1時間10分ほど電車に揺られ、こゆみちゃん宅へ。
こゆみちゃんは今年の1月、10歳年下のアメリカ人ハーフの男性と結婚した。
彼はアメリカ人にしては、物静かな男性で、勝気のこゆみちゃんにはとても合っている気がした。

こゆみちゃんが住むマンションは駅から10分、会社へも10分
といううらやましい住環境。
マンションも大型でスタイルもよく施設がととのっている、分譲型マンションだった。
そこを賃貸で借りているという。
だから、家賃も当然高い。

夫婦によって、いろんな形があるなあ、と人の家庭を見るとよく思う。
例えば、お金。
お財布は別々で、家賃も半分、食費も半分、光熱費も半分、
みたいにキチンと分けている夫婦。
あるいは、奥さんだけが財布を握っている昔型の夫婦。
また、しっかりものの旦那さんが財布を握っている夫婦。
うちみたいに、あなたのお金は、私のお金ーみたいにどんぶり勘定の夫婦。

でも、その辺の線引きって、結果的にいろんな所に影響を及ぼす大切なことだと思う。
夫婦のあり方にも関わって来るから。
いい加減でもまずいけど、あまりきちんと決めすぎるのも、危ない気がする。
時がたつに連れて、夫婦の関係も変わってくるから。
最初の決め事が、いつまでもその関係に合うものでいられるかどうかわからない。

やっぱり、大切なのは決め事よりも、決め事を変えられる愛情のような気がする。

今回で、3度目の庭の模様替え。
1回目は砂利と花壇。
2回目はイチゴのために、砂利を芝生に変え、花壇も高く設置した。
ところが、日当たりがあまり良くないせいか芝生が生えない。それだけなら、まだ良いが、芝生の代わりに雑草だけが、元気よく生えてしまう。
雑草のための芝では、植えていても仕方ないので、再び砂利に戻す事に。

これまで何度も庭を改良してるので、けっこうなお金をかけている気がする。
今回も砂利で6500円くらい。

芝をはがし、土をならし、砂利を運んで、まんべんなくまく。
砂利を15袋買ったが、まいているうちにどうも足りない気がしてきた。
あと10袋くらいは必要だな。これが巻き終わったらもう一回買いに行こう。
夫は、そう言いながら砂利を袋から出そうとした瞬間、
「うっ」と唸り声を上げて、ひざを突いた。
「こ、腰が。」と言ったきり、動かなくなってしまった。

ぎっくり腰である。
これで3回目位だろうか。
一回やると癖になるとは聞いていたが、本当のようだ。

1回目は、エアロビをやった後、風呂に入ろうとした時。
2日目は、アイロンをかけながら、くしゃみをした時。
そして、今回は最近のゴルフで、腰に無理をさせていたのかもしれない。
車の運転もあるだろう。そして今日の庭仕事である。

その後の砂利まきは私にゆだねられ、
夫は、腰を曲げたまま、そーっと、部屋に上がり、
その状態のまま床に横になり、動かなくなった。
私に汗でぬれたシャツを脱がさせたり、新しいシャツを着させたり。

急に出来ない事が増えてしまった自分に、なさけなさが募っているようだった。
明日は、友達の結婚式だというのに、この分じゃ無理だろう
月曜日の仕事でさえ、怪しい。
・・・今更ながら、腰って大切なのね。と思うのであった。

イチゴは、音に敏感だ。
宅急便の車が、家の前を通るだけで「うーっ」と、うなる。
夫の仕事で、宅急便が来る事が多いので覚えてしまった。

夫が出かけた後は、車のドアの開け閉めにも敏感。
「バタン」という音が聞こえると、あわてて玄関へ出迎えにいく。
誰も帰ってこないのに・・・・。

近所で布団をたたく音、乳母車の音、シャッターを閉める音
いろんな音に、反応して、吠える。
番犬としては立派かもしれないが、迷惑なことも多い。
やれやれ。

今日は近所の大学の学園祭で、花火大会が行われた。
ドン! ウォン! 
ドン! ウォン!
花火が上がるたびに、吠えるイチゴ。
うるさい。
イチゴをおいて、家の前の道路で花火を見物していると、
ウォーン! ウォーン!
さらにバージョンアップしたイチゴの声が聞こえる。
1人(1匹)だけ家にいるのが気に入らないのだ。

