兵士は一目散に逃げていった。
魔物の娘に手を出したという罪悪感に、未来永劫苦しむがいいと、俺は願うばかりだ。
俺は鎧の魔物であるダンテに助けられた。
いや、俺だけじゃない。決闘を申し込もうとした、オメガ、サラ、アビスをも守ってくれた。
王国の兵士と決闘し、勝つのは当然としても遺恨を残す形となったろう。
世の中は常に複雑で面倒だ。見える範囲の正義を振りかざすことがどれほど安易で短絡的かと思う。
例えば、この件でも、被害を受けたサイクロプスの娘以上に…。
「フィーネ、終わったぜ…。」
「ご、ごめんなさいです…。わ、私何の役にも立てず…。」
村人と魔物の人だかりの片隅で、しゃがみ込みガタガタと震える12才の少女。
村の娘ではない。れっきとした勇者セイジ一行の優秀な魔法使い「フィーネ=クライマクス」だ。
「アビス、フィーネを部屋に。
かなり怖がっている、夜まで付き添ってやれ。」
「あいよ、あんな連中を目の当たりにしたらね…。
大丈夫よ、全部セイジとダンテが片付けてくれたからさ。」
アビスに手を引かれ、漸く弱々しく立ち上がる少女。
「ごめんなさいです…。私、セイジお兄ちゃんの足手まといで…。」
「気にするな、フィーネが魔物には滅法強くても、『人間の男』だけは駄目なのはわかってるからな。」
「ごめんなさい、昨日まで一緒に遊んでたモノアちゃんとノアイちゃんがそんな目に遭ったって聞いただけで足がすくんで…。」
フィーネ=クライマクス。
天才的な魔力を持って生まれた故に親に捨てられた少女。
我流の魔法を駆使して、路上の孤児として生きてきたが、俺達の出会いにより、心を取り戻す。
特に最年長のアビスは彼女の教育に尽力した。
「あの娘は大人になっても、私の店じゃ働かせられないわね」が口癖。
また、ダンテが仲間入りしてからは、彼を魔法の師と仰ぎ、天性の才能が一足飛びに開花することになる。
****
「オメガ、ちょっといいか?」
その日の夜、俺はオメガの部屋をノックした。
「なぁ、オメガ。寝る前にフィーネの部屋に行って声をかけた方がいいかなぁ?」
「い、いきなり部屋に来て、なんであたしにいちいち聞くのよ!?
フィーネちゃんの事はアビスに聞けば?」
「あっ、なんていうか…。」
「うん…。でもあたしに聞きにきてくれたの嬉しいよ…。
明日特に予定ないんでしょ?
お天気良いからフィーネちゃんをどっかに誘ったら?」続
※あくまでメモなんだからね!
サイクロプス…ゲームでも有名な一つ目の巨人。原始人の様な服装で棍棒を振り回す姿で描かれる事が多い。
起源はギリシャ神話に由来し、火山の麓に住む優秀な鍛冶職人で、オリンポスの神々に鉾などを捧げていたという。
なお、日本の妖怪の「一本だたら」も一つ目の鍛冶屋である。
これは鍛冶職人は高温の火を見る機会が多く、その為に片目を失明してしまう職業病と関連付けられているのでは?との説が有力である。
(出典 萌えるモンスター事典)
蛇足までに最近の創作では、サイクロプスの女性は、その一つ目が大きければ大きいほど魅力的とされている。
が、これは同族内のサイクロプスに限った話であり、人間の男性からは、人間と同じくらいの小さな目の女の子の方がモテる。特に顔の中央でなく、左右どちらかにその一つ目がある稀少な女子は反対側に眼帯をすることで、ほぼ人間と変わらずモテモテである。
****
余計な紛争を避けたい俺の気持ちを汲んでくれたのは、冒険を共にしてきた「魔物の仲間」である
ダンテ=ロダン。
剣術も魔法も防御耐性も優秀な彼だが、その最大の能力は「変身」だ。
と、言っても身体が変化する訳ではない。
彼は漆黒の鎧そのもののモンスターである。分類として「リビングアーマー」とか「ムービングアーマー」とか「さまよう鎧」とか呼ばれている、魂を持った鎧である。
彼の漆黒の鎧は、鏡の様に相手を反射する。
