最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦 -34ページ目

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

男の友情に言葉は不要だった。
私達が突然押し掛けたのにも関係なく、伸太さん宅で開かれた夜の宴。

小学生時代の伸太さんが私に

「未来を見て来たよ」
と、得意気に話してくれた画とは違うけど…。

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そこには確かに大人になった男性三人が飲み明かす姿があった。
私と伸太さんとの結婚を祝う前夜祭じゃなかったけど…。

遥かインドの土地で、ゾウ使いとイモ農園の主として一人前の男性になっていたことに、武さん、周音夫さん、英才さんは手荒な歓迎をした。
私との仲を祝福した未来ではなかったけど、皆がドラちゃん抜きで伸太さんを一人前の男性と認めたこと。それこそが私が最も望んでいた未来だったのかもしれない。
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エムポパさんは
「伸太は子供の頃、シズカと会社ごっこして楽しかったと話してたよ。
全然儲からなかったけど、自分が社長でシズカが秘書。それだけで良かったんだ」と。

私も同じ想いでした。
「なんでも引き受け会社」
を立ち上げて、伸太さんは儲けを山分けしようと言ってくれたけど、私は小さな男の子の役に立てただけで満足だった。
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そう、私は自分が皆の役に立つことで、皆の成功に繋がればそれで良いと願ってたのね…。
夏休み恒例の冒険?では、伸太さんは異世界の男と仲良くなり、武さんは身体を張り、周音夫さんは機転を利かせた。
残った私がトラックのハンドルを握らせらたくらいだ(笑)。
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うん、私は誰よりも皆の成長と活躍を望んでいた。誰よりも伸太さんの…。
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宴が続く中、もはや本来の目的を忘れて?歌のバックバンドとして、ムード盛り上げ楽団を起動させた私。
伸太さんの素直な心は…。

「大使館職員の雁野は僕らのクラスメートのガリベン君だよ。皆憶えてなかったみたいだけど…。
僕はあいつをも守りたい。
皆、協力してくれないか?」

「ガリベン雁野が大使館職員だったらなんだっつーの?
明日の会談で、俺達の仲間じゃなくとも、自分の仕事をするだけだろ?」

「彼なら…出来杉への妬みから蛮行に及ぶかもしれない。
わかった。僕も会談に出るけど、狙撃手として身を潜めてあいつを見張るよ。」

「それなら私の四次元ポケットの中に隠れたら?」

「静香さん!どうしたの、こんな夜に?一昨日に晩餐会用のドゥル芋は渡したばかりなのに…。」

「まる代さん、突然押し掛けてごめんなさい!あの…。」

と、私が首から下げたブルーキャットの封印の鍵を見せれば、後方の武さんと周音夫さんも同じ仕草をする。
それだけでまる代さんは「あぁ…。」と察したようだった。
そして鍵を持ってない出来杉さんにいち早く気付き…。

「貴方はテレビで観たことがあるわ。
こんな田舎にこれだけの人数で訪れても、私達が守ってあげれるか解らないわ。」

と言って、私達は奥に案内された。

「おいおい、あれが噂の伸太の奥さんかよ!?
かなりの美人じゃないか?」

「わが社の広報担当に欲しいくらいだね。
インドの田舎で農園とゾウの世話なんて勿体無いよ。」

「彼女は伸太さんの叔父さんを慕ってきたのよ。
その後、二人で孤児を育てることになったけど…ね。」

遂にここまで来た。
階段を下りてくる音が聞こえてから、その姿が表れるまでの間が凄く長く感じた。
この高ぶりもムード盛り上げ楽団の影響だろうか?

