小百合がそばにいないなら、これを | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

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ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

今日は土曜日。いつもなら小百合と一緒に出勤するはずだったが、今日はゆい一人。

小百合は洗濯物を干しながらゆいが支度する姿をチラ見していた。

「ゆい、前にも聞いたっけ?次のCM撮影も佐伯さんが撮るの?」

「企画書見てないから分からない。どんなシチュエーションなのかも。気になるよね。今日は私の肌の調子を見て撮影ができるかどうか相談するだけだから」

小百合はタオルを掴んだまま、ゆいの話をじっと聞いていた。

「そっか。そうだよね。ちょっと先走っちゃったね。今日は社長も来るって言ってたけど、終わったらどこかで会食とかあるの?先生も行くって」

「考えてなかった」

「もし食事誘われたら行ってきて。私、適当に食べるから。会食は大事よ」

「分かった。でも行ったら帰り迎えに行けないかも」

「ちゃんと帰ります。心配しないでね。ゴメン!時間だ!私が話し掛けちゃったから」

小百合の話に、今度はゆいがリップを持ったまま小百合の話を聞いていた。

話し込んでる時間はない。小百合に促されゆいは急いでメイクを済ませ小百合が買ってくれたスーツに着替えた、。取引先のお偉いさんに会う時は必ずこのスーツを着ることにしている。このスーツを着ると、決まって話が良い方へ向くから。ジンクスなのか願掛けなのか、何かを決める時には縁起がいい。 

今日のピアスはシンプルにシルバーの小さなフープピアス。鏡の前で何度もスーツの裾を引っ張っては納得したのか『完璧♪』と独り言。

 

「小百合、行ってきます」

「ほいほい」

小百合はいそいそとゆいの後ろをついていき、玄関の前でお見送り。

「帰る頃連絡するから」

「うん、待ってる。気を付けて行ってきてね」

今日一日ゆいが頑張れるようなチューをあげて、ゆいは仕事へ行った。

一人になった小百合はここからが忙しい。ゆいからは家のことはしなくていいと言われたが、やっちゃえばゆいは何も言えない。ってことでシーツと枕カバー、ついでにパジャマも洗濯。その間に課題を始める。それならゆいも怒らないだろう。

洗濯機に全部突っ込みスイッチオン!さぁやるぞ!と言いながらテーブルに広げ始めた。

 

スタジオに着いたゆいも持ち場に着き、最終チェック。

「ゆいさん、おはよ。今日はここが片付いたらすぐに社長のところへ行くから」

片付いたらすぐにということは昼ご飯は食べられない。

「コンビニ行きたかったのに」

ゆいはあきのところへ行き、一言ゴメン!と謝っては酒臭いかにおいを嗅いでもらった。

「・・・多少は。言われればッて感じ。しょうがないね~。私のこれあげるから」

半分くらい入ったフリスクを手渡され、一粒口に入れた。

「わっ!辛い!。でも臭い消えそう。ありがと!明日買って返す。じゃ~現場行ってきます!」

あきは『明日は日曜ですけど?』と言いながら事務室から出ていくゆいを見届けた。

 

持ち場に戻ったゆいは、ふと思いつく。そして急いで小百合に電話を掛けた。

ゆいからの突然の電話に小百合はビックリ。やっぱり二日酔いで早退でもするのか、それとも今から来れないかとでも言うのか。

「ゆい!どした!調子悪いの?帰って来る?」

「もしもし小百合?そうじゃなくてさ。あのさ小百合が仕事で使ってるウェストバッグ、あれ貸して!」

「ん?あ~いいよ!使って使って!」

小百合の許可をもらい、Tシャツの上からカメアシ用のウェストバッグを腰に巻いた。

これがあるのとないのとでは大違い。何だかやる気が出てきたゆいは中身を確認しながら現場に戻った。

電話を切った小百合は、ゆいがウェストバッグを腰に巻く姿が想像つかない。

「え~?どんな感じなんだろう。でも使ってくれるんだ。なんか嬉しい♪」

見に行きたい気持ちいっぱいで韓国語の辞書を捲りながら、使ってくれることを喜んだ。