間に合ってよかった | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

酔った勢いで自分のことを話してしまったらどうしようかと思っていたゆいだった。案の定、雰囲気で飲んだせいで口が思いっきり緩んでしまい、彼氏にかこつけて小百合のことを話した。これくらいなら大丈夫かと思いながら。清原さんの同棲相手のことも、清原さんの性格を考えれば自ずと分かること。LINEやメッセージを勝手に返信や削除したことには驚きだったが、自分を蔑ろにされたら誰だって一瞬でも理性を失うこともある。小百合だってゆいと佐伯さんのことで辛い思いをしたから。きっと彼女も冷静になって思いとどまったかもしれない。それでも我慢が出来なくてつい手を出した。一度見てしまったものはもう止めることはできない。誰も止める者がいなければ何度もやってしまうだろう。清原さんにも非があると思うが、そこまでゆいは言えなかった。

 

ゆい、興奮して喋り過ぎて気付けばもうお暇したい時間。

残った酎ハイを全部飲み、伏せてあったスマホをチェック。小百合からの連絡はない。

「私そろそろ帰ります。私、いくらになりますか?」

「2500円ちょうだいしようかしら」

ゆいは丁度を支払い、ママさんに挨拶して店を出ると店の外まで出て来てくれた清原さんに何度も謝った。

「なんかごめんなさい。ベラベラ喋り過ぎちゃって。純さんのこと責めたみたいな言い方になっちゃって。ホントごめんなさい」

「ううん。大丈夫。私、ママさんにしか話してなくて。でもゆいちゃんに話してちゃんと受け止めてくれてよかった。じゃ、気を付けて帰ってね」

「はい。純さんも飲み過ぎないでくださいね」

 

店を後にしたゆいは、駅の前で小百合にLINE。改札に入るとコンコースををなりふり構わず走り、来た電車に飛び乗る様に駆け込んだ。

『葉やま』ではやっとお客さんが全員帰ったところ。小百合はテーブルの皿を重ねては何度も洗い場を往復。その度にチェックしたスマホにやっとゆいから連絡が入った。

『今から電車に乗る。横浜駅西口で待ってる』

「マジで!よしっ!」

 

電車に乗ったゆいは座ると寝てしまうので、扉の前で立っていた。暗い景色を見ていると小百合から返事が入った。

『わかった。今片付けてる。10時には出られるから』

『夜、ゆいの分もお父さんに作ってもらったから』

「晩ご飯のことかな?凄いな。何で分かったのかな?」

「小百合、10時になったらあがっていいぞ」

10時きっかりに上がれば10時10分のバスに乗れる。これは最終の1本前。出来ればこれに乗りたい。小百合は大急ぎでテーブルを拭いた。

ゆいが乗った電車は新宿から横浜まで大体40分ほど。途中の駅で席は空いたがまだ酔いが醒めないので今も立っては窓の外を見ていた。

時々見るLINEやインスタ。読んだり見たりするのは全部小百合だ。

小百合と始めたLINE。一番最初のやり取りを見返したいがもう3年も前のこと、どれだけ戻しても最初まで戻れない。まだ駅に着かないので、少し調べてみることにした。そして方法を見つけると、いともあっさりと見つかる。

「これだ・・・あ~そうだった」

小百合から来たのは定番の『よろしくお願いします』とウサギのペコリ。

仲良くなるまで交換しなかったLINE。ゆいはギリギリの期間で残っていた最初の画面をスクショし、これをインスタにUPした。

 

「お父さん!上がるね。晩ご飯ありがと!横山さんもお疲れでした!」

「今日はありがとな。気を付けて帰れよ」

「小百合さんもお疲れ様!」

汗やら空気中の油で顔がベタベタ。そして焼き物の煙で髪が臭い。ホントはこんなんでゆいに逢うのは嫌。でも今はそんなのどうでもいい。ゆいに早く逢いたい小百合は、全速力で走りバス停に到着。もう行ってしまったかと遠くを見ていると小百合が乗りたいバスが見えてきた。