術後初検診の日。先日訪れた際は頭が朦朧としていたせいか、クリニックの場所さえ覚えていなかった…

ので、改めてまして、こんにちは(笑)
クリニックのドアを開けるとスタッフの方々が

「あ~!先日の子!」

と私の顔を覚えていてくれたことが嬉しかった。(あんなに痛い痛い!と苦しんでしたのだから、当たり前かな?)

「ちょっと座ってお待ちください」と言われたクリニック内は8人座ると満席になるようなコンパクトな造りであった。
先生がアレックス氏しか居ないからだろう、予約したにも関わらず、裕に50分は待ちぼうけをくらった。
「あの先生のことだもの、一人一人の患者に丁寧な診察を施しているのだろう。」

普段の私は10分も待てない短気野郎なのだが、「あの先生ならば」と理解が出来てしまうくらい、アレックス氏は素晴らしい医者なのだ。
以前、ほんの少し働いていた医薬品会社でも皆口を揃えて不平を漏らしていたことなのだが、大概の医者は俺様な方が多く、
「~してやっている」
感を丸出しにしてくる方も少なくない。

しかし今回私のオペを行って下さった彼は、女性としては男性が婦人科の医師であると少々抵抗感があるものなのだが、それをも感じさせない人当たりの良さに加え、物腰が低く、口調も優しく、学もあり周りの医師にも尊敬されているところをとっても、やはり名医であるのだの感じずにはいられない方であった。

彼のクリニックには彼の医師免許加え、数々の免許証が飾られていた。
待ちぼうけの私には英語の勉強になるチャンス!電子辞書片手に彼の免許証を和訳していった。

するとビックリ、ここは普通の婦人科ないし産婦人科とばかり思っていたのだが、美容整形が可能な婦人科らしい。
彼のクリニックではニキビ肌の治療、アンチエイジング、脂肪除去手術も可能なのだとか。
しかも脂肪除去手術においてはかなりの腕前らしいのだ。

「そういえば、妊婦が全くいないよなぁ…」

やはり産婦人科よりも婦人科系の、オペを要するような事柄の専門医らしいのだ。もちろん、私が受けた内視鏡手術でも有名な医師であった。

「ミス、アユミ~」

スタッフに呼ばれ受け付けに向かう。私が全くと言って良いほど英語が話せないことを前回承知の上だからだろう、かなりゆっくりと、分かりやすい発音で私に質問してくれた。

「まず、身長と体重を測りましょう。」

げっ!朝食をたらふく食べてきてしまったのに、予期せぬ出来事。
早く良くなるようにと食欲を無視して食べに食べ続けたこの数日間。怖くて体重計に乗っていなかったのだ。

あ~、恥ずかしい。。
クリニックの通路に堂々と置かれたそれに乗る。
「英語は大丈夫かな?」と心配して知人も見に来た。
「あ~!これは見に来ないで!」

時既に遅し。術前+2kg増になっていた体重。
トホホな私の気持ちとは裏腹に、スタッフの方は「ベリーグッド」と私の肩をたたいた。

「私はノーグッドよ(泣)」
もしかしたらこの1ヶ月強の間に三キロ以上体重が落ちたのは病気のせいだったのかも??と思わずにはいられない体重の回復力(笑)体重じゃなくて他が回復しておくれ(泣)
しかもお昼近くになり、少し小腹が空いてくるという罪な私の胃袋、トホホ。。
「大病をした後に体質が変わる」という話をよく聞くが、まさかこれ以上の大食らいにはならないでおくれよ…
と私の胃袋には願うばかりである。

スタッフの質問は淡々と続いていた。
「初経はいつ?」「前回の生理は?」「大体の期間は?」
婦人科らしい質問だ。そしてこの数日でだいぶ婦人科の単語を理解できるようにもなった。

私の回答をさっさとカルテに書いていたスタッフの手が止まり、小さな声で、私に何かを問いかけた。
単語は私に理解出来なかったのだが、何を聞いているのかは理解出来た。その雰囲気たるものは世界共通なのだな…なんて変なところに感心しながらも質問に答える。

