らしくない嫉妬 | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

今日ゆいは由美のマンションで泊まらせてもらうつもりでお泊りセットを持参。一応下着の替えも持ってきたが泊りと言っても早朝に帰るのでシャワーは遠慮し、洗顔と歯磨きだけをさせてもらった。

その間由美は、ゆいのために帰りの地下鉄の時刻表を調べていた。

 

「さっぱりした、ありがとね」

「うん、これ書いといた。帰りの時刻表と乗り換えの路線。始発なら一旦帰ってもゆっくりできると思うから」

「わぁ~♪調べてくれたの?ありがとぉ!そういえば最近映ちゃんと会ってる?」

「昨日、仕事終わりにちょっと会ってきた。映ちゃんにもお裾分け持ってってさ」

会ったには会ったが話した内容が深刻過ぎてゆいに話すことが出来なかった。ゆいには少しはぐらかすように仕事など世間話程度のことだけを伝えた。

ゆいは由美の『ちょっと会ってきた』が引っかかったが深くは追及しない。何かあれば映の方から話してくれるだろう、それまで待てばいいのだから。

 

「そっか。映ちゃんも朝ドラ女優なんだね、凄いなぁ。由美ちゃんも念願だったバラエティーの司会にもなれたし。何だか出会った時が懐かしい」

「ゆいちゃんだって。コスメのCMやるとは思ってなかったよ」

「それは私が一番ビックリ」

業界の裏方がタレントと同じことをするなどあり得ないことで、たーちゃんの伝手がなければ、こんなCMなどお呼びなんて掛からない。ただでさえタレントは一社でも多くCMに起用されたい。なのにタレントでもない自分が次のCMだなんて。そんなことが頭をよぎり、由美には次回の話が出来なかった。

「何か飲む?私、最近ハマってるのがあるの」

また何かどこか外国の超お高い紅茶でも出すのかと思ったら、出てきたのはミロ。子供が飲むココアだった。

ゆいも子供頃、何度か飲んだことがある。確かに美味しかったが大人になってからは遠ざかり、売り場でも見向きもしない物。

久しぶりのココアに、思わず由美の隣で淹れてくれるのを見ていた。

「ありがと♪でも何で?」

「最近、子役の女の子と一緒になってさ。その子がミロがすっごい好きなんだけど一日一杯だけってママに言われてるって。それで思い出して買いに行ったんだ」

小百合が出してくれるココアは森永。飲み慣れてる方が美味しいが、こっちも美味しい。

熱々をすすりながらもう少しだけ、ゆいは由美の話を聞いた。ほとんどが匠とのこと。

報道以来、今もカメラには気を付けているらしい。マネージャー曰く、今度は結婚のスクープを狙ってると言われた。実はもう両家了承済みで後は仕事のタイミングだと教えてくれた。

っということは匠はプロポーズして由美はOKしたんだろう。

「でも、私も・・・まだ解禁になってない映画もドラマも入ってるし、その宣伝材料になるのだけは嫌なの。それは匠も同意見でさ。だけどあんまり先延ばしになると結婚までの気持ちが冷めないかなって」

「匠さんがってこと?でも解禁になってから籍入れましたっていう方があざとくない?だったら今のうちだと思うんだけど」

 

もう反対する親族も妬むファンもいないのなら結婚すればいいのにと、自分たちは簡単にはいかないことなのに、羨ましさ半分ゆいはそう思ってしまう。

由美の話はゆいに対しての当てつけじゃないことは重々分かってる。ゆいにだけにしか話せないことだから。でもどうやっても由美と同じ立場で考えられない。今の返事が無責任な言い方だって言った後に気付くが、由美の表情はそうは受け取ってないようだ。

「うん、ちょっと相談してみる」

出来れば私が言ってたと言わないでほしい。

 

芸能人なりの事情はゆいには分からない。乗り越えなきゃいけない壁などないのに。友達なのに結婚できる由美を妬んでしまう。

「ここでいいから少し横になってもいい?」