ロストレイル開発ブログ -6ページ目

アリオの冒険:1

 おれがどうやってロストレイルに乗ったのかって?
 べつに……、みんなと一緒さ。
 聞きたい?
 へんなやつだなあ。そんなに面白い話じゃないぜ。
 あれは確か――おれがまだ十六の、夏のことだ…………



「こら、飛田! 飛田有生(ありお)!」
「てっ」
 ごつん、と小突かれて、おれは目覚めた。
「あ――」
 担任の不機嫌な顔が、おれを見下ろしていた。
「す、すみません」
「堂々と寝過ぎだろ」
「いや、そういうわけじゃ……」
 くすくすと、押し殺した笑い声。おれは授業中に爆睡しちまっていたらしい。昨日は遅くまで起きてたからなァ……。
「しゃっきりしろよ。……ええとどこまでやった? 34ページだな。この場合の関係詞は……」
「え!?」
 おれが頓狂な声をあげたので、教卓へ戻ろうとしていた担任は足を止め、おれを振り返った。その頭上に……ぼんやりと浮かんでいる『数字』を、おれは唖然として見つめる。
「なんだ?」
「あの……、その頭の上の」
「はァ?」
 担任はおれが指す頭上の空間を見上げた。
「あ、いや……。なんでも――ないです」
「なんだ、夢でも見たのか。授業中にねぼけるのはよしてくれ」
 今度ははっきりと、教室のあちこちから笑い声があがった。
(――!)
 おれは驚く。
 担任だけじゃない。教室にいる誰の頭の上にも、その『数字』が浮かんでいる!
 なんだこれ。いったい何のどっきりだよ。おれが居眠りしている間に、みんなでおれを驚かすネタを仕込んだっていうのか?
 おれはごしごしと眼をこすった。
 次に目を開けた時……、もうそれは誰の頭上からも消えていた。
(なんだったんだ……)
 担任が言うように寝ぼけたのだろうか。
 でもたしかに見たのだ。
 ぼんやりと光る『数字』が――、いや待てよ、あれはアラビア数字じゃない、見たこともない、ヘンな記号みたいなものだった。でもおれは、確かに『数字』だって……『1』と書いてあるのがわかった!
 おれはすっかり混乱してしまった。しかし、それはほんのささいな始まりに過ぎなかったのだ。

 その日の晩も、祖父母が寝静まると、おれは物干し台へ出る。
 天体望遠鏡と、ペットボトルの飲み物と、携帯音楽プレーヤーを持って。
 おれが今暮らしているのは本当にド田舎だ。
 どうにかインターネットで、本やCDやゲームを買えるから耐えられるが、楽しいこととは無縁の世界だ。たぶん親父たちもそうだったんだろう。東京で住んでいた頃は、年に1回、この「じいちゃん家」に来るのもたまの旅行で楽しかったけれど……ここにずっと住むなんてぞっとする。
 あたりは田んぼしかなくて、この時間はカエルの大合唱。
 そして真っ暗なんだ。
 そのかわり……、星はよく見える。これだけが、ここで住むことになってよかった唯一のことだ。
 半年前に、事故で両親が亡くなった。
 おれも高校生だから、バイトでもなんでもして独り暮らしはできるし、なんなら高校はヤメたって構わない、と言ったのだが、そう世の中は簡単なものでもないようだ。いろいろあっておれはこのド田舎で暮らすことになった。こうなると希望は、どうにか東京の大学に受かって今度こそ独り暮らしを始められることなのだが……、それなら勉強すればいいものを、こうして夜な夜な星ばかりみているのだから、われながら困ったものだ。
 星を見るのが、おれは好きだ。
 この望遠鏡は――いつかの誕生日に両親が買ってくれたもの。天文学者にでもなるか、って親父は笑ってたけど……残念ながら学校の勉強はからっきしなおれは、その実、星のことだってそう詳しいわけじゃないんだ。ただ好きだっていうだけで。
 あれは何という星だっけ。
 ずいぶん明るい……一等星かな。この季節なら、ええと……。
 そのときだった。
 望遠鏡の視界の中を、その光の奔流が横切ったのは。
「えっ!?」
 ごう――、と。
 夜空を、それが翔ける。
 満天の星空を背景に、夜を切り裂く銀色の……あれは線路だ。その上を、一台の列車が、猛スピードで走るのを、おれは見た。
 車輪と線路が接するところに火花のような、光の粒が弾け、それが後ろへ吹き流されて、不思議な光の軌跡を描いている。
 それはあっというまに、走り去ってしまい、そして過ぎてしまえば、いつのまにか線路も消えている。
 今度は、夢なんかじゃない。断じて、ない。
 一分後。
 おれは自転車に飛び乗って、夜の中へ走り出していた。
 もちろん、今見た列車が行ったほうへ、あれを追い掛けるためだ。

(つづく)

質問箱:その2~人間外の種族もOK?