実は今回の病気の件も何や関係があるのかと自己嫌悪に陥ったこともあった。そして当の本人以外の方が理解に苦しむことだということも。最近幸せで調子の良い私へ、神様からのイタズラかしら?と思わずにもいられなかった。

まあ、何はともあれ、色々な意味でこの国を好きになれたことには変わりがない。健康が一番の幸せで、周りに支えてくれる人々がいることへの感謝の気持ちを感じることが出来たこと、高い授業料だったかもしれないが、それくらいしないと私はそれらの有り難みを感じることができなかったのかもしれない。



「ミスアユミ~、カモン」
やっと私の番が来たようだ。お久しぶりのアレックス氏と助手のおばさん。
「具合はどう?」

皆優しく声をかけてくれる。
本当に少しずつだけれど、何を言っているか理解出来るようになってきて、尚且つこんな私に国境や言葉の壁を越えて皆が話しかけてくれることが嬉しかった。(病院なんだから当たり前か…(笑))


まずは超音波で腹部の検診。ウォータープルーフのフィルムを剥がしてもらい、傷口と初対面。

「傷口は小さい」と言われていたのだが、まだ嫁入り前の女の子なので…(汗)傷跡がどんなものなのか不安で仕方がなかったのだ。

「ベリークリーン。」

傷跡に消毒をしながら「ノープロブレム」と先生が微笑んだ。

恐る恐る自分の腹を見ると…あれま!本当に小さい傷跡だこと!
普段の生活でも小学生のような怪我が絶えない私、これくらいの傷跡なら日常茶飯事のことなので本当に安心した。

小さな穴を3つ開けて行うこの手術はその傷口の小ささ故に『キーポイント』と呼ばれているらしい。
近年の医療の進歩には驚かされるばかりである。ましてやそれを自身で体験出来たのだもの、
「どうやったらこんな小さい傷口から内視鏡を入れることができるの?!」

「こんな小さな傷口両サイドから針を通して内部を縫い合わせるってどういうこと?!」

まるでマジックでも見せられているような、不思議な感覚だった。

「凄い!!こんな繊細なオペなんだもの、チームで行うわけだし、そりゃ医療費が高いわけだよ。」

最新の医療技術に、傷口を見た知人も皆納得回答。
ついでアレックス氏は内視鏡手術の行程をそれで撮った写真を追って説明してくれた。

よくテレビでは見たことのあるエグい体内の画像そのものだったのだが、それが自分の体内の画像と言われても当の本人はイマイチ実感がわかなかった。しかしその画像は大量に流れ出た血液と破裂して穴の空いた卵巣、それを縫い合わせて取り除いた腫瘍の破片まで事細かに残されていた。

「腫瘍が破裂して、勢いよく血液が流れ出して死亡してしまう人も少なくないのですが、貴女の場合は血液の流出が遅かったため、大事には至らなかったのだよ、神に感謝だね。」

『may be dead』

「ホントに~?!」
生まれてこのかた、本当に丈夫だった私が若くしてリアルに『死』という言葉を突きつけられるとは思ってもみなかった。
それだからこそ、パッと急患でやって来た小娘に対して迅速に対応して下さった先生や知人には本当に感謝しきれない思いだった。

アレックス氏は一通りの説明を終えると、「何か聞きたいことはありますか?」と私に目配せをしてきた。 実は前日から質問したいことや言いたいことを英語で箇条書きにしていた私、アレックス氏の丁寧な説明に質問の答えがほぼ語られていたのだが、もう一度未婚女性としては再確認しておきたい事を幾つか質問してみた。