それでも知らん顔して、私と夫は夜空に広がる美しい花火を眺めていた。
道路に面した窓に、ふと影が映る。
その窓は和室の高い位置にあり、イチゴがその窓にたどり着くには、ソファーから駆け上がってジャンプしなければならない。
道路からその窓を見ると、ときおりイチゴがジャンプして一瞬顔をのぞかせるのが見える。

まるで、窓にイチゴの花火が上がっているみたい。
先週、1ヶ月に1回のお楽しみ。整体院へ行ってきた。
もともと血行の悪い私は、どこをマッサージされても痛い。
でも、今年の夏は調子がよかったみたいで、気持ちよくマッサージが受けられた。

ところが、寒くなると共に気持ちよさが痛みに変わっていく。
特にふくらはぎや、肩をグイグイ揉まれると、痛くて痛くて耐えられず、
イタ、イタ、イッターイ!
と、つい叫んでしまう。すると、先生は
「そんなに、いたいなら、ここに住むかい?」
と、いつも笑えない駄洒落を言う。
つ、つまんねー。とも言えないので、あはは、けっこうです。
と毎回返答する。

イタイと言うと、必ず「ここにいたいのか?」と言われてしまうので
今度こそイタイと言わないようにしようと、毎回思うが
ついつい、痛みに耐えかねて、イターイと叫んでしまう。
そして、また同じ駄洒落を言われる。
これの繰り返し。

そういえば私の体も、ゆがみを修正してもらうのに
一ヶ月もたつとまた歪んでしまい、同じマッサージを受けなければならない。
駄洒落を聞くのも、お代を払っているようなものかもしれない。

次の予約は、12月。
1ヶ月以上も先だ。
まったく世の中疲れている人が多いらしい。
今回の旅行は、十和田湖を中心に紅葉をめぐる旅。
個人で新幹線や宿を取り、レンタカーで観光することも考えた。
だが、私はペーパードライバー。父は方向音痴。レンタカーなんて無理だ!
そういうわけで、添乗員付きの国内ツアーという選択肢しかなかった。
添乗員付きツアーなんて、海外でも入った事ないのに。私は大丈夫なのだろうか?
そんな不安な思いを抱えつつ、ツアーに臨んだ。

上野駅から新幹線に乗ると、さっそく添乗員がやってくる。まじめそうな50歳くらいの男の人、これからの日程や観光の説明を丁寧にしてくれる。
盛岡駅につくと、さっそく集合。トイレ休憩の後すぐバスに乗る。バスでは中年のバスガイドが待っており、軽い冗談を飛ばしながら、秋田なまりで今日一日の説明をしてくれる。
観光地につけば、名所の説明をしてくれ、宿に入ってもいろいろ気を使ってくれる。

これって、何かに似てるなー。
ずっと気になっていた。そうだ、学校の修学旅行とそっくりだ。
引率の先生がいて、時間を決められ団体で行動する。学校そのものではないか。
そんな当たり前のことに思い当たる。
まあ、言われたとおりに行動するのって楽といえば楽なのだが、だんだん窮屈になってくるものなのだ。

予感は的中する。2日目の日程はかなり強行だった。
行楽シーズンということもあり、道路が渋滞し、名所も混雑している。当初、計画していた時間が取れなくなってきて、30分が15分に短縮されたり、トイレ休憩がたった5分しかなかったり。かなり時間に追われていく。
私は次第に、イライラしくる自分に気づいていた。

そして、私が今回の旅行で一番楽しみにしていた奥入瀬渓流に着く。
ところがここでも、20分歩くところを10分にするというのだ。
もー、頭に来た。
旅行でのんびり景色を見に来たはずなのに、何でこんなに時間に縛られなきゃいけないんだ。
ぶつけようのない怒りがこみ上げる。
こんな旅行で母と父は、楽しいの? こんなんでよかったの?
渓流を歩く団体の中から、2人を探す。
母はガイドさんの後ろにピッタリつき、熱心に説明を聞き、うなずき、合いの手まで入れて声を出して笑っている。
父は、集合から少し外れ、きままに写真を撮りながら、少年のように散策している。
2人ともすごい楽しそう。

