大したことなのか、じゃないのか | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

親睦会のことをいろんな意味で気にしている小百合に終わったことを伝えたが、言葉と気持ちの行き違いでお互い少し気まずくなる。

そばにいなくてもそんな気持ちになりたくない小百合はすぐにLINEで謝った。そしてゆいの返事も小百合と同じだったことで少しは気持ちも軽くなる。

これで明日は笑顔で帰って来たゆいのお出迎えが出来る。小百合は寝る前、ゆいのパジャマを着てもう一度住宅情報誌をチェックしてはちょっとした将来を想像する。最後はゆいの枕を抱きしめ、好きなゆいの匂いを感じながら眠りについた。

 

地下鉄を降りたゆいは着いたことを由美に電話する。手ぶらじゃなんだからとコンビニで何か買っていくと言ったが、例によって食べてほしいものがあるからと断られた。だったら酎ハイをと、手土産のつもりで数本買い、マンションへ寄った。

部屋へ上がると、先に今日は泊まることを伝えた。

「いいの?」

「うん。始発で帰るから。由美ちゃん明日は休みなの?」

「明日は午後からなの」

酎ハイを渡し奥へ入ると、テーブルにはやっぱり見たこともないようなオードブルっぽい物が食べ切れないほどに置いてあった。

今日はこれを食べてほしくて呼んだのではなく、由美のレギュラー番組のことについて話がしたかったと言う。

「小百合ちゃん、今日はどうしてるの?」

「明日テストがあるみたいで、今日はバイト休んで多分勉強してるんじゃないかな」

今の小百合、勉強は捨てたのでゆいの枕をギュっと抱きしめ大きな寝息で熟睡中。

勉強中だと思ってるゆいは、小百合が明日からしばらく店のバイトに入ることを話した。ゆいにとっては小百合の身体が一番心配。でも小百合が買って出たのであまり強くは言えないと、ちょっぴり諦めな気持ちで話した。

「それはそうと、番組がどうしたの?」

今年の1月から始まった由美のレギュラー番組。メイン司会は『高瀬雄二』というタレントで、由美はそのアシスタント。その高瀬が突然降板すると言った。

「それでね、もう新に立てないで私にメイン司会になってもらうって。バラエティーのメイン司会は私の夢だったから嬉しいけど、それが理由ってどうなの?」

「だって番組のこと一番に分かってるんだから自然な流れじゃないの?きっかけはよろしくないけど、ここは素直に頑張ります!でいいんじゃない?でも降板の理由って何なの?」

肝心なその理由は知らされておらず、次週放送分から新体制になり明日収録だと言った。

「急だね。ヤバいことでもしたんじゃない?それか具合が悪いのか」

 

さて、そんな話をしながらゆいが口にしたのは『柿ミルフィーユ』

超高級市田柿の干し柿をクリームチーズでサンドした最高級おつまみ。

「美味しい!どうしたの?」

「実家に帰ったらあったの。持ってきちゃった。それでさ小百合ちゃんたちにも食べてほしくて、ちょっと袋に入れたから荷物になるけど持ってってくれる?」

「あらぁ~♪」

ゆいは『ありがとうございます』と手を合わせ今度は違う小袋の封を開けた。

「ゆいちゃん。引っ越し先のことだけど。変に気を遣わせちゃったね。ゴメン」

「いいのいいの。でもいい部屋じゃん。東隣が空いてたみたいなんだけど、まだ探してる。どうしても個々の部屋は要るからさ。家賃も上がるけどしょうがないって思ってる」

これから長く共に暮らしていくのだから、一人になる部屋は絶対に必要。息が詰まるような生活はしたくない。ここへ帰ってきたいと思えるような暮らしがしたい。ゆいはそう話すと由美はずっと頷いていた。

「喧嘩になってもね・・・でしょ?最近はどう?仲良くしてる?」

「うん。少しだけ気持ちが上手く伝わらない時があるけどね。私の何気ない我を通しちゃうのがいけないっていうか」

これ以上は話せないと一呼吸置いた。