「すべて問題ないよ。」

彼の回答には本当に信憑性があって安心させられる。こんな素敵な医師に出逢えたのは人生で二度目のことだった。
一人は日本の内科の医師。一時期、主要な食べ物全てにアレルギー反応を見せたの私の体を物凄く理解してくれていて、彼の処方する薬は間違いがないのだ。実家から遠いそちらを面倒臭がって近場の医者に行ったとしても、やはり100%に近いほど効果が見られないため結局は彼の元へ向かう羽目になるほどの名医なのだ。(少し情報を記しておきます)

『千葉クリニック』
内科・小児科があり、患者さんは大人よりもアレルギーやアトピーの子供がとても多い。最寄り駅は都営新宿線の『船堀駅』。予約無しなので二時間は並ぶこと必須であるが、行く価値は大いにアリ。



一通りの質問を終え、またもや微妙な英語で

「海外でのオペは不安だったけれど、あなたのような医師に出逢えて本当に光栄でした」

と伝えると、彼は私の下手くそな英語を理解してくれたようで謙遜していた。

「緊急を有することだったし、迷う時間も選択枠もなかったから。でも本当に良くなってよかった。」

そう言って私と知人と握手を交わしてくださった。

「今度また何かあったら通院しなくて良いから、まずは電話していらっしゃい。」

え~?!また何かあったらちゃんと来ますって。むしろ来たい!
そんな思いを胸に、「サンキュー、バッバ~イ」とクリニックを後にした。
シンガポールにお住まいで良い婦人科を探していらっしゃる方、是非パラゴンに隣接しているマウントエリザベス病院の11階の婦人科へ。(むしろ婦人科の病気ではなくても彼に医師を紹介して頂いたら間違いはないだろう。)



次に、隣接つるパラゴン内のクリニックへ向かった。お目当ては保険云々のための診断書を頂くため。
ちょいと?!インチキくさい片言の日本語が話せるおっさん医師のいるクリニックだ。

「診断書を頂くだけだから受付けで済むことだろう。」

待つこと30分…
検診は既に前の病院でして頂いたというのに、何故かそのおっさんの診察室へ案内された。

「あ~ら、元気そうじゃない。」
相変わらずの暢気なフリに笑いを堪える。

「どうよ、その後の調子は?」

先ほど診察も受けてきましたし、傷跡も小さくて安心しました…
などと話をすると、

「本当、一事を争う事態だったからね~危なかったよ。すぐにオペしてもらえて良かったね。」

おいおい先生、私にペインキラーを飲ませて

「婦人科は今日じゃなくて良いよね?今日混んでるんだもん、そんな酷くないし我慢できるでしょ。」

とか言ってましたけど?
貴方の言葉を鵜呑みにしていたら今頃ホントにmay be dead だったよ…。

後から聞いた話だが、この方はよほどの状態でないと病人扱いはしないし適当な返しをしてくるで有名らしい。病院に1人、こんな先生がいるとある意味面白くて良いかも知れないが、生死を別ける事柄なら話は別である。

本当にアレックス氏は良い医師だったと告げると、

「じゃなきゃ私も紹介するわけないでしょ~」

と、誇らしげに語っていた。

ちなみにアレックス氏は

「あちらの医師は急がなくて良いと言っていたけれど、送られてきた腹部の写真を見て『こりゃ急がなくては!』と思い君達にすぐにこちらに来てもらったんだ。彼の判断はイマイチだった。」

と、あまり彼を信用していない様子だった。医師仲間にもそのように思われてしまうとなると、適当さも程々に…である。。

「ま~、お金はね、結構かかっちゃったけどさ、良かったよ。またシンガポールに来るの?来なよ。」

またしても『パシパシッ!』と私の肩を叩き彼は答えた。
善いんだか悪いんだか…このフランクさは『良し』かなぁ??

