今回入院した病院、私にとっては『初入院』の場所だったのだが、今までの『病院』のイメージが覆されるほどに居心地がよかった。
日本ではなくて、むしろ海外で入院することになって良かったとさえ思った。

私が病院に抱くイメージは

『暗い』『怖い』『幽霊』…

と、なんとも幼稚なフレーズが並ぶのだが(汗)こう見えてかなりビビりぃな私、日本の病院だったら怖くて眠ることすら儘ならなかっただろうと思う。

変な怪談話の聞きすぎ、またはオカルト映画の観すぎだろうか、怖いものが嫌いなくせして興味深々なもんだから、夜は特に変な考えが頭を過る。

日本のホラー映画と海外のホラー映画、リアリティーを感じやすいといったら確実に邦画なことと同じように、海外の病院にはリアリティーさが感じられなかった。
様々な人種の看護婦に全く日本語の通じない環境、明るく病院らしからぬ雰囲気の病棟は産婦人科が主だからだろうか、可愛らしい赤ん坊の泣く声が響くだけ。特に重病な患者がいるわけでもなく、相部屋だった私の病室は部屋ごと借りていたので他人様が入ってくることもなかった。
夜は二時間毎に看護婦が血圧を計りにやってくるだけ。私はそのつど目を覚ましていたのだが、何せ話しかけられる言葉も全て英語、寝ぼけなまこの私は、

「ここは海外、海外の病院、、私は入院していて今は真夜中…」

と理解するだけで精一杯だった。むしろ理解できないまま、また眠りに堕ちることの方が多かったのかもしれない。
意外や意外、本当に良く眠ることができたのだ。


「見知らぬ場所で大病をして、日本語の通じない病院で1人寂しく入院しているかと思うと、さぞ心細いだろうな…ってお母さん何もできないから泣けてきちゃって…」

電話越しの母はすすり泣きながらそう答えた。

いやいや、そんな心配しなくて大丈夫よ。貴女の娘は意外と肝が据わっていまっせ。


確かに入院は暇だ。いつでも眠れそうな睡眠欲があるだけ有り難かった。
貧血で倒れてしまいそうになるので病室からは一歩も外へ出られなかった私の暇潰しは『歯磨き、シャワーを浴びる、差し入れの雑誌達、ローカルのテレビ』だった。
2日間も身動きが取れず歯磨きや風呂に入れなかった私、シャワーの許可がおりるやいなや一日に最低二回は風呂に入った。
普段から1日最低二回はしっかりと風呂に入る私にとって、身動きの取れない2日間は術後の痛みうんぬんよりも、自分の不潔さが嫌で嫌でたまらなかった。

「もっと病人らしくしてろよ」

と呆れられるほど、病室をワガママに動き回っていた。


全てに飽き、行き着く先はローカルテレビ。日本語の番組などもちろん無い。

大好きなアンジェリーナ主演のトゥームレ-ダーが放送されていると思えば、字幕は中国語。。
かろうじて存在する恋愛もののローカルドラマは英語だけれど微妙な内容。シンガポーリアンにはあまり美男美女が居ないせいか、俳優もイマイチ?!
もう1つ見つけたハートフル系?ローカルドラマは完璧な中国語。旨いホーカーを出すために七転八倒しながらも周りの人々に支えられ…的な内容だった(と思う)

しかも弟子入りしたホーカー料理は日本人が皆口を揃えて「不味い!」と言う『ラクサ』。
個人的には一時期、可笑しいくらいハマった食べ物で、皆からは

「味覚音痴!」

なんて批判をくらった代物であった。しかしこちらのローカルでは一般的な『ラクサ』、正直私も「美味しい!」とは一度も思ったことがないしココナッツ以外には何の味の深みもないのだが、何故かクセになる味なのである。
ドラマの中でも主人公が一生懸命に『ラクサ』を調理しているのだが、どこの調理シーンを見ても全く食欲がそられない。画ズラが悪すぎる(汗)
しかも、出来上がったラクサをボーイフレンドに食べてもらうシーンでは

「凄い!今までとは全然違う!グッドテイストだね!香りたかくてコクがある!」

なんてボーイフレンドが感激するんだけれど、明らかにグッドテイストには見えないし、コクを出しているのはココナッツだろ。
と、突っ込みどころが満載であった。
しかもその『ラクサ』の師匠も試食して

「できる!と信じて願えば、出来ないことなど何もないのだよ。」

なんて、たかが(失礼…)一杯のラクサにこんなに熱くなってどうするのさ?!

と、またまた突っ込みを入れたくなるような話の流れに付き合いきれずチャンネルを回した。やはりイマイチこちらのノリがわからない。。(汗)

次のチャンネルも中国語チャンネル。会話は全く意味不明なのだが、雰囲気的にお笑い番組のようだった。
しきりにギャグ?らしき言葉をとばし合う、こちらで人気らしい芸人コンビ。
日本のお笑い芸人、『中川家の弟』が良くネタにしているコミカルな中国人は、
この番組を大研究して作られたのではないか?!と思うほどノリやトークの仕方、面白いことをするタイミングが似ていて、全く意味がわからない番組だったのだが笑いが止まらなかった。

「おいおい、まだ病み上がっていないんだから、笑うと全身が痛くて仕方がないよ~」

ひ~ひ~言いながらお得意の引き笑いもエスカレートする私に、こちらの看護婦も苦笑いであった。

「私も入院している間中この番組をつけていればお笑いネタが仕込めるかも!?」

…くだらないアイディアばかりが浮かぶほど病室は暇で暇で仕方がなかった。
あ、『中国語のバラエティー番組のものまね』を聞きたい人は直接言ってください、仕込んでおきます(笑)


