早くあなたに逢いたい | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

只今の時間、夜の10時20分。バイトが終わった小百合は今、ゆいを迎えに行くため駅に向かうバスに乗っている。

バスに乗ったことをゆいにLINEを入れ、駅に着くまでスマホを弄っていた。

ゆいがUPしたインスタに気付き、何だろうと開けてみる。

きっとゆいがそばにいたら、小百合の反応は思っていた通りのリアクション。

もちろん小百合も覚えていて、どんな言葉を送ったらいいのか、どんなスタンプにしたらいいのかずっと悩んでいたから。

最初の挨拶は気の利いた言葉にしたかったし、送るスタンプだって可愛いって言ってほしいと思ったから。結局は挨拶も普通でスタンプもどこにでもあるような可愛くもないウサギだった。

「でも何でこれを?あ~そういうことかぁ」

『覚えてる?小百合と始めた最初のLINE❤3年経つと消えちゃうんだって。だからスクショして載せてみた』

「3年?ギリギリじゃん。良かったぁ❤」

小百合はコメントを載せると、ゆいから返事が来た。

『もうすぐ着くよ。先に着くと思うから待ってるね』

小百合のバスもそろそろ駅が近くなってきた。ゆいのところへ早く行きたい小百合は駅はまだかと座席から身を乗り出し落ちつかない。こんな時に限ってバスのスピードは落ち、なかなか降車口に着かない。

やっとの思いでバスを降りると、小百合を迎えに来たゆいが歩いてきた。お互い見つけると猛ダッシュ。ぶつかる様に抱きしめ合い『逢えたぁ❤』と喜び合った。

「んっ!ゆい酒臭い。どんだけ飲んだの?」

「酎ハイを3杯なんだけどね、ちょっと濃かったの。でも酔ってないよ!」

多少時間が空けば酔いも醒めてくるはずで。でもゆいの自信満々な発言もあまり意味がない。だって言葉の最後に小さく『フフッ❤』と笑ったから。小百合が迎えに来て本当に良かった。

「ゆい、帰ろう。この時間だとバスはもうないよね。タクシーで帰ろう」

少し酔ってるゆいの手を握り、小百合はタクシー乗り場を探す。ゆいは繋がれてる手を何度もニギニギ❤しては小百合から繋いでくれたことを心の中で喜んでいた。

 

「ゆい、急ごう!」

乗り場にはタクシーが1台。これを逃すとしばらく来ないと思った小百合は今度はゆいの手を引っ張って走り、ゆいを先に乗せた。

小百合は行先を言うと暗がりの車内、ゆいの手をしっかりと握った。そして何を話すわけでもなくその手の感触を感じた。

いつもなら坂道の手前で降ろしてもらうがさすがに夜も遅いのでそのまま上がってもらいアパートのまで降ろしてもらった。タクシー代は小百合が出そうとした財布を押さえゆいが払った。

やっと帰った我が家。部屋の電気をつけるとゆいが真っ先に、駅まで来てくれてありがとうと言った。

しかしゆいから来てほしいとは一言も言ってない。迎えに行くと言ったのは小百合。小百合が迎えに行きたかったから。なのにゆいが礼を言うなんて。

「違うの!私が・・・私がゆいに早く逢いたかったから。でも、うん。

お腹空いたね。遅くなっちゃったけどご飯にしよっか。ゆい、弁当箱出して」

「私が洗う。私の分も折り頼んでくれたんだし」

「いいって。今日はゆいがお弁当作ってくれたんだから」

「いいって。そんな顔しないの。すんません。お願いします」

「はいっ♪」

 

もうほぼ深夜に近い時間。それでも一緒にお風呂に入りたいゆいは小百合に聞かずお風呂のスイッチを入れた。

『入れてくれたんだ❤』

もう遅いからシャワーでいい?なんて言われるのかと思っていた小百合は『お湯張りをします』の声にちょっと微笑む。

「小百合、入るよね?」

「うん!入る!一緒に入る!」

「いつも一緒に入ってるじゃん」

一緒に!・・・ここだけは強調したい。

小百合は『い~の!』と言いながら洗った弁当箱を伏せた。