「そ、そうだよ。大事な首脳会談でぶっつけ本番てのは不味いよね。
僕たちが実験台になってさ…。」
わかってる…。誰だってブルーキャットの未来技術があれば使いたくなるのは当然よ。
世界平和の為にと言いながら、三人の男性は、

「ムード盛り上げ楽団」で、自分にどんな効果が現れるか試したくなっていたのだ。
ラッパと太鼓とヴァイオリンで三体だけのミニロボット楽団だけど、彼らの奏でる音楽を聴いた者達は、自分の本心がより強化される。
本来は、試合やプレゼンテーションなどの「大舞台で成功するBGM用ロボット」として開発されたのだという。
しかし、これを使用した者は、成功を願うよりも、不満をぶちまけることが先行した者が多数居るという。
プレゼンの席で商品の素晴らしさよりも、報酬や今後の引き抜き話に終始したり、スポーツの試合では勝利よりも監督の采配を公に批判する選手も居た。
そう、これは決して「ウソが上手くなる機械」ではないのだ。
それを理解してるのかしてないのかに関係なく、使用することを躊躇わない周音(スネ)夫さん、武(たけし)さん、英才(ひでとし)さん。
社会人としてそれぞれ立派になられても、どこか皆が少年のままだなぁなんて。
そして私も迷いなく四次元ポケットから最後の道具としてムード盛り上げ楽団を出した。三体の起動スイッチを押した。
一番怖がってたのは私かもしれない。
私の中の奥底にある本心が強化されるなんて…。
演奏された曲は、ショパンとベートーベンの名曲をアレンジしたようなクラシックぽくないような曲だった。
切なさを前面に出しながらも、力強さと達観した様な安らぎを表現したような旋律だった。
皆が聞き入る中、真っ先に沈黙を破ったのは武さんだった。
「俺さ、このムード盛り上げ楽団をバックにリサイタルしたことあったんだ。
でも結果は大失敗だった。唯一最後まで聴いてくれた先生は倒れちまったよ。
おかしいよな?『観衆を感動させたい』って気持ちが強化されるなら、拍手喝采なのに…。今になってわかるよ。俺は自分を大きく見せたかっただけなんだな…。」
「ジャイアン、静香ちゃん、出来杉。今からでも伸太に会いに行こうぜ!」
「僕も同じだ。一言、バカヤローて言ってやりたいよ」
英才さんまで。
私も…会いたいです。
続