もう1つ、忘れちゃいけない入院中の楽しみは『食事』だった。
やはり、余程のことがない限り私の食欲は消滅しいらしい。

食事をすることができなかった丸2日間は『痛み』の強さゆえ食欲を感じることもなく、

「ダイエットになるか?!」

と期待していたのだが、何せ1リットル以上の血液を失った身体には『ダイエット』は後回し。

「とにかく血液を作るべくいっぱい食べなさい。」

アレックス氏に言われた通り、病人向けの入院中の食事の他に、看護婦の冷ややかな視線を感じつつもジャンクな食べ物を毎食買いに行ってもらって食べていた。

2日ぶりに初めて口にした食事が『カツサンド』。

「病気に勝つ(カツ)!!」
げんかつぎをしようとして購入したわけではありません…(汗)。
『横浜ロマン館?』という店のカツサンド、さすがはデパ地下のお弁当だけあって味はとてもよかった。

その夜口にしたジャンクフードは久しぶりのマック!普段食べないものだけに、差し入れとなるとやたらテンションが上がった。
相部屋を1人で仕様していたため、病室に広がるマックのにおいを気にする必要もナシ!ダブチ(ダブルチーズバーガー)とポテト、久々のダイエットコーラがヒヨッていた術後の身体を癒してくれた。

1日何食食べたら気が済むのかしら??
本当に術後1日目?!

というくらい食欲が回復しすぎている自分に驚く(笑)



そういえば、こちらの病院は『個人の手術台を確保しなければ手術をして貰えない』という変わった制度があり、一番始めに頭金を入金して自分専用の術台を確保する必要があるらしいのだ。

手術台を確保した証しに手術についてアレコレ書かれている承諾書のサインや、ローマ字の名前プレートをベッドに張ったり腕にバンドを付けられたりするのだが、超緊急事態にもかかわらず私の名字が

『NAKATATO』

と間違っていたお陰で手術開始時間が大幅に遅れたのだ。
私の名字は読みにくいらしく、何度発音を教えても

「ナカタト?」

「ミス、ナカ…デイト」

と皆さんなんとも可笑しな間違いをするもんだから、笑いが堪えきれなかった。
最終的に発音できない看護婦自身も笑いだし、笑うと身体中に激痛がはしった私は

「頼むから、笑わせないで~!!」

と、引き笑いが過呼吸になりそうな口元を押さえて必死に笑いを堪えた。

後から気が付いたのだが、間違ったままの名前「NAKATATO」で領収書が出ていたことにも大爆笑。これもまた良い思い出である。


昨日の写真の手に持っているカードは『室内をクリーニングしましたよ』という証明のカードらしく、こちらの国ではよく見かける生花が付いていた。
生花では珍しく、1日以上経っても花が枯れない。


…って、すぐさま枯れてしまう生花を病院から提供する方が可笑しいが(笑)



思い起こせば数えきれないほどの珍道中があった。
血液検査・点滴を打つ際、大概は肘の内側に針を刺すのだが、いつもながら私はなかなか針を刺す血管が見当たらなかったらしく医師達も困り顔。

10分近く両手両腕を擦り血管を探すも、

「あなた血管細すぎ!見えない!」

と苦笑い。「ええぃ!」っと、終いには手の甲と手首横といった珍しい場所に針を刺し、腕を絞りあげながら血液の出ない血管と格闘していた。

「貴女血液たくさんつくりなさいよ!」

鉄分補給薬を大量に処方されたのは言うまでもない。。


最初に訪れた日本語の通じる病院のインチキくさい院長は、私の身体の内面図を見るなり

「産婦人科に行かなきゃ詳しいことはわからないよ~。今日産婦人科混んでるから2日後くらいでいいでしょ?痛み止めあげるから、我慢しなさい」

とふざけたことを言っていたが、実際私は緊急を要す身であった。あのオジサンの言うことを鵜呑みにしていたら今や私の命はなかったのかもしれない!?(滝汗)

と思うと、適当すぎるあのオジサンが一番のお偉いさんであるこの病院は大丈夫なのか?!
と疑問に思う。

「貴女の顔を見れば重病じゃないことくらいわかる」
という発言にしかり、

「ちょいとお腹、触らせてみ!」

と力の加減なしにギュウギュウと腹を押して状態を見たかと思うと、

「ま~、張ってるけど大丈夫、こんくらい!」
またまた力加減ナシに激痛のはしるお腹をパンパンッ!と叩いた時は正直、

「このクソオヤジ~!」

と思わずにはいられなかった。
ノーテンキっぽい彼に重病の話をされたとしても、皆実感が沸かないだろうな…

あの性格は時に、『善きにしろ非ず』である。

その院長は入院期間も

「日帰り又は1日で十分でしょ~」

とほざいて(失礼)いたが、アレックス氏は仕切りに首を振って
「最低2日は必要だよ。」と答えていた。

そうよ、日本だったら5日入院するほど安静を有する事態だというのに、あの院長ったらなんてテキトーなのかしら…

しかしこれも彼の人柄、何だか笑わずにはいられないし憎めない方だった。

抜糸も術後検診も終わっておらず、完治にはまだまだ時間がかかりそうだ。しかし以前は毎日のように動かしていた筋肉が最近ウズキ出してたまらない。
早くもスポーツ再開?の予感である(貧血があるのでほどほどに…)