「お囃子(はやし)」とは良く言ったものだ。
ドラちゃんの秘密道具「ムード盛り上げ楽団」によって、私達は勢い付けられた。
そして四人が四人とも心から願ったことが
「今から伸太(のびた)さんに会いに行く」
だった。
出来杉さんも周音夫(スネ夫)さんも取り巻き連中をホテルに残し、私達だけで車に乗り込み、伸太さんが住む芋農園を目指した。
「おい、周音夫!もっと飛ばせよ!」
「これ以上は無理だよ、ジャイアン。」
世界的な大企業のCEO自ら運転する車に同級生が乗り込み、同級生宅に押し掛ける。
周音夫さんは部下にハンドルを握らせるのを嫌がる社長さんだった。
でも、私は彼の部下の研究員であるし、親友でもある。
友達が運転する車なら周音夫さんも嫌がらないはず。
「代わりましょう、周音夫さん。私が運転するわ。」
「静香ちゃん…わかった。一旦、停車させるからそこで代わろう。」
「ごめんね、静香くん。僕と武くんはインドでの国際免許を持ってないから…。」
「いいのよ、防衛大臣、副大臣様は私が無事に送り届けるわ♪」
「お~静香ちゃん、何か生き生きしてるな~。そんなに早く伸太に会いたいのか?羨ましいぜ、伸太の野郎~。」
「うん、それもあるけど…居心地いいのよ、皆と居ると。余計なしがらみを考えずに、私が私で居られるって言うか…。だからこそ、伸太さんも含めて私は皆とこれからも居たいのよ!!
それと…。」
「それと後はドラえもんだろ?
どちらにせよ、伸太の同意もなきゃ、『俺達』のドラえもんは復活しねぇんだよ!あいつがまた行方不明にならねぇ保証もねぇしな。」
「武くんの言うとおりだよ。
感情論を抜きにして、伸太くんにその意志がないのなら、僕にその封印の鍵を預からせてくれないかと交渉はしてみるつもりだよ。」
「ハハハ、皆、ムード盛り上げ楽団の影響受けすぎだよ!
こいつはいいな。早くウチの会社で簡易版を開発に取り組まないと。」
「全員が正直になっても周音夫は金儲けばっかりだっつーの!」
「ジャイアンが変化なさすぎなんだよ!」
「あぁ、俺はいつでも誰に対しても正直だからな!だが気持ちは昂ってるぜ!」
…私は…武さん、周音夫さんと居れば男同士の仲間で居られる。そして…出来杉さんはいつも一歩引いた場所から
「君はこのままで良いんだよ」
と背中を押してくれる。
だからこそ私は伸太さんの気持ちと、私自身の気持ちを知りたい。
続