ビゼー『アルルの女』と戯曲 | 岩下智子「笛吹女の徒然日記」Tomoko Iwashita

岩下智子「笛吹女の徒然日記」Tomoko Iwashita

フルート奏者 岩下智子が綴る気ままな日記です。

こんにちは!

フルーティストの岩下智子です。

 

音楽と文学シリーズ3つ目は、名曲として親しまれているビゼーの『アルルの女』を取り上げたいと思います。

 


『アルルの女』といえば、作曲家ジョルジュ・ビゼー(1838-1875)が、19世紀後半のフランス印象派の小説家A.ドーデDaudet(1840-1897)の戯曲に音楽を付けたのは、よく知られているとおりです。ハープとフルートが織りなす美しいメロディの「メヌエット」(後半にオーケストレーションとして珍しいサクソフォーンで対旋律を奏でるところが斬新です。)と、そして、その後に続く「ファランドール」は、聴く人の心を高揚させる素晴らしい音楽ですね。

 

しかし、この戯曲のストーリーは、悲劇なのです!ドーデが南仏のアルルに近い村フォンヴィエイユに滞在中、そこで起こった事件をもとに短編「風車小屋だより」にまとめ、その後、ヴィードヴィル座からの依頼で戯曲(3幕5場)として書きました。

*1872年10月1日パリ、ヴォードヴィル座にて初演。

*1885年5月5日パリ、オデオン座にて再演。


さて、そのストーリーとは?

南仏の農村に暮らすフレディという青年が、都会の女(アルルの女)に一方的な恋をし、その恋に破れ、嫉妬に狂い、自殺するという物語です。そこに登場するのは、青年と、息子(青年)を愛する母親、青年を愛する可憐な娘ヴィヴェット、懐古的な愛を語る老人たちバルタザールです。

このドラマチックなストーリーとは裏腹に、可憐な「メヌエット」があるのが、どうしてもピンときませんよね?


実は、現在よく演奏される組曲は、ビゼーが亡くなったあと、友人ギローによって、まとめられたものであり、フルートの名曲「メヌエット」は、ギローがビゼーの歌劇『美しきパースの娘』から抜粋して起用したものなのでした。組曲は、この悲劇的な戯曲から独立したものだったという訳です。なるほど、これで納得できます。


今回は、『ビゼーのアルルの女「メヌエット」と戯曲』についてでした。


 これまでにご紹介しました「ライネッケと文学」、「ドビュッシーとギリシア神話」もよろしければ、ご覧ください。


◼︎ライネッケ 『水の精ウンディーヌ』と文学

https://ameblo.jp/love-rinchan/entry-10518506490.html

◼︎ドビュッシー『シランクス』とギリシャ神話

https://ameblo.jp/love-rinchan/entry-12461438603.html