だからって簡単には言いたくない | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

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ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

ゆいが本当に疲れた時は壊れる。我慢していたことを悟られ小百合から労いの言葉をもらうと、何も言えない自分に涙が出てきた。いつもはそんなことないのに。

何とか話せたのは大学が臨時休校になった時のことだけ。ゆいはその日に休みをもらうつもりであることを話し、これ以上は疲れて口も回らないので小百合はゆいをお風呂に入れた。

 

「ゆい、明日はお弁当止める?食べるタイミングがなさそうだから」

「そうだね、うん。小百合は?あ~明日は土曜日だから休みかぁ」

「うん。だから明日は私が起こしてあげるからね。後、洗濯も風呂掃除もやっちゃうから」

「小百合?」

湯船の中で振り返った小百合に、ゆいはお礼のチューをした。小百合の気持ちのお返しにチューだけでは全然足りない。やっぱり目の前の小百合は嬉しそうにゆいを見つめチューの催促。そんな時のチューはなかなか止まらない。一瞬離れ目を開けるが再び目を閉じては唇を重ね浴室にその音だけが響いた。

「遅くなっちゃったね。出よっか」

さすがに今日はわがままが言えない。小百合は名残惜しそうに湯船から出た。

「ゆい、明日はたーちゃんに会うんでしょ?」

「そうだよ。何か言付けでもある?」

「特にない」

「じゃあ何で聞いたの?あのさあ、今日ママさんからね」

ゆいは歯磨きをしながら、新大久保の店で自分のパネルを見てそうなのかと聞かれたことを話した。隠す必要がないのでそうだと言った時、話の流れで『彼氏』のことも聞かれたと言った。

「え~?私ニートになってんの?でも写真見せないってさ、普通は怪しむよね。本当は彼氏なんていないんじゃね?みたいな。そのよっちゃんって人、美人だった?」

「美人と言われるとどうかと。でも可愛いって風でもない」

前回ゆいが行った時も感想を聞いたが、今日もそれなりに聞いた小百合は一度でいいから行ってみたいという。ゆいとしては構わないが小百合を自分の恋人だと紹介は出来ないと言った。小百合は悲しそうな顔をするが、ゆいは正直に話した。

「私はまだママさんに心は開けない。良い人だし悩みを話せばきっといいアドバイスがもらえると思う。当事者だからね。でも私たちは血は繋がってないけど姉妹の関係。それを踏まえての恋人だから理解してもらえるとはまだ思えない。だからもし一緒に行ったら私は小百合を妹だと紹介する。それでもいい?」

周りには他のお客さんもいる。ゆいとしては普通の客として店に行きたい。

「ゆいの気持ちは分かった。だったら一度だけ。一度だけ行ってその雰囲気だけ感じたい。だってゆいが行っても私分かんないから話を聞いてもさ~。

いいよ。妹って紹介して。もし勘づかれたらかわすから」

二人の関係、恥ずかしいことなんて少しもない。堂々としてていいはずだ。でも世間の目は好奇心でいっぱい。恋人だと言えば絶対に体の関係のことを聞かれるし想像されてしまう。男女の関係なら彼氏を紹介したってそんなこと考えもしないのに。

女同士だからといってそういう下世話なことを思われたり言われるのは勘弁してほしい。そんなこと言われたことはないが、バーにいたよっちゃんって人は、ゆいに対してそんな目で見ていたから。

ビアンバーにはそうでない人は来ない場所なんだと何となく察した。

小百合には勉強のために一度だけ連れて行こうと思う。

「分かった。小百合の課題が終わったら行こう」

小百合の本心は、出来ればそんな店には行ってほしくない。たとえゆいがそうでもそうでなくても。今回含め2回行ったがどちらも誘われてのこと。ゆいはどう思っているんだろうか。

そんなことを聞きたいがもう1時近い。疲れてるところにくだらないことを聞いても返事したくないだろう。小百合は諦めもう寝ることにした。