その鎧に写し出される姿は、相手の心の奥底から最も恐怖を憶えた相手だという。
彼は勇者セイジ一行が訪れるまで、洞窟の中で伝説の剣を守り続けていた。
その洞窟の入り口には「汝、自身に克て」と彫られていた。
オメガ、サラ、アビス、フィーネ。四人の女性はそれぞれ、この漆黒の鎧に思い出したくもない過去のトラウマ相手を写し出された。
だが勇者セイジは彼を倒した。本来なら焼け野原にされた10年前のシオンの村を思い出さされるのだろうが、それは現実世界から来た火依深聖児(ひよりみ せいじ)に取って「設定」に過ぎなかったからだ。
伝説の剣だけでなく、優秀な部下も手に入れた勇者セイジ一行は、大魔王打倒まで一気に距離を縮めることとなった。
****
現在、王国の兵士達は、その漆黒の鎧に今しがた暴行したばかりのサイクロプスの少女を見た。
それは兵士達が感じていた僅かばかりの罪の意識が、ダンテの鎧で増幅されたからだ。
兵士達は退散した
サイクロプス…ゲームでも有名な一つ目の巨人。原始人の様な服装で棍棒を振り回す姿で描かれる事が多い。
起源はギリシャ神話に由来し、火山の麓に住む優秀な鍛冶職人で、オリンポスの神々に鉾などを捧げていたという。
なお、日本の妖怪の「一本だたら」も一つ目の鍛冶屋である。
これは鍛冶職人は高温の火を見る機会が多く、その為に片目を失明してしまう職業病と関連付けられているのでは?との説が有力である。
(出典 萌えるモンスター事典)
蛇足までに最近の創作では、サイクロプスの女性は、その一つ目が大きければ大きいほど魅力的とされている。
が、これは同族内のサイクロプスに限った話であり、人間の男性からは、人間と同じくらいの小さな目の女の子の方がモテる。特に顔の中央でなく、左右どちらかにその一つ目がある稀少な女子は反対側に眼帯をすることで、ほぼ人間と変わらずモテモテである。
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余計な紛争を避けたい俺の気持ちを汲んでくれたのは、冒険を共にしてきた「魔物の仲間」である
ダンテ=ロダン。
剣術も魔法も防御耐性も優秀な彼だが、その最大の能力は「変身」だ。
と、言っても身体が変化する訳ではない。
彼は漆黒の鎧そのもののモンスターである。分類として「リビングアーマー」とか「ムービングアーマー」とか「さまよう鎧」とか呼ばれている、魂を持った鎧である。
彼の漆黒の鎧は、鏡の様に相手を反射する。
その鎧に写し出される姿は、相手の心の奥底から最も恐怖を憶えた相手だという。
彼は勇者セイジ一行が訪れるまで、洞窟の中で伝説の剣を守り続けていた。
その洞窟の入り口には「汝、自身に克て」と彫られていた。
オメガ、サラ、アビス、フィーネ。四人の女性はそれぞれ、この漆黒の鎧に思い出したくもない過去のトラウマ相手を写し出された。
だが勇者セイジは彼を倒した。本来なら焼け野原にされた10年前のシオンの村を思い出さされるのだろうが、それは現実世界から来た火依深聖児(ひよりみ せいじ)に取って「設定」に過ぎなかったからだ。
伝説の剣だけでなく、優秀な部下も手に入れた勇者セイジ一行は、大魔王打倒まで一気に距離を縮めることとなった。
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現在、王国の兵士達は、その漆黒の鎧に今しがた暴行したばかりのサイクロプスの少女を見た。
それは兵士達が感じていた僅かばかりの罪の意識が、ダンテの鎧で増幅されたからだ。
兵士達は退散した
王国からシオンの村に派遣された兵士。
その兵士様が俺の忠実な部下、サイクロプスの才蔵の娘に手を出したってんだから大変だ。
「王国の兵も地に落ちたな。
お前達の蛮行は元騎士団長のオメガ=カタストロフィが責任を取る。
全員抜刀しろ。拙者が切り捨てる。」
「待ってくださいませ、オメガ!
