モーツァルトはお好き?映画『アマデウス』 | 岩下智子「笛吹女の徒然日記」Tomoko Iwashita

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フルート奏者 岩下智子が綴る気ままな日記です。

こんにちは!

フルーティストの岩下智子です。

 

モーツァルトはお好きですか?

オーストリア、ザルツブルグに生まれたヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、天才と言われ、彼の音楽は全世界の人々に愛されています。

 

 このモーツァルトを主人公とした映画「アマデウス」というのがありまして、ご覧になられた方はきっと多いと思いますが、まさにこの天才モーツァルトが主人公の映画です。まだ観ていない方は、ぜひ自粛期間にご覧になってみてください。

 

 この映画『アマデウス』(Amadeus )は、ブロードウェイの舞台『アマデウス』を映画化したもので、1984年に制作されました。マーリー・エイブラハム演じるアントニオ・サリエリの視点上から、トム・ハルス演じるモーツァルトの物語を描いたものです。

 

 簡単にストーリーをご紹介しますと、

182311月、凍てつくウィーンの街で1人の老人が自殺をはかった。「許してくれモーツァルト、おまえを殺したのは私だ!」老人は浮わ言を吐きながら精神病院に運ばれた。数週間後、元気になった老人は神父フォーグラーに、驚きの告白をはじめたのだった。その老人の名はアントニオ・サリエリ。かつてはオーストリア皇帝ヨゼフ二世に仕えた作曲家だった。神が与え給うた音楽の才能に深く感謝し、音楽を通じて神の下僕を任じていた彼だが、神童としてその名がヨーロッパ中に轟いていたウォルフガング・アマデウス・モーツァルトが彼の前に出現したとき、その運命が狂い出したのだ。


 このようなサリエリの告白シーンから始まります。サリエリ自身、名誉ある宮廷音楽家であり、素晴らしい作品を残した名作曲家だったのですが、一般にモーツァルトを毒殺したという過激な噂があるものですから、このような映画になってしまったのですよね~。ちょっとお気の毒な気もしますね。

 実に、このサリエリだけは、モーツァルトの才能が、神の寵愛を受ける唯一最高のものであることを理解していたと言われています。それは、サリエリがモーツァルトのオリジナルの楽譜をコンスタンツェからこっそり見せてもらうシーンでよく表れています。

「曲想が浮かぶままに書いたオリジナルが、どこにも書き直しがない。書く前に完成しているのだ。頭の中で曲がどのページもすべて写したように整っている。その音楽は見事なまでに完璧そのものだった。」と言って、「それは神の声による響きなのだ!!」とモーツァルトの音楽を讃えるのです。

この映画『アマデウス』では、プラハでのロケシーンや、オペラ『後宮からの誘拐』『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』『魔笛』のハイライト・シーンが挿入されるなど、見どころが多く、またモーツァルト役のトム・ハルスが素晴らしい演技をしています。観客は、まるで本当のモーツァルトを観ているような気がするというほど、モーツァルトの天真爛漫さ、下品で礼儀知らずで、放送禁止用語連発のところや、教育パパのお父さんから逃げ回るところなどなど、お笑い箇所も随所にあります。


 そして、全編に流れるモーツァルトの音楽は、美しく、やはり天から降りてきた音楽は違うなぁと思わずにはいられません。ここで私のお気に入りのシーンをお話します。

 皇帝ヨゼフ2世と謁見する場面で、モーツァルトが、宮廷歌劇場用にドイツ語のオペラ「後宮からの逃走」を書きたいと言いますが、それに宮廷歌劇場監督などは、「ドイツ語は歌には向いていない言語である」という反対します。当時はイタリア語での歌詞がほとんどでした。しかし、ヨゼフ2世はこうした古い風習を改革したいと考える若い皇帝だったので、ここで皇帝は、モーツァルトにドイツ語のオペラを許可します。その場面で、皇帝が「ドイツ的美徳とは何か?」と質問します。モーツァルトは即座に「それは愛です」と答えます。一言でこう表すモーツァルト。彼の音楽を表していますね。

 それから、オペラ「後宮からの逃走」について、皇帝が「ちょっと音符が多すぎる!」と言ったのに対して、モーツァルトが「必要な音符しか書いてありません」と答えます。この場面も最高ですよね。モーツァルトの曲の全ての音符には、無駄はなく全てが大事ってことを示しているところです。

 そして、映画のクライマックスは、モーツァルトの死の年、1791年ですが、この年に、有名なオペラ『魔笛』と最後の作品『レクイエム』を作曲します。しかし、そのレクイエムが完成されることなく、モーツァルトは亡くなり、たった36年という短い一生を閉じるのでした。映画でも、モーツァルトの遺体はウィーンの共同墓地にポイッと雑に埋葬されます。これは、史実に基づいているのですが、これは何とも言いがたい寂しいシーンです。

 

 ということで、この映画『アマデウス』は、アカデミー賞の作品賞、監督賞、主演男優賞、脚色賞、美術賞、衣裳デザイン賞、メイクアップ賞、音響賞の8部門を受賞しました。

 

 私も何度かオーケストラとともにモーツァルトの『フルート協奏曲ニ長調K314』を演奏しましたが、印象に深く残っているのは、女性指揮者の草分け的存在の久山恵子さんの指揮、アンサンブル多摩と演奏したときです。


それでは、また!


(2011年5月、第13回定期演奏会、府中の森芸術劇場ウィーンホール)