眠ったふりして小百合の独り言を聞いたゆいは、この目覚めの一言に最高の朝を迎えた喜びで二度寝。小百合に起こしてほしいので、もう少しだけ寝ることにした。
早起きの小百合は、まず洗濯機を回しながら風呂掃除。今はまだいいが、これから少しずつ水が冷たくなっていくので風呂掃除もやりたくない気持ちになる。そんなことをゆいは季節関係なくやってくれる。たまにしかしない小百合が文句を言うわけにはいかない。
「おわりぃ~っと。今日の朝ご飯はどうしようかな。飲み過ぎたゆいには何が良いかな」
きっと二日酔いだろうと思い、具材少なめの豚汁を作ろうと冷凍庫を開けた。
小百合が起こしてくれるのを待っていたゆいは、ただいま二度寝中。きっと小百合がいなかったらこの二度寝はヤバい。だから今、安心して時間を気にすることなく夢の中。
しかし二度寝の時間はあっという間。そろそろ癒しのささやきがゆいの耳をくすぐる。
「ゆい、朝だよ。起きよっか」
小百合の優しい声。と同時にゆいの体の上に何か重いものを感じた。目を開けると顔の真正面に小百合の顔。目を開けたゆいは一瞬ビックリするが、小百合の笑顔にゆいも笑顔になる。
「小百合~❤おはよ。ね?てことは朝からしてもいいの?」
「う~ん。ダメ。でも夜なら❤ってさ!起きて!二日酔いとかどう?頭とか痛くない?」
小百合はベッドから降りると、ニヤニヤしながらゆいが起きるのを待っていた。
「大丈夫。私、酒臭くなかった?」
「たくさん飲んだ割にはあまり臭わなかったよ」
小百合はチューをすると、やっぱ臭いと笑いまたチューをした。
「牛乳飲むか、救急箱にブレスケアがあるから。でも今日は先生に就くんじゃないの?みそ汁出来るから顔洗ってきて」
今日の朝ご飯は、昨日圭吾に作ってもらった折りの残り。そして具少なめの豚汁。ゆいは手を合わせると熱々の味噌汁をすすり、なんとも幸せそうな顔をする。
「小百合?昨日は何の貸し切りだったの?」
「不動産関係だって。今日は今んとこ予約はないから9時には上がれるかも」
「分かった。課題には手を付けたの?」
「今日から本格的にやろうと思って。ね?分かんないとこがあったらテヨンさんにLINEしてもいいかな?」
「小百合が韓国語取った時テヨンさん喜んでたし。分からないとこあったら聞いてって言ってくれたし。たまにならいいんじゃない?」
「自力で頑張るのが一番だけど、どうしてもって時に」
お金が要るからバイトには行かなきゃならない。行けばその分課題に充てる時間が減る。学生だからしょうがないけど、これだけ頑張れるのも、何に救われてるって、小百合にはゆいがいる。ゆいがいなかったら今頃どんな学生生活を送っていたんだろう。
何かを頑張る時は決まってゆいとの生活を思い出す。これが自分の生きる糧だから。
「ゆい、今日の晩ご飯何が良い?」
「小百合の負担にならない物がいい。課題に集中してほしいから」
「じゃ~今度こそ食べに行く?それかテイクアウト。そしたら私何もしなくていいから」
「決まり!夜迎えに行くまでに考えておく。小百合も食べたい物あったらLINEちょうだい。ごちそうさまでした。お茶碗ゴメン」
ゆいとの晩ご飯を考えるのも楽しみの一つ。一日の中で何か一つでも楽しみが出来たら何とか頑張れそうな気がする。
今日の小百合はバイトに行くまで家から出ない。せっかくだから部屋の掃除でもと思った時、歯磨きを済ませたゆいが一言。
「小百合、部屋の掃除とかしなくていいからね。天気がいいからってシーツとか洗わなくていいから。自分のことだけして。分かった?」
「なんで~」
「私の出番がなくなる。私にもさせろ。ってことで、課題頑張ってね」
「は~い」
頑張ってと言われたら頑張るしかない。そういうことだ。