適当なことを言われつつも、この適当な人当たりの良さに悪い気はしなかった。
「…また来るよ。」

この病院に来るかは定かではないけれど。

診断書を受け取り家路につく。

『シンガポールタイム』があるように、言葉が悪いが『少々適当な』シンガポール特有の性格、人柄があるらしい。それはそれで良いのだが、それが医者であるとなると…話しは別である(笑)

とりあえず、徐々に色々と回復して(滝汗)いる私、今日からジムトレでも開始しようかな。

 入院中、あまりにも規則正しい生活をしていたためだろうか…


こんな時間に目覚めてしまった。




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真っ暗。。


近所の橋にて。





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ライトアップが素敵。




…って、こちら朝の6時。まだまだ外は真っ暗なのだ。


こころなしか最近、日の出が早くなって朝夕も過ごしやすい気温になったのだが


モンスーンの影響で毎日のように雷雨が続き散歩にすら出かけることができなかったので、


今日のような朝は珍しかった。




『早起きは三文の徳』

とはよく言ったもので、早起きして良くなかったことは、未だかつて経験が
…あ、あった。(汗)


病み上がりの身体?  なんのその。そこまで甘やかしたくなんかないぞ。 




ということでコンドミニアムをこっそりと抜け出して、久しぶりに軽いウォーキングをすることにした。




一番近くにあるセブン・イレブンまで徒歩20分かかるところを、ゆっくり30分もかけてウォーキングした。




まだ外は真っ暗だというのに通学バスへ元気よく駆け込む学生達、目の前の海沿いをランニングしている


人もしばしば。ワンコの散歩に出ている家政婦さんたち…




と、まだ夜も明けないというのに朝からアクティブな方々が多い。



「どれくらいから運動が可能ですか?」

退院前に何か聞きたいことはないかと医師に問われた時、真っ先に聞いたこと(笑)

「もっと他に聞くことはないんかい!」
やれやれ顔のアレックス氏。

「2~3日後からなら大丈夫だよ」


その言葉を鵜呑みにした私、ちゃっかり退院後2日目の今日、早起きをし、心配する周りの目を盗んで散歩に出掛けた次第なのだ。

「人間は急激に体内の血液量の3分の1がなくなると死に至ることもあるんだよ!」

体重の7~8%が血液量らしいのだが、私の場合、単純計算すると身体の血液量は4リットル前後。そこから1リットル以上の血液が排出されたということは…
輸血寸前、危機的状況であったことに間違いがないのだが、自分の事にもかかわらず未だに実感がわかない。
帝王切開で出産が行われる場合も約1リットルの血液が失われるらしい。

「今のあなたの身体は妊婦みたいなもの!妊婦さんくらい食べて、早く元気になりなさい」

いやいや…妊婦さんとは違うでしょ(汗)栄養がどこにいくでもなく、そのまま身体に蓄積するだけよ。。


私は秋痩せ体質だってのに、また夏の時のようなポニョ女になるかと思うとゲンナリ(泣)

「日本はこれから冬でしょ?着痩せできるから大丈夫だよ」

よくわからない励ましを受け、毎食のようにデカい肉とほうれん草数束をたいらげている。

「今のところ、食事は義務だ!」

あ、あれれ?食事は楽しむものと教えてくれたじゃあないですか!

「健康第一!まずはもっと太れ!」

血液が増えても、コレステロール値まで増えたら嫌だなぁ…

毎食の楽しみをそっちのけで、義務食なことにゲンナリする私を励ますべく、皆が私と同じ『義務食』をとってくれた。

「あなたは若いからいいけど、オーバーサーティーのこの体に義務食は正直キツい!」

あ、ハイ…、皆さん迷惑をかけてごめんなさいm(_ _)mこれだけ毎日栄養のあるものや大きな肉を食らっているので、皆そのうち気が強くなって勇ましくなるんじゃないかしら、なんてくだらない会話が飛び交う。

「…女は勇ましさなんていらないよ」
身長171センチの大女、これ以上強そうになったらどうするよ?

