「静香さん!どうしたの、こんな夜に?一昨日に晩餐会用のドゥル芋は渡したばかりなのに…。」
「まる代さん、突然押し掛けてごめんなさい!あの…。」
と、私が首から下げたブルーキャットの封印の鍵を見せれば、後方の武さんと周音夫さんも同じ仕草をする。
それだけでまる代さんは「あぁ…。」と察したようだった。
そして鍵を持ってない出来杉さんにいち早く気付き…。
「貴方はテレビで観たことがあるわ。
こんな田舎にこれだけの人数で訪れても、私達が守ってあげれるか解らないわ。」
と言って、私達は奥に案内された。
「おいおい、あれが噂の伸太の奥さんかよ!?
かなりの美人じゃないか?」
「わが社の広報担当に欲しいくらいだね。
インドの田舎で農園とゾウの世話なんて勿体無いよ。」
「彼女は伸太さんの叔父さんを慕ってきたのよ。
その後、二人で孤児を育てることになったけど…ね。」
遂にここまで来た。
階段を下りてくる音が聞こえてから、その姿が表れるまでの間が凄く長く感じた。
この高ぶりもムード盛り上げ楽団の影響だろうか?
数日前にも普通に会っていた。
事務的な会話だけで芋を貰った。
同じく事務的な会話で
「晩餐会に芋を提供したゲストとして、大使館から招待されてたけど断ったよ」と聴いただけだった。
だが今日見る彼のその姿は、私達が知る小学生時代の伸太さんが、そのまま大きくなったようだった。
「ジャイアン!スネ夫!出木杉まで!」
私とはこの数ヶ月、何度も会っているから驚きもないと思いたいが、名前を呼ばれなかったのは少々心外だ。それだけ私は彼にとって「当たり前、普通」であると思いたいけど…。
「伸太!」
「伸太!」
「伸太くん!」
固く輪になり抱き合い、再会を喜ぶ4人の男性。
世界の未来を担う青年四人が文字どおりスクラムを組むその姿に涙が止まらなかった。
真っ先に口を開いた出来杉さんは
「伸太くん。弁解が許されるなら、僕は戦乱の世の中で結果を求め過ぎた。子供の時の様な君が僕の傍らに居てくれたらと何度思ったか…。」
尋ねられる前から議員として戦争を主導したことを伸太さんに懺悔する出来杉さん。これも楽団のお陰?
そして周音夫さんは…。
「バシッ!」
と伸太さんを殴った!
「この拳がジャイアンじゃなかったことを有り難く思え!」
と言い、その武さんは
「馬鹿野郎!何も言わずに水くさいじゃねぇか!
俺達は心の友だろ!」
続