Q&Aカテゴリの記事は、ご質問にお答えするコーナーです。

Q:「人間」以外のキャラクター作成はOKなのでしょうか?

A:
OKです。

キャラクタータイプ「ツーリスト」のPCさんは、この世界とはまったく異なる摂理の世界からやってきた人々もいます。中には姿形が大きく異なっているものもいるでしょう。

・輝くオーラをまとい、3対の翼をもった天使のような美青年
・剛毛に覆われた人間の身体に狼の頭部をそなえた獣人
・普段は人間の姿をしているが正体はドラゴン(ドラゴンにもなれる)
・人語を話す猫(猫獣人じゃなくて猫です)
・人型をしているがロボット


などといったキャラクターも可能です。

ただ、プレイの都合上、「人間並み以上の知性のある存在」ではあったほうがよいと思います。ただの動物などだと、ちょっとプレイングがやりづらいですよね?

あと、ひとつ気をつけていただきたい点として、「行く先の世界での扱われ方」があります。たとえば、この世界――壱番世界も冒険の舞台となりますが、繁華街の通りに、リザードマンが歩いていると、みんなびっくりしてしまいますよね。もっとも、これは人間外種族が不利という意味ではなく、逆に、「獣人ばかりが住む異世界」では、「普通の人間の姿」が異形の存在とされてしまうでしょう。ここは、どんなムービースターもあたりまえだった銀幕の世界とはちょっと違う点として覚えておいてほしいところです。ロストレイルの旅客は、どこへ行ってもつねに異邦人なのです。

ただし、ロストレイルの旅客がもつ魔法的な加護のひとつとして「旅人の外套」効果というものがあり、「積極的に相手に干渉せず、ごく普通の行動をしている限り、その世界の住人の注意を引かない」というルールがあります。ですので、街を歩くくらいは、外見が問題になることはないのですが、その世界の住人と深いコミュニケーションをとる場合は、外見の違いによって結果が変わってくるかもしれませんね。

また、「異世界に過剰に影響を与えてはいけない」という「旅人の約束」にもとづき、上記でいえばドラゴン変身などはシナリオ中では行えない場合もあります。

旅立ちは突然

今回は『螺旋特急ロストレイル』のPC(プレイヤーキャラクター)についてお話しますね。

PCさんはすべて、<ロストナンバー>と呼ばれる存在になります。ロストレイルの世界は、無数の異世界が階層状に存在していることはすでにお話したとおりですが、この世界群ひとつひとつには“番号”がついているんですね。起点となるある世界を0として、そこから「上方」へは+1、+2、+3……、「下方」へは-1、-2、-3……、と「階層数」が定められています。そしておのおのの世界に住む生命は、その世界の数字を、自分の「帰属数」としてもっています。

PCさんはなにかの理由で<真理>に覚醒するのですが、実は、覚醒すると、その瞬間、自分自身の帰属数を失ってしまいます。ゆえに、真理の覚醒者を「ロストナンバー」と呼ぶのです。

『螺旋特急ロストレイル』のPCはすべてロストナンバーですが、その中で2種類のキャラクタータイプに分かれています。キャラクターメイキングはキャラクタータイプを選択するところから始まります。

●ツーリスト
ツーリストは、無数の異世界群のどこかからやってきた旅人です。かれらは覚醒時に起きる<ディアスポラ現象>という事故によって、ロストナンバーとなったあと別世界に転移し、その結果、自分自身の出身世界を見失ってしまいました。かれらは自分のもといた世界を探し出すため、あるいは、他の第二の故郷を求めて、列車に乗ります。

旅と旅の間は、すべての世界群の基点とされる「0世界(ゼロせかい)」に建造された都市<ターミナル>に滞在します。螺旋特急ロストレイルの発着駅でもある<ターミナル>には、さまざまな世界からの旅人たちがごったがえし、不可思議な異文化の混じり合った独特の空気を形成しています。

ツーリストの出身世界は、プレイヤーのみなさんが自由に考えることができますので、ツーリストのキャラクターについては、外見や能力なども自由度高くデザインすることができます。ただしロストレイルの旅客となった際の契約により、他の世界群に影響を与えるほどの強力なパワーなどは制限されます。