日本に帰国すれば実家の質素な食事が待っている。両親共々歳のせいか、年々食事がヘルシーになっている。(本当は)ダイエッターガールな私が「料理少なっ!」と思うほどの量なので、帰国してからその食事に慣れるのも一苦労しそうだ。もしかしたら急激な草食になって気持ちがひ弱になるかもしれない。それはそれでこの大女には好都合なことかもしれないが…

そんなことを考えつつ、目的地のセブンイレブンへたどり着く。お目当てはコーラとオレオ。私はタンパク質より糖分を欲しているようだ(笑)

まだどこの店もシャッターを占める近所のショッピングセンター


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コンビニの雑誌コーナーに『立ち読み禁止』の文字があるのはどの国も共通なのだね。
この国は英語・中国語が主に仕様されているので、最低でも二ヵ国語の雑誌が常時陳列されている。

今はまだ中国語はノータッチなので、勉強にもなる英語の雑誌をちょくちょく購入していたのだが、この日初めて『シンガポール版のファッション雑誌』があることを知った。

ファッションに疎いイメージがあったシンガポール、ファッション誌はどのような特集を組んでページを埋めているのか興味があったので、人気そうな雑誌を二冊購入してみた。
日本版もある女性誌『BAZZAR』、女性用シンガポール情報誌の『ウーマンズ・ウイークリー』。

人酔いするのが嫌、時間がない、を理由に主要な繁華街へ出掛けたことがあまりないので、情報誌とインターネットがこちらを知るツールとなっている私。そんな私にはローカル女性誌が街の貴重な情報源であるのだ。
驚いたのはそれらの価格が日本の雑誌の半値~4分の3の値なこと。
ウーマンズ・ウイークリーは日本円で約250円、バザーも破格の約330円なのだ。
確かに雑誌の内容量からして、日本の雑誌には引け目をとるがそれなりの値段なので納得もいく。日本の雑誌をこちらで購入する際は値段が日本の倍になるため、馬鹿馬鹿しくて安易に購入することができない。その点、ローカル雑誌などは安い上に英語の読解の勉強になるので私にとっては一石二鳥、偉い教材なのだ。

ちなみにこちらの国はエロ本禁止なので、肌を露にできる雑誌の大概は『ボディービル』雑誌なのだ。よって、どこのコンビニにも決まってボディービル雑誌が陳列されており、なぜか目のやり場に困る時がある(汗)

ま、それを立ち読みしたか否かはさておき、30分近く長居をしてしまったセブンイレブンを出ると、外は明るくなりかけていた。日の出時間の空はモンスーン時期には珍しいくらい清々しく、日本のように視界を遮る建築物が少ないため、自分の視野が広くなったような錯覚に陥るほど、その表情はなんとも心地よいものだった。


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真っ青にはまだ早い、幻想的な群青がかった空の色。私は立ち止まった少しの間それを眺めていた。

晴れか雨か、まだどちらに転ぶかわからない怪しいげな表情をする空、闇の中から段々と姿を現す周りの景色はいつも見慣れているはずなのにまたそれとは違う、不思議な雰囲気をかもし出していた。

うろこ雲をまとい、今にも吸い込まれてしまいそうな怪しい色をした夜明けの空を見上げ、いつもよりややスローペースで帰路につく。


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オーチャードにあるIONにしかり、なぜかこちらで『お洒落』と思われるオブジェは、『細長い人間・カラフル』という共通点を持ち合わせているらしい。
やはりシンガポール人のセンスには理解に苦しむところがある。


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人通りもなく静かで、ライトアップが綺麗だった先ほどの橋もこのとおり。30分しか経っていないというのに、バス停へ急ぐサラリーマンや学生達、ランナー達の行き交う通行手段としての橋へと早変わりしていた。

時計の時間を見るとそろそろ家の皆が起きる時間だった。
「書き置きもしていないし、急がなくちゃ」

行きよりも少しペースをあげて歩く。一年中暑い国とはいえ朝方ともなれば25度前後、ウォーキングだと少し汗ばむくらいのちょうどよい気温だ。

ウォーキング15分、体内の脂肪が燃えるのはエクササイズ20分後からだというのに、既に家へたどり着いてしまった。
栄養を吸収してばかりいる身体は今日も脂肪を蓄積するばかりか…
まだまだ体重は戻りそうにもないなぁ


