噂の類いよ。高校に出席しないのも勉強についていけないからって勝手に思ってた。でも彼の生き方を知るほど自分が恥ずかしくなってきたわ」
続
「随分昔…『いつの日か、鍵と錠前の形をしたペンダントを下げた、僕と同い年の男性か女性が尋ねて来たら、僕は日本に帰らなければならないかもしれない。』と彼は言ってたわ。
まさか女が先に来ると思わなかったけど…どんな関係?」
快く彼の元へ案内してくれる日本人らしきガイドの女性。
インドのジャイプール近くで直ぐに日本語が話せる女性に出会えたのは心強いが、「貴女こそどんな関係?」とは到底聞けなかった。
「…その…小学生時代の友達です…。。」
「そう、私は高校生から彼を知ってるから、貴女の方が先輩ね。」
高校からの知り合い?それだともう7年もの付き合い?じゃあ、奥さんなのかな…?
二人で一緒にインドに来たのかな?
伸太さんを追ってインドまで来たのに、今はこの女性が気になって仕方ない。
骨川さんにも河井秘書という実質的な公私のパートナーが居るくらいなんだから、不思議ではないけど…。
「彼は今は畑で芋作りに専念してるわ。
去年でゾウの訓練士は私に譲ってね…。」
「あの…貴女は一体?」
「着いたわ。見えるでしょう。あそこで鍬を持ってるのが野比伸太さんよ。」
畑を耕すその青年は、細身ながらも、力強い動作で鍬を降り下ろしていた。
足はしっかりと大地を踏み締め、確かな彼の成長が、流れた歳月を呼び起こした。
しかし、「伸太さん!」と遠くから叫ぶのを躊躇してしまったのは、彼の背に背負われた、小さな赤子の姿だった。
可能性を考えなかったわけではなかったが、決定的な事実を目の当たりにして、脱力した私はその場にしゃがみこんでしまった。
傍らの彼女が何を察したのか聞くのは怖いが、右手を差し出して私を引き起こしながら囁いてくれた。
「早とちりねぇ、安心しなよ。
私の子じゃないわ。
あの子の褐色の肌をちゃんと見て。
捨て子を私達で育ててるの。
私、月形まる代。野比伸郎先生の講演会がきっかけでインドまで押し掛けの弟子入りしちゃったの。
だから伸太さんは兄弟子ってかんじかな?」
…正直「良かった」と安心した自分に腹が立つ。
何年も伸太さんを本気で探そうともしなかったくせに…。
****
「し、静香ちゃんなの?ゆ、夢じゃないよね…?」
「お久しぶりです。
伸太さん。
ええ、源静香です。
会えて嬉しいです。」
「まる代、プサディーを頼む。二人で話したい。」
続
まさか女が先に来ると思わなかったけど…どんな関係?」
快く彼の元へ案内してくれる日本人らしきガイドの女性。
インドのジャイプール近くで直ぐに日本語が話せる女性に出会えたのは心強いが、「貴女こそどんな関係?」とは到底聞けなかった。
「…その…小学生時代の友達です…。。」
「そう、私は高校生から彼を知ってるから、貴女の方が先輩ね。」
高校からの知り合い?それだともう7年もの付き合い?じゃあ、奥さんなのかな…?
二人で一緒にインドに来たのかな?
伸太さんを追ってインドまで来たのに、今はこの女性が気になって仕方ない。
骨川さんにも河井秘書という実質的な公私のパートナーが居るくらいなんだから、不思議ではないけど…。
「彼は今は畑で芋作りに専念してるわ。
去年でゾウの訓練士は私に譲ってね…。」
「あの…貴女は一体?」
「着いたわ。見えるでしょう。あそこで鍬を持ってるのが野比伸太さんよ。」
畑を耕すその青年は、細身ながらも、力強い動作で鍬を降り下ろしていた。
足はしっかりと大地を踏み締め、確かな彼の成長が、流れた歳月を呼び起こした。
しかし、「伸太さん!」と遠くから叫ぶのを躊躇してしまったのは、彼の背に背負われた、小さな赤子の姿だった。
可能性を考えなかったわけではなかったが、決定的な事実を目の当たりにして、脱力した私はその場にしゃがみこんでしまった。
傍らの彼女が何を察したのか聞くのは怖いが、右手を差し出して私を引き起こしながら囁いてくれた。
「早とちりねぇ、安心しなよ。
私の子じゃないわ。
あの子の褐色の肌をちゃんと見て。
捨て子を私達で育ててるの。
私、月形まる代。野比伸郎先生の講演会がきっかけでインドまで押し掛けの弟子入りしちゃったの。
だから伸太さんは兄弟子ってかんじかな?」
…正直「良かった」と安心した自分に腹が立つ。
何年も伸太さんを本気で探そうともしなかったくせに…。
****
「し、静香ちゃんなの?ゆ、夢じゃないよね…?」
「お久しぶりです。
伸太さん。
ええ、源静香です。
会えて嬉しいです。」
「まる代、プサディーを頼む。二人で話したい。」
