術後初検診の日。先日訪れた際は頭が朦朧としていたせいか、クリニックの場所さえ覚えていなかった…

ので、改めてまして、こんにちは(笑)
クリニックのドアを開けるとスタッフの方々が

「あ~!先日の子!」

と私の顔を覚えていてくれたことが嬉しかった。(あんなに痛い痛い!と苦しんでしたのだから、当たり前かな?)

「ちょっと座ってお待ちください」と言われたクリニック内は8人座ると満席になるようなコンパクトな造りであった。
先生がアレックス氏しか居ないからだろう、予約したにも関わらず、裕に50分は待ちぼうけをくらった。
「あの先生のことだもの、一人一人の患者に丁寧な診察を施しているのだろう。」

普段の私は10分も待てない短気野郎なのだが、「あの先生ならば」と理解が出来てしまうくらい、アレックス氏は素晴らしい医者なのだ。
以前、ほんの少し働いていた医薬品会社でも皆口を揃えて不平を漏らしていたことなのだが、大概の医者は俺様な方が多く、
「~してやっている」
感を丸出しにしてくる方も少なくない。

しかし今回私のオペを行って下さった彼は、女性としては男性が婦人科の医師であると少々抵抗感があるものなのだが、それをも感じさせない人当たりの良さに加え、物腰が低く、口調も優しく、学もあり周りの医師にも尊敬されているところをとっても、やはり名医であるのだの感じずにはいられない方であった。

彼のクリニックには彼の医師免許加え、数々の免許証が飾られていた。
待ちぼうけの私には英語の勉強になるチャンス!電子辞書片手に彼の免許証を和訳していった。

するとビックリ、ここは普通の婦人科ないし産婦人科とばかり思っていたのだが、美容整形が可能な婦人科らしい。
彼のクリニックではニキビ肌の治療、アンチエイジング、脂肪除去手術も可能なのだとか。
しかも脂肪除去手術においてはかなりの腕前らしいのだ。

「そういえば、妊婦が全くいないよなぁ…」

やはり産婦人科よりも婦人科系の、オペを要するような事柄の専門医らしいのだ。もちろん、私が受けた内視鏡手術でも有名な医師であった。

「ミス、アユミ~」

スタッフに呼ばれ受け付けに向かう。私が全くと言って良いほど英語が話せないことを前回承知の上だからだろう、かなりゆっくりと、分かりやすい発音で私に質問してくれた。

「まず、身長と体重を測りましょう。」

げっ!朝食をたらふく食べてきてしまったのに、予期せぬ出来事。
早く良くなるようにと食欲を無視して食べに食べ続けたこの数日間。怖くて体重計に乗っていなかったのだ。

あ~、恥ずかしい。。
クリニックの通路に堂々と置かれたそれに乗る。
「英語は大丈夫かな?」と心配して知人も見に来た。
「あ~!これは見に来ないで!」

時既に遅し。術前+2kg増になっていた体重。
トホホな私の気持ちとは裏腹に、スタッフの方は「ベリーグッド」と私の肩をたたいた。

「私はノーグッドよ(泣)」
もしかしたらこの1ヶ月強の間に三キロ以上体重が落ちたのは病気のせいだったのかも??と思わずにはいられない体重の回復力(笑)体重じゃなくて他が回復しておくれ(泣)
しかもお昼近くになり、少し小腹が空いてくるという罪な私の胃袋、トホホ。。
「大病をした後に体質が変わる」という話をよく聞くが、まさかこれ以上の大食らいにはならないでおくれよ…
と私の胃袋には願うばかりである。

スタッフの質問は淡々と続いていた。
「初経はいつ?」「前回の生理は?」「大体の期間は?」
婦人科らしい質問だ。そしてこの数日でだいぶ婦人科の単語を理解できるようにもなった。

私の回答をさっさとカルテに書いていたスタッフの手が止まり、小さな声で、私に何かを問いかけた。
単語は私に理解出来なかったのだが、何を聞いているのかは理解出来た。その雰囲気たるものは世界共通なのだな…なんて変なところに感心しながらも質問に答える。

実は今回の病気の件も何や関係があるのかと自己嫌悪に陥ったこともあった。そして当の本人以外の方が理解に苦しむことだということも。最近幸せで調子の良い私へ、神様からのイタズラかしら?と思わずにもいられなかった。

まあ、何はともあれ、色々な意味でこの国を好きになれたことには変わりがない。健康が一番の幸せで、周りに支えてくれる人々がいることへの感謝の気持ちを感じることが出来たこと、高い授業料だったかもしれないが、それくらいしないと私はそれらの有り難みを感じることができなかったのかもしれない。



「ミスアユミ~、カモン」
やっと私の番が来たようだ。お久しぶりのアレックス氏と助手のおばさん。
「具合はどう?」

皆優しく声をかけてくれる。
本当に少しずつだけれど、何を言っているか理解出来るようになってきて、尚且つこんな私に国境や言葉の壁を越えて皆が話しかけてくれることが嬉しかった。(病院なんだから当たり前か…(笑))


まずは超音波で腹部の検診。ウォータープルーフのフィルムを剥がしてもらい、傷口と初対面。

「傷口は小さい」と言われていたのだが、まだ嫁入り前の女の子なので…(汗)傷跡がどんなものなのか不安で仕方がなかったのだ。

「ベリークリーン。」

傷跡に消毒をしながら「ノープロブレム」と先生が微笑んだ。

恐る恐る自分の腹を見ると…あれま!本当に小さい傷跡だこと!
普段の生活でも小学生のような怪我が絶えない私、これくらいの傷跡なら日常茶飯事のことなので本当に安心した。

小さな穴を3つ開けて行うこの手術はその傷口の小ささ故に『キーポイント』と呼ばれているらしい。
近年の医療の進歩には驚かされるばかりである。ましてやそれを自身で体験出来たのだもの、
「どうやったらこんな小さい傷口から内視鏡を入れることができるの?!」

「こんな小さな傷口両サイドから針を通して内部を縫い合わせるってどういうこと?!」

まるでマジックでも見せられているような、不思議な感覚だった。

「凄い!!こんな繊細なオペなんだもの、チームで行うわけだし、そりゃ医療費が高いわけだよ。」

最新の医療技術に、傷口を見た知人も皆納得回答。
ついでアレックス氏は内視鏡手術の行程をそれで撮った写真を追って説明してくれた。

よくテレビでは見たことのあるエグい体内の画像そのものだったのだが、それが自分の体内の画像と言われても当の本人はイマイチ実感がわかなかった。