数日前にも普通に会っていた。
事務的な会話だけで芋を貰った。
同じく事務的な会話で
「晩餐会に芋を提供したゲストとして、大使館から招待されてたけど断ったよ」と聴いただけだった。
だが今日見る彼のその姿は、私達が知る小学生時代の伸太さんが、そのまま大きくなったようだった。

「ジャイアン!スネ夫!出木杉まで!」

私とはこの数ヶ月、何度も会っているから驚きもないと思いたいが、名前を呼ばれなかったのは少々心外だ。それだけ私は彼にとって「当たり前、普通」であると思いたいけど…。

「伸太!」
「伸太!」
「伸太くん!」

固く輪になり抱き合い、再会を喜ぶ4人の男性。
世界の未来を担う青年四人が文字どおりスクラムを組むその姿に涙が止まらなかった。
真っ先に口を開いた出来杉さんは
「伸太くん。弁解が許されるなら、僕は戦乱の世の中で結果を求め過ぎた。子供の時の様な君が僕の傍らに居てくれたらと何度思ったか…。」

尋ねられる前から議員として戦争を主導したことを伸太さんに懺悔する出来杉さん。これも楽団のお陰?
そして周音夫さんは…。

「バシッ!」

と伸太さんを殴った!

「この拳がジャイアンじゃなかったことを有り難く思え!」

と言い、その武さんは

「馬鹿野郎!何も言わずに水くさいじゃねぇか!
俺達は心の友だろ!」
「お囃子(はやし)」とは良く言ったものだ。
ドラちゃんの秘密道具「ムード盛り上げ楽団」によって、私達は勢い付けられた。
そして四人が四人とも心から願ったことが

「今から伸太(のびた)さんに会いに行く」

だった。

出来杉さんも周音夫(スネ夫)さんも取り巻き連中をホテルに残し、私達だけで車に乗り込み、伸太さんが住む芋農園を目指した。

「おい、周音夫!もっと飛ばせよ!」

「これ以上は無理だよ、ジャイアン。」

世界的な大企業のCEO自ら運転する車に同級生が乗り込み、同級生宅に押し掛ける。
周音夫さんは部下にハンドルを握らせるのを嫌がる社長さんだった。
でも、私は彼の部下の研究員であるし、親友でもある。
友達が運転する車なら周音夫さんも嫌がらないはず。

「代わりましょう、周音夫さん。私が運転するわ。」

「静香ちゃん…わかった。一旦、停車させるからそこで代わろう。」

「ごめんね、静香くん。僕と武くんはインドでの国際免許を持ってないから…。」

「いいのよ、防衛大臣、副大臣様は私が無事に送り届けるわ♪」

「お~静香ちゃん、何か生き生きしてるな~。そんなに早く伸太に会いたいのか?羨ましいぜ、伸太の野郎~。」

「うん、それもあるけど…居心地いいのよ、皆と居ると。余計なしがらみを考えずに、私が私で居られるって言うか…。だからこそ、伸太さんも含めて私は皆とこれからも居たいのよ!!
それと…。」

「それと後はドラえもんだろ?
どちらにせよ、伸太の同意もなきゃ、『俺達』のドラえもんは復活しねぇんだよ!あいつがまた行方不明にならねぇ保証もねぇしな。」

「武くんの言うとおりだよ。
感情論を抜きにして、伸太くんにその意志がないのなら、僕にその封印の鍵を預からせてくれないかと交渉はしてみるつもりだよ。」

「ハハハ、皆、ムード盛り上げ楽団の影響受けすぎだよ!
こいつはいいな。早くウチの会社で簡易版を開発に取り組まないと。」

「全員が正直になっても周音夫は金儲けばっかりだっつーの!」

「ジャイアンが変化なさすぎなんだよ!」

「あぁ、俺はいつでも誰に対しても正直だからな!だが気持ちは昂ってるぜ!」

…私は…武さん、周音夫さんと居れば男同士の仲間で居られる。そして…出来杉さんはいつも一歩引いた場所から
「君はこのままで良いんだよ」
と背中を押してくれる。
だからこそ私は伸太さんの気持ちと、私自身の気持ちを知りたい。