そうだった。今回は親孝行の旅。
自分が楽しむ旅ではなかったのだ。
胸につっかえていたイライラがどこかへ消えていった。

そしてこの日最後のイベント、母が一番楽しみにしていた十和田湖の遊覧船。
実は、この最終便に間に合わせるために、時間が小刻みに削られていたのだ。
湖を囲む山々は見事に紅葉し、夕日が湖面を照らしている。
船の上で頬をなでる風は、冷たく心地よい。
湖面に映る夕日が、少しやつれた母の顔をオレンジ色に照らす。
湖を眺める母の顔には、やわらかい笑顔が浮かんでいた。
「死ぬ前に1度でいいから、秋の十和田湖に行きたいの。」
少女みたいなことを、母は事あるごとに言い続けていた。
それは、もう何十回も聞いたセリフで、だから私はいつも面倒くさそうに相槌を打っていた。
「そんなに行きたければ、行けばいいじゃん。」

昨年、母が軽い脳梗塞になり、少し言語障害になった。
入院するほどではなかったものの、母が命に関わる病気になったことに少なからずショックを覚えた。
人はいつかは死ぬものだと分かっていても、自分の家族は例外で、どこか他の誰かの親のことのような気がしていた。
でも、それは錯覚でしかない。
それからだ。親の話にもう少し耳を傾けよう―。
そう思うようになった。

父と母と私と3人だけで旅行に出かけるのは初めてだ。
そのことに旅行に出てから気づいた。
父も母も、子供のようにはしゃぎ、美しい紅葉を見て感嘆の声を上げていた。
ちょっと、おおげさじゃない? 傍で見ていて恥ずかしいほど。

でも、よく考えてみると、両親は私と弟を育てるのが忙しく、金銭的にも余裕がなかったので、旅行になんて出かけたことは、あまりなかった。
私は数え切れないほどの旅に出ていて、美しい景色にもいささか慣れっこになっている。でも父と母にとっては、美しい紅葉はもちろん、ちょっとした町並みや建物でも新鮮で、心洗われるものなのだろう。

そんなに楽しいのなら、夫婦2人で行けばいいのにと思う。
そう言うと、やれ申し込みが億劫だ、やれ書類が大変だと言い訳をする。
でも、本当の理由はちょっと別のところにあるようだ。

旅行中、他のツアー客から声をかけられた。
「娘さんとご旅行ですか?」
「ええ、そうなんですよ。」
「いいですねえ。うちは男ばかりだから」
「まあ、娘だとこれでも少しは話し相手になってくれますからね。」
そう答える母はとても得意そうだった。

これも、親孝行なのかもしれない。



涼しくなってきたので、久しぶりにイチゴ(犬)を広場へ連れて行く。
その広場は、中央がグラウンドで、そのまわりが芝生で囲まれている。
休みの日になると、グラウンドでは子供たちがサッカーボールを蹴り、芝生は犬連れの人々でいっぱいになる。
ちょっとした、犬の社交場ともいえる。

昨日は、トイプードルのオスに気に入られたイチゴ。
ときどきオシリをなめられたり、上に乗られたりして、
そのたびに、嫌そうにして私の後ろに隠れていた。
秋は、犬にとってそういう季節なのだ。

Mダックスを連れた小学生の子供たちもやってきた。
そのMダックスは、ラッキーという名のオス犬で、
同じMダックスのイチゴを見て、興味津々のようす。

「この犬は何歳ですか?オスですかメスですか?」
と、小学校4年生くらいの男の子が質問をしてくる。
最近の子にしては、礼儀正しく良い子だなと感心する。
「2歳で、メスだよ」と答えると、
その子は目を輝かして
「交尾しますか?交尾!!」
と言いながら、ラッキーをイチゴに近づけようとする。
「ラッキー、交尾しろ!交尾!」
男の子は、懸命にラッキーとイチゴを励ましていた。

周りの大人たちは、みな大笑いをしていたが、
そう言っている男の子の表情は真剣そのもの。
まるで理科の実験を観察するような感じだった。

確かに、私も犬の交尾を実際に見たことはないので、
興味がなくもない。
しかし、子供と一緒になって
「がんばれ!交尾!」
とは、さすがに言えないのであった。