「あぁ、いよいよだな…。」
「私一人の力ではここまでたどり着けなかったわ。本当にありがとう。」
インドで実施される日米印の三ヶ国会談。
そしてその晩餐会で私が開発した「21世紀版・ほんやくコンニャク」

が出されることも決定した。
その為に外務大臣以上に交渉してくれた出来杉防衛大臣。
その出来杉さんを説得?してくれた副大臣の剛田武さん。
私に研究の時間と資金とスタッフを提供してくれた骨川周音夫社長。
私と幼少期を過ごした三人の男性が遂にインドに揃った…。
ただ…。
「静香くん、野比くんが気がかりなのは解るが、もう諦めようよ!
彼には守るべき家族があるんだから!」
「出来杉の言うとおりだぜ!俺も逆の立場なら、家族と村の為に、『世界平和なんかどうでもいい』ってなるかも知れないっつーの!」
「わかってるわ武さん、英才さん!
別に私達側に協力してほしいとかじゃなくて…。
伸太さんには窮屈に自分の本心を押し殺してほしくないのよ…。」
「ねぇ、静香ちゃん。それって首脳同士の話し合いの問題点でもあるよね。
いくら通訳なしで会話出来ても、本心を語るとは限らないって。
じゃあさ、静香ちゃんの鍵でさ、ドラえもんのポケットを使って『素直になれる道具』とかってないの?」
「それだ!流石、周音夫!悪知恵だけなら出来杉より賢いぜ!」
「酷いなジャイアン!悪知恵って」
「確かに私が使える道具は3つ。
最初に伸太さんを探す為の『尋ね人ステッキ』。そして本物を開発見本として使用した『ほんやくコンニャク22世紀完全版』。
あと一つ残ってるわ…。」
「素直になれるか…。そんな道具あるの?」
何故かその時、私は一つの道具を鮮明に記憶していた。

「ムード盛り上げ楽団」よ。
それはその状況下で最適な音楽を奏でてくれるバンドロボット。
その音楽の効果は絶大で、明るい曲で嬉しくなり、悲しい曲で寂しさは倍加する。
でも、「心から望むことを迷いなく実行させること」が出来るのだ。
当時、「勝ちたい」と強く願った伸太さんは、自分の拳だけで武さんに勝ったこともあったわ。秘密道具でズルしたのとは明らかに違う。
気持ちが強くなっただけで、身体は変わってなかったんだから。
(続)