●コンダクター
コンダクターは特殊なロストナンバーで、「+1階層」の世界である「壱番世界」の出身者です。「壱番世界」とは2009年の地球があるこの世界のことです。壱番世界は「プラットホーム化」と呼ばれる、「世界が活力を失った状態」に陥っており、滅びの兆候を見せています。そのかわり、壱番世界のロストナンバーは<ディアスポラ現象>に見舞われなくなっているため、壱番世界のロストナンバーは自分の出身世界を見失いません。

ツーリストが自分の世界を見失って旅を続けているのに対し、コンダクターは、壱番世界と、異世界群を自由に行き来できる存在です。ですが、壱番世界は自分の世界そのものが滅びの危機にひんしているため、ツーリストの助けを借りてそれを食い止める方法を求め、旅に出ます。世界群を旅する列車ロストレイルを開発したのも壱番世界人ですので、かれらを「冒険旅行を導くもの」=コンダクターと呼ぶのです。

コンダクターは、つまりは「普通の人間」ですが、ロストレイルの旅客となることで、自分の意志の力を冒険旅行に必要な力に変えることができるようになります。そのため、戦闘においても、ツーリストとコンダクターは互角の能力を持ちます。ふだんは平凡な日常生活を送り、実は夜ごとにロストレイルに乗って異世界への冒険に赴く――、そんなキャラクター設定が可能になります。

 * * *

以上がPCメイクに関する概略です。
本当はもっといろいろな要素が関係してきます。ロストナンバーの<消失の運命>のこと、ロストナンバーの武器<トラベルギア>、コンダクターの旅のおとも<セクタン>、旅を助ける<ロストメモリー>たちのこと……。

それらは、次回以降、すこしづつ紹介していきます。
こんなふうに、ただ解説を並べるだけではちょっと退屈かな?という気もしてきましたので、次からはすこし書き方も工夫したいと思いますね。

ではまた次回。次の正規更新は6月29日の予定です。(なにかネタがあれば、呟きかQ&Aも更新したいと思います。)

PBWをもっと楽しむ方法:その2

(これは前の記事つづきです。その1から読んで下さい)

ロストレイルの開始を、銀幕終了から時間をおいてからにするのは、製作が間に合わないという事情ももちろんありますが、先述のような考え方も影響しています。どうぞ、PLのみなさんは、この間に、PBWから離れて、映画を見たり、本を読んだり、旅行に行ったり、お友達と会ったりして下さい。

そしてそれは、次に、螺旋特急の車上でお会いしたとき、あなたのキャラクターをより魅力的にしてくれ、あなたのPLスキルを向上させてくれているでしょう。「PLさんの経験値」が豊かなものであるほど、創り上げるキャラクターの厚み・深みが増し、プレイングの引き出しが増えるのは当然ですよね。

PBWをプレイしていて、ゲームにあまり時間を割かなかったり、ある一時期ゲームから離れていることを、「マジメにプレイしていない」「一生懸命じゃない」なんて思うのは、だからもうやめにして下さい。あなたの時間を何に使おうがあなたの自由です。そしてゲームなんですから、自分が好きな時に、自分が楽しいと思うだけやれば、それで何の問題もないじゃないですか。そしてもちろん、飽きてきたな、とか、つまらないな、と思ったらヤメればいいんです。誰に気兼ねなんかする必要もありません。そして間が空いても、一度ヤメてしまっても、またやりたくなったら、いつでも戻ってくればいいじゃありませんか。

もともと『銀幕★輪舞曲』を作ったとき、DRの念頭には、「あまり時間を使わずに遊べるゲームにしたい」という思いがありました。

シナリオごとに相談掲示板を付けなかったのも、公式にはチャットがないのも、レベル上げにあたる要素がないのも、交流が必須の形式になっていないのも、そのためです。(※実験的に相談必須にしたり交流を前提としたシナリオやイベントはありましたがそれはまた別の理由で行っています)

『螺旋特急ロストレイル』では、「やりたいときだけ、ちょっと参加できる」ような気軽さを、もっとうまくシステムやルールに落とし込めないか、目下、あれこれ試行錯誤中です。なかなか難しくて、結果としてベストなものを最初からご用意することはできないかもしれません。でもがんばりたいと思います。なにか、「これは」というアイデアをお持ちの方は、アドバイスをいただけると嬉しく思います。

