淋しい夜と恋バナ | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

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ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

今日のゆいは都内で行われた親睦会の解散後、由美のマンションにお泊り。

タイミングがいいのか悪いのか、小百合が一人でテスト勉強に集中できると思い気兼ねなくお泊りさせてもらうが、本当は少し後悔する。

小百合は明日からしばらく『葉やま』でのバイトが続くので夜に二人でゆっくりできる時間が無くなるからだ。日曜日があるでしょ?と、きっと誰もが言うだろう。言い換えればゆっくりできる日は日曜しかない。

一週間、二週間ならいい。でもこれがいつまでと決まっていないから。仕方のないことだとは分かっている。小百合にとって『葉やま』は特別。父親の店を手伝うのは当然の話。そう、本当にしょうがないのだ。

少し酔ってきたゆい、そのことを言いそうになるが二人だけのこと、いくら酔っているとはいえ、軽々しく言うもんじゃない。

ゆいは小さく深呼吸をし、ある選考に参加していることを話した。

そして日曜日に小百合を連れて写真を撮ってきたことを掻い摘んで話した。

「じゃ、その大物人物も知らなければ、誰が参加してるのかも分からないの?」

「うん。永田編集長は知ってるみたい。公平を期すためにって教えてくれなかったの。でも、それを抜きにしても楽しかった。小百合をメインにさ、外で堂々と小百合を撮ることが出来たんだから。私には最高の時間だったんだ」

「だったら尚のこと選考が通って欲しいね。ゆいちゃんの写真は素敵だもん。紗良さんのあの表紙もすっごく良かったし」

「ありがと♪」

 

ゆいの枕を抱きしめ寝ていた小百合は、ゆいがいないので時折目が明いてしまう。その度にゆいからのLINEを気にするが来るはずもなく、待ち焦がれるばかり。どこにいるのか分かっているので心配はないが、何だか淋しい。

いったいいつまでそんな子供みたいなことを言ってるんだろうと、布団をすっぽりとかぶり再び眠気が襲うまでじっと目を閉じた。

「・・・トイレ」

小百合は便座に座りしばらくボーっとしながら考える。

今回部屋を探す条件として個々の部屋を持つこと。一人になる時間が必要だと。今日は今日でゆいは出掛けている。これはゆいだけの時間だ。

行かないで!と言ったことはないが、いなきゃいないで寂しい。でもいくら好き合っていても四六時中ベッタリはよくない。それこそ、今この時間は小百合だけの時間だ。一人になってすることはいくらでもある。

そう、テスト勉強だ。

「寝よう。今さら始めても頭に入らん」

再びベッドに入る前に明日の弁当の仕度をもう一度確認。朝ご飯までにゆいが帰って来るか分からないが、食べられるように一応準備だけは済ませておいた。もし食べなくても晩ご飯に回せばいい。水を少し飲みベッドに入ると、もう一度ゆいの枕を抱きしめ、今度こそ寝た。

 

今も話をしているゆいは、さすがに少々眠くなりあくびが出てしまう。

「ゆいちゃん、卓人の印象はどう?」

「う~ん。爽やか。見た目と違って明るい人なんだね。話しててけっこう楽しかったよ。あっ!誤解しないでよ。そんな気は全くないんだからね」

「まだ何も言ってないのに。私の周りの女優さんたち、もう仕事にならないくらいに舞い上がってるよ」

「由美ちゃんも?」

「まさか。でも匠に対して一途すぎるのもどうかと思うからさ、多少思うことくらいはいいかなと。ゆいちゃんだってそうでしょ?撮影してて、おっ❤♪って思うことくらい」

私は違う!そんなよこしまな気持ちなんて!とは言えなかった。身に覚えがあるから。

「でも本気にならないんだし。あれから匠さんとは?」

交際が世間にバレても匠のファンを思うと堂々とデートは出来ない。ただ『匂わせ』を一切しなかったので風当たりは悪くないと言った。

交際が順調で安心したゆいは洗面所を借りて洗顔と歯磨きをさせてもらった。