王国の不始末は私の責任です。
王族である私、ネハン=サラ=ソージュが決闘を申し込みます!」
「待ちな。才蔵さんの娘のノアイちゃんとモノアちゃんは私が人間社会でのレディの振る舞いを教えてたんだよ。
王国も騎士も関係ない。
ぱふぱふ屋の用心棒時代からこういう輩は数えきれないほど相手してきた。
このアビス=エデンに任せな。」
勇者セイジ一行の仲間4人の内三人の女性が決闘を申し込んだ。
サイクロプスは魔物とはいえ、シオンの村の復興に尽力してきた仲間だ。
強い絆に感動はするが…。
俺は現実世界での日本史を思い出した。
幕末に大名行列を横切った外国人を切ったことで国際問題になった生麦事件。
関ヶ原の戦の後、暴行を働いた福島正則の部下を咎めた番士と衝突が起きた伊奈事件。
緊張状態の相手国の罪を責めるのはとてもデリケートだ。
勿論、オメガ達がこいつらを切り捨てるのは簡単だ。
だが、王国の国民達に「切られても仕方ない。」
と思わせるにはまだ不十分だ…。
それでは俺の計画の第二段階である「世界七つの王国の解体」に国民が納得し辛くなる。
この兵士達は取るに足らない小石だ!
だが、この小石の躓きが俺の計画の大きな障壁になるかもしれない。
よし、ここは俺自身が決闘を申し込むしかない俺の金看板がまだ錆び付いてない今なら、こいつらの蛮行を知らしめた「勇者セイジ」の鉄槌として…。
「オメガ、サラ、アビス。やめろ、ここは…。」
と名乗り出ようとした時、その俺を制止したのは
「セイジ様、ここは私にお任せを…。『勇者セイジ』の評判を敢えて貶めるにはまだ早いかと…。」
「ダンテ!魔物のお前は才蔵と同じだ。奴らに大義を与える!」
「ええ、確かにこの伽藍堂な鎧姿ならそうでしょう。
ですが私には変身魔法があります。」
「ダンテ!」
ダンテは旅を共にした「仲間の怪物」だ。力は才蔵ほどではないが、平均的になんでも出来る所を買って仲間にした。
いまでは俺の「男友達の相談相手」だ。
「被害を受けた才蔵の娘に変身します。これなら『やり返しただけ』」です
その兵士様が俺の忠実な部下、サイクロプスの才蔵の娘に手を出したってんだから大変だ。
「王国の兵も地に落ちたな。
お前達の蛮行は元騎士団長のオメガ=カタストロフィが責任を取る。
全員抜刀しろ。拙者が切り捨てる。」
「待ってくださいませ、オメガ!
王国の不始末は私の責任です。
王族である私、ネハン=サラ=ソージュが決闘を申し込みます!」
「待ちな。才蔵さんの娘のノアイちゃんとモノアちゃんは私が人間社会でのレディの振る舞いを教えてたんだよ。
王国も騎士も関係ない。
ぱふぱふ屋の用心棒時代からこういう輩は数えきれないほど相手してきた。
このアビス=エデンに任せな。」
勇者セイジ一行の仲間4人の内三人の女性が決闘を申し込んだ。
サイクロプスは魔物とはいえ、シオンの村の復興に尽力してきた仲間だ。
強い絆に感動はするが…。
俺は現実世界での日本史を思い出した。
幕末に大名行列を横切った外国人を切ったことで国際問題になった生麦事件。
関ヶ原の戦の後、暴行を働いた福島正則の部下を咎めた番士と衝突が起きた伊奈事件。
緊張状態の相手国の罪を責めるのはとてもデリケートだ。
勿論、オメガ達がこいつらを切り捨てるのは簡単だ。
だが、王国の国民達に「切られても仕方ない。」
と思わせるにはまだ不十分だ…。
それでは俺の計画の第二段階である「世界七つの王国の解体」に国民が納得し辛くなる。
この兵士達は取るに足らない小石だ!
だが、この小石の躓きが俺の計画の大きな障壁になるかもしれない。
よし、ここは俺自身が決闘を申し込むしかない俺の金看板がまだ錆び付いてない今なら、こいつらの蛮行を知らしめた「勇者セイジ」の鉄槌として…。
「オメガ、サラ、アビス。やめろ、ここは…。」
と名乗り出ようとした時、その俺を制止したのは
「セイジ様、ここは私にお任せを…。『勇者セイジ』の評判を敢えて貶めるにはまだ早いかと…。」
「ダンテ!魔物のお前は才蔵と同じだ。奴らに大義を与える!」
「ええ、確かにこの伽藍堂な鎧姿ならそうでしょう。
ですが私には変身魔法があります。」
「ダンテ!」
ダンテは旅を共にした「仲間の怪物」だ。力は才蔵ほどではないが、平均的になんでも出来る所を買って仲間にした。
いまでは俺の「男友達の相談相手」だ。
「被害を受けた才蔵の娘に変身します。これなら『やり返しただけ』」です