――以上、
あたりまえと言えばあたりまえのことを、長々と書き散らかしてしまいました。
もしかすると、運営者としては言ってはいけないようなことを言ってしまったかもしれません。けれども、偽らざる心境を書いたつもりです。なにか過ぎた言葉があればお許し下さい。

『銀幕★輪舞曲』の完全な終了まであとわずか――、上映終了後は、席を立ち、映画館を出てから、パンフレットを見返したり、お友達と感想をおしゃべりしたりして、そしてお家に帰ってまた別の趣味を楽しんだり、ゆっくり休んだりして、次の日からの毎日を元気をお過ごし下さい。そうした時間の中に、いつか観た映画の余韻が、すこしでも残り、そのことがみなさんの日々に彩りを添えるものであったなら素敵なことです。

そしてまた、その時が来て、お気持ちが向かれるのなら、お会いしましょう。

列車の発車時刻までは、まだ十分に時間があります。

PBWをもっと楽しむ方法:その1

前触れなく更新してみます、こんにちは。DRの中田です。

この「DRの呟き」のカテゴリは、その名のとおり、DRの私的な雑感が綴られるものです。なんの情報性もないのですが、ロストレイルの企画の背景にある、考え方のようなものを知ってもらうことはできるかなーと思っております。

お目汚しなこともあるかもしれませんが、ご容赦下さい。

 * * *

それでさっそくなんですが――

DRはその実PBWにそんなに経験があるわけではないのですが、それでもある程度長年かかわる中で、ひとつ発見したことがあります。

それは「PBWをより快適に楽しむ方法」なのですが……、はっきり言いますが、この方法、大変、効果てきめんなんです。……だんだんあやしい通信販売(笑)みたいになってきましたが、騙されたと思って大勢の方に試してもらいたい。

「PBWをより快適に楽しむ」ためにはどうすればよいか!?

それは……



PBWばかりやらないこと」です。



PLのみなさんがゲームを楽しんで下さるのは、運営者としてとても嬉しいことです。けれど、ごくごくあたりまえのことですが、みなさんの時間はPBWのためだけにあるわけではありません。仕事や家事、学業の時間を抜いた余暇に限ったところで、それを全部PBWにつぎこむことは――あえてこういう言い方をさせていただきますが、間違っている、と中田は思います。

PBWはとても楽しいゲームです。自分だけのキャラクターをつくって、そのキャラクターになりきって異世界でできた友人と交流したり、自分のキャラクターが登場するノベルやイラストを楽しんだりするのは、他では味わえない喜びがあると思います。

けれど、PBWはある種の「ワールドシュミレーター」で、そこに「別の人生」のようなものを再現する遊びである側面があります。だから、PBWの中には、「この世界、この人生に存在する喜びや楽しみ」とまったく同様に、「この世界、この人生に存在する悲しみや苦しみ」もまた存在してしまいます。

また、PCさんひとりひとりの背後には、「別の人間である他のプレイヤーさん」がひとりひとり存在します。それゆえに、「現実の人間関係にもよくある」ような、ちょっとした行き違いや、誤解、対立のようなものも、あたりまえに起こり得ます。

そんなとき、あなたの余暇時間がすべてPBWに占められていることは、あなたの視野を非常に狭いものにし、考え方を硬直化させてしまいます。ゲーム世界のちょっとした出来事に一喜一憂し、それによって現実の生活までが影響を受けたり、ゲーム内の人間関係に悩んで、自分の感情をコントロールできなくなったり、過剰に誰かに批判的になったり過剰に自分が傷ついたりします。

それはとても残念なことですよね。
思いだして下さい。PBWはゲームなんです。ゲームって、楽しむためにやるものですよね?

ゲームなんかに、真剣になってはいけないのです。
真剣に遊んでいただくのは構いません。むしろ歓迎です。
でもあなたの人生はあなたのものであり、それは「ネット上のゲームとはなんの関係もない」ことを忘れないようにしてほしいなと思います。そんなのあたりまえだと思われるかもしれませんが、案外、PBWにのめりこんでいると、そこを見失うことはよくあるのです。そしてPBWとはもともとそういう錯覚を起こしやすいメディアです。だからこそ、あえて意識的に、距離をとることが有効なのだ――、これが、DRのたどりついた結論です。

※念のため申し添えておきますが、以上は、『銀幕★輪舞曲』のPLさんがゲームに注いで下さった情熱を否定するものではありません。その情熱がとても嬉しかったので、それが逆に、みなさん自身を損なうことのないようにしてほしい、と願っているのです。

その2につづく