心配し過ぎるが故に | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

夜遅くにバイトを上がった小百合は、飲みに行って帰って来るゆいを駅まで迎えに行った。こんな時間に迎えに行くことなど滅多にないこと。むしろ初めてかもしれない。いや、初めてのことだ。疲れてるしお腹も空いたし早く帰ってご飯が食べたい。それでもそれ以上にゆいを迎えに行けることにワクワクしていた小百合はこれが自分にしかできないことに小さな優越感に浸っていた。

そんなことはゆいに言う必要はなく、酔っぱらっていたゆいを無事家まで持ち帰り、やっとこれから晩ご飯。今食べたら絶対に太る!と言いたいくらいに豪勢。二人して覗き込み、明日に回せるものを容器に取り冷蔵庫へ。

小百合は即席のお吸い物を作り、手を合わせた。

お互い疲れすぎて食べることで精いっぱい。少々の無言の後、口を開いたのは小百合。

「ゆい、今日ね」

いつもならお互い今日の感想を言い合いながら食べるのに、ずっと無言のゆいに小百合は話し掛けてみたが、ゆいは聞いてくれるんだろうかと、チラ見しながら返事を待った。

「ん?今日がどうしたの?お店は忙しかった?」

「いや・・・そうでもないっていうか」

ゆいの口調はどことなくやっぱり疲れていた。飲み過ぎたせいなのか、急に現場に入ったから緊張での気疲れなのか。それとも飲んだ店で何か言われたのか。話し掛けたのは小百合だったのに黙ってしまう。

「今日・・・の撮影はどうだった?瞳さん、大丈夫なのかな?それよりもさ。ゆい」

小百合は、箸が進まないゆいを見て、酔いが残ってるよりもやっぱり疲れてるからなのかと、労をねぎらう。

「ゆいも今日はお疲れ様だったね。急遽だったから大変だったんじゃない?」

「えっ?」

「ゆい、疲れてる。飲みに行ったことは別にしても、普段帰ってきてもさ、時間がなくて横にもなれないし。ご飯、無理しなくていいよ。明日の朝食べたらいいから」

「ごめん。帰ったら小百合の話いっぱい聞きたいって思ったんだけど」

小百合の話も聞きたい、今日バーであったことも話したい。こんなことあんなこと、話したくて仕方がなかったのに、頭が言うこと聞かなくなってきた。

そう思ったら何だか泣けてきて、ゆいは涙いっぱい溜めては小百合を見て涙を落した。

ビックリした小百合は思わず立ち上がりゆいの隣に座ると、ゆいの背中をさすった。

「今日のこといっぱい話したいのに。小百合の今日も聞きたかった。小百合?明日は9時に上がれそう?」

「土曜日だし。大丈夫。ゆいは?」

「私は先生の撮影が終わったら先生と一緒にプルンパダの本社に行くの。でも小百合は迎えに行ける・・・思い出した。小百合に相談があるの」

食欲がないゆいは箸を置き、大学の創立記念日のこと話した。明日はゆい以外みんな早上がり。でもゆいだけは出来ないからその穴埋めを創立記念日に当てて休みたい。だけどこれはゆいの一存では決められないこと。小百合に相談して良かったら改めて打診しようと思ってることを元気がない声で話した。

もちろん、小百合はOK。行先は飛騨高山と決めてるから。でも。

「引っ越しのことはどうしようか。先にする?後にする?」

「う~ん」

頭の中ではいろいろ考えてても言葉が出ない。もう喋ることも億劫になって来た。

ただただ時間が過ぎていくだけ。見かねた小百合は、ゆいを強引にお風呂へ入れさせることにした。こんな時は早く寝るに限る。

「ゆい、もうお風呂入ろう。んで寝よう」

テーブルを片付けシンクで洗い物を始めた小百合に、ゆいは後ろから抱きしめてきた。小百合は水道を止めると振り返り手がベタベタのままゆいに寄り添う。

「ゆい?後で元気いっぱいあげるから。だからもう少し待ってて」

今日は小百合も疲れたが、ゆいのためを思い少しだけ我慢。悟られないように元気よく小皿と箸を洗った。