「どこいってたの~!」

玄関越しに知人の姿が見えた。やはり早めに起床していたらしい。

「貧血で倒れたんじゃないかって心配で、全部の部屋を覗いたんだから。」
そう朝からプリプリしなさんなって。

「安静だっていうのに!それに、一言書き置きくらいしてよね」

すいません…
もう少し早く帰宅できていれば私のお忍び作戦も成功したのになぁ…

あまり反省の色を見せない私に「全く!変な子!もう心配なんかしないよ!」と、癇癪をおこし、プリプリしながら自分の部屋へ戻っていった。

あのときに立ち止まらなければ、心配もかけず気付かれずに済んだのに。

あの空の色に、あの幻想的な表情に、一瞬でも惚れてしまった私の負けである。

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今回入院した病院、私にとっては『初入院』の場所だったのだが、今までの『病院』のイメージが覆されるほどに居心地がよかった。
日本ではなくて、むしろ海外で入院することになって良かったとさえ思った。

私が病院に抱くイメージは

『暗い』『怖い』『幽霊』…

と、なんとも幼稚なフレーズが並ぶのだが(汗)こう見えてかなりビビりぃな私、日本の病院だったら怖くて眠ることすら儘ならなかっただろうと思う。

変な怪談話の聞きすぎ、またはオカルト映画の観すぎだろうか、怖いものが嫌いなくせして興味深々なもんだから、夜は特に変な考えが頭を過る。

日本のホラー映画と海外のホラー映画、リアリティーを感じやすいといったら確実に邦画なことと同じように、海外の病院にはリアリティーさが感じられなかった。
様々な人種の看護婦に全く日本語の通じない環境、明るく病院らしからぬ雰囲気の病棟は産婦人科が主だからだろうか、可愛らしい赤ん坊の泣く声が響くだけ。特に重病な患者がいるわけでもなく、相部屋だった私の病室は部屋ごと借りていたので他人様が入ってくることもなかった。
夜は二時間毎に看護婦が血圧を計りにやってくるだけ。私はそのつど目を覚ましていたのだが、何せ話しかけられる言葉も全て英語、寝ぼけなまこの私は、

「ここは海外、海外の病院、、私は入院していて今は真夜中…」

と理解するだけで精一杯だった。むしろ理解できないまま、また眠りに堕ちることの方が多かったのかもしれない。
意外や意外、本当に良く眠ることができたのだ。


「見知らぬ場所で大病をして、日本語の通じない病院で1人寂しく入院しているかと思うと、さぞ心細いだろうな…ってお母さん何もできないから泣けてきちゃって…」

電話越しの母はすすり泣きながらそう答えた。

いやいや、そんな心配しなくて大丈夫よ。貴女の娘は意外と肝が据わっていまっせ。


確かに入院は暇だ。いつでも眠れそうな睡眠欲があるだけ有り難かった。
貧血で倒れてしまいそうになるので病室からは一歩も外へ出られなかった私の暇潰しは『歯磨き、シャワーを浴びる、差し入れの雑誌達、ローカルのテレビ』だった。
2日間も身動きが取れず歯磨きや風呂に入れなかった私、シャワーの許可がおりるやいなや一日に最低二回は風呂に入った。
普段から1日最低二回はしっかりと風呂に入る私にとって、身動きの取れない2日間は術後の痛みうんぬんよりも、自分の不潔さが嫌で嫌でたまらなかった。

「もっと病人らしくしてろよ」

と呆れられるほど、病室をワガママに動き回っていた。


全てに飽き、行き着く先はローカルテレビ。日本語の番組などもちろん無い。

大好きなアンジェリーナ主演のトゥームレ-ダーが放送されていると思えば、字幕は中国語。。
かろうじて存在する恋愛もののローカルドラマは英語だけれど微妙な内容。シンガポーリアンにはあまり美男美女が居ないせいか、俳優もイマイチ?!
もう1つ見つけたハートフル系?ローカルドラマは完璧な中国語。旨いホーカーを出すために七転八倒しながらも周りの人々に支えられ…的な内容だった(と思う)

