甘えたい時は言うよ❤ | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

多少の不摂生も、ゆいの肌に支障はなかった。オーガニックが売りのコスメ。テストで仕上げたゆいの目は、まつ毛自体が長いので少し上げるだけで、ただでさえ大きい瞳がより大きく見える。これには何度もゆいにメイクしてきたたーちゃんも『素敵❤』を連発。

「恥ずかしいからやめてよ♪」

最後にもう少しだけマスカラをつけてもらい、ゆいは鏡を見た。自分の変身した姿を見たゆいは、真っ先に小百合に見せたいと自分のスマホを探した。

「たーちゃん、一枚撮ってもいい?」

「小百合ちゃん?いいわよ♪撮ってあげる」

 

ゆいがこの姿を小百合に見せたいと思っている頃、バスを降りた小百合は店に行く前にバス停の椅子に座り、もう一言ゆいにLINEを送って店に向かった。

今日は土曜日。それでもお昼は忙しかったようで、圭吾も横山さんも後半の仕込みに追われていた。

「おはよ~何かバタついてるね」

「おぅ小百合。おはよ。珍しく昼が入ったからな。昨日は遅くまでありがとな。帰りは大丈夫だったか?」

「うん、ちゃんと帰れたから。折りありがと。半分朝ご飯で食べた。電話くれたら急いだのに。すぐ入るから」

急いで着替えると今日もスマホを洗い場の棚に置き、圭吾のところへ行った。

今日の小百合の仕事は、半本分の大根おろし、もう半分でツマを作る。さすがにかつら剥きは出来ないので、秘密兵器の『ツマ太郎』を使う。

「ね?これってたけもっちゃんも使ってるの?」

「練習兼ねて和包丁で・・・」

「マジで?凄い!って私も練習したい」

「やめとけ。小百合は手が小さいから」

やってもないのに最初っからそんなこと!と言いたい気持ちで手のひらを見た小百合は納得。でも孝之だってそこまで大きくはないだろう。知らんけど。

 

ボチボチ営業時間。そろそろ看板の電気を付けに行こうと思ったところに孝之から電話が掛かった。月曜日は祭日なので火曜日の夕方から出られると言う。今日は小百合が来てることも分かっているので、小百合がいる今電話を掛けたと言った。

圭吾が話しているそばで聞いていたが、小百合は電話を代わる気がない。

バイトを上がったらLINEを送ればいい。

小さな声で『お父さんから聞いといて』と右手を何度も振った。

手短な電話を切った圭吾は小百合が孝之と何かあったのではと、余計なことに首を突っ込んだような表情で小百合を見ていた。無論、何もない。

とりあえず、今日でバイトは解放される。これでゆいといられる時間が増える。などとぬか喜び。韓国語の課題が終わらないうちは、ゆいとイチャつく時間もない。小百合は小百合で、早く終わらせるつもりで頑張るけど、もし我慢できなくてゆいにおねだりしたら、きっと両手を広げて『おいで❤』してくれるだろう。そう、ゆいがメイクをしてもらっている時に想像していた時と同じように。

「小百合、何て顔してんだ?店開けるから」

「は~い」

外の看板を出しに行った小百合は、圭吾にバレた表情を隠すように階段を降り看板に電気を付けた。

「この時間、ゆいはどこにいるのかな」

 

ゆいはまだ都内の化粧品会社にいた。今日の目的はゆいの肌質を見てメイクをすること。完璧すぎて今後の課題もないので、ゆいと先生はやっと解放される。

イユナ社長は二人に一席をと言ったが、今日の撮影で疲れが出たのか、先生はこの後まだ仕事が残ってると嘘を言い丁重にお断りをし会社を後にした。

車に乗った先生は腹の底から溜息を吐き、帰ろう!と言いスタジオへ帰った。

「食事、絶対高級中華だよ。でも今日は無理。車だし更年期で怠いし。こんな時は家でゆっくりしたいわ。それにゆいさんも小百合ちゃんを迎えに行きたいでしょ」

「お腹空きました。私も家でゆっくり食べたいです。お腹が鳴らなくて良かったです」

「それが一番!」