しかも弟子入りしたホーカー料理は日本人が皆口を揃えて「不味い!」と言う『ラクサ』。
個人的には一時期、可笑しいくらいハマった食べ物で、皆からは

「味覚音痴!」

なんて批判をくらった代物であった。しかしこちらのローカルでは一般的な『ラクサ』、正直私も「美味しい!」とは一度も思ったことがないしココナッツ以外には何の味の深みもないのだが、何故かクセになる味なのである。
ドラマの中でも主人公が一生懸命に『ラクサ』を調理しているのだが、どこの調理シーンを見ても全く食欲がそられない。画ズラが悪すぎる(汗)
しかも、出来上がったラクサをボーイフレンドに食べてもらうシーンでは

「凄い!今までとは全然違う!グッドテイストだね!香りたかくてコクがある!」

なんてボーイフレンドが感激するんだけれど、明らかにグッドテイストには見えないし、コクを出しているのはココナッツだろ。
と、突っ込みどころが満載であった。
しかもその『ラクサ』の師匠も試食して

「できる!と信じて願えば、出来ないことなど何もないのだよ。」

なんて、たかが(失礼…)一杯のラクサにこんなに熱くなってどうするのさ?!

と、またまた突っ込みを入れたくなるような話の流れに付き合いきれずチャンネルを回した。やはりイマイチこちらのノリがわからない。。(汗)

次のチャンネルも中国語チャンネル。会話は全く意味不明なのだが、雰囲気的にお笑い番組のようだった。
しきりにギャグ?らしき言葉をとばし合う、こちらで人気らしい芸人コンビ。
日本のお笑い芸人、『中川家の弟』が良くネタにしているコミカルな中国人は、
この番組を大研究して作られたのではないか?!と思うほどノリやトークの仕方、面白いことをするタイミングが似ていて、全く意味がわからない番組だったのだが笑いが止まらなかった。

「おいおい、まだ病み上がっていないんだから、笑うと全身が痛くて仕方がないよ~」

ひ~ひ~言いながらお得意の引き笑いもエスカレートする私に、こちらの看護婦も苦笑いであった。

「私も入院している間中この番組をつけていればお笑いネタが仕込めるかも!?」

…くだらないアイディアばかりが浮かぶほど病室は暇で暇で仕方がなかった。
あ、『中国語のバラエティー番組のものまね』を聞きたい人は直接言ってください、仕込んでおきます(笑)


もう1つ、忘れちゃいけない入院中の楽しみは『食事』だった。
やはり、余程のことがない限り私の食欲は消滅しいらしい。

食事をすることができなかった丸2日間は『痛み』の強さゆえ食欲を感じることもなく、

「ダイエットになるか?!」

と期待していたのだが、何せ1リットル以上の血液を失った身体には『ダイエット』は後回し。

「とにかく血液を作るべくいっぱい食べなさい。」

アレックス氏に言われた通り、病人向けの入院中の食事の他に、看護婦の冷ややかな視線を感じつつもジャンクな食べ物を毎食買いに行ってもらって食べていた。

2日ぶりに初めて口にした食事が『カツサンド』。

「病気に勝つ(カツ)!!」
げんかつぎをしようとして購入したわけではありません…(汗)。
『横浜ロマン館?』という店のカツサンド、さすがはデパ地下のお弁当だけあって味はとてもよかった。

その夜口にしたジャンクフードは久しぶりのマック!普段食べないものだけに、差し入れとなるとやたらテンションが上がった。
相部屋を1人で仕様していたため、病室に広がるマックのにおいを気にする必要もナシ!ダブチ(ダブルチーズバーガー)とポテト、久々のダイエットコーラがヒヨッていた術後の身体を癒してくれた。

1日何食食べたら気が済むのかしら??
本当に術後1日目?!

というくらい食欲が回復しすぎている自分に驚く(笑)



そういえば、こちらの病院は『個人の手術台を確保しなければ手術をして貰えない』という変わった制度があり、一番始めに頭金を入金して自分専用の術台を確保する必要があるらしいのだ。

手術台を確保した証しに手術についてアレコレ書かれている承諾書のサインや、ローマ字の名前プレートをベッドに張ったり腕にバンドを付けられたりするのだが、超緊急事態にもかかわらず私の名字が

『NAKATATO』

と間違っていたお陰で手術開始時間が大幅に遅れたのだ。
私の名字は読みにくいらしく、何度発音を教えても

「ナカタト?」

「ミス、ナカ…デイト」

と皆さんなんとも可笑しな間違いをするもんだから、笑いが堪えきれなかった。
最終的に発音できない看護婦自身も笑いだし、笑うと身体中に激痛がはしった私は

「頼むから、笑わせないで~!!」

と、引き笑いが過呼吸になりそうな口元を押さえて必死に笑いを堪えた。

後から気が付いたのだが、間違ったままの名前「NAKATATO」で領収書が出ていたことにも大爆笑。これもまた良い思い出である。


昨日の写真の手に持っているカードは『室内をクリーニングしましたよ』という証明のカードらしく、こちらの国ではよく見かける生花が付いていた。
生花では珍しく、1日以上経っても花が枯れない。


…って、すぐさま枯れてしまう生花を病院から提供する方が可笑しいが(笑)



思い起こせば数えきれないほどの珍道中があった。
血液検査・点滴を打つ際、大概は肘の内側に針を刺すのだが、いつもながら私はなかなか針を刺す血管が見当たらなかったらしく医師達も困り顔。

10分近く両手両腕を擦り血管を探すも、

「あなた血管細すぎ!見えない!」

と苦笑い。「ええぃ!」っと、終いには手の甲と手首横といった珍しい場所に針を刺し、腕を絞りあげながら血液の出ない血管と格闘していた。

「貴女血液たくさんつくりなさいよ!」

鉄分補給薬を大量に処方されたのは言うまでもない。。


最初に訪れた日本語の通じる病院のインチキくさい院長は、私の身体の内面図を見るなり

「産婦人科に行かなきゃ詳しいことはわからないよ~。今日産婦人科混んでるから2日後くらいでいいでしょ?痛み止めあげるから、我慢しなさい」

とふざけたことを言っていたが、実際私は緊急を要す身であった。あのオジサンの言うことを鵜呑みにしていたら今や私の命はなかったのかもしれない!?(滝汗)

と思うと、適当すぎるあのオジサンが一番のお偉いさんであるこの病院は大丈夫なのか?!
と疑問に思う。

「貴女の顔を見れば重病じゃないことくらいわかる」
という発言にしかり、

「ちょいとお腹、触らせてみ!」

と力の加減なしにギュウギュウと腹を押して状態を見たかと思うと、

「ま~、張ってるけど大丈夫、こんくらい!」
またまた力加減ナシに激痛のはしるお腹をパンパンッ!と叩いた時は正直、

「このクソオヤジ~!」

と思わずにはいられなかった。
ノーテンキっぽい彼に重病の話をされたとしても、皆実感が沸かないだろうな…

あの性格は時に、『善きにしろ非ず』である。

その院長は入院期間も

「日帰り又は1日で十分でしょ~」

とほざいて(失礼)いたが、アレックス氏は仕切りに首を振って
「最低2日は必要だよ。」と答えていた。

そうよ、日本だったら5日入院するほど安静を有する事態だというのに、あの院長ったらなんてテキトーなのかしら…

しかしこれも彼の人柄、何だか笑わずにはいられないし憎めない方だった。

抜糸も術後検診も終わっておらず、完治にはまだまだ時間がかかりそうだ。しかし以前は毎日のように動かしていた筋肉が最近ウズキ出してたまらない。
早くもスポーツ再開?の予感である(貧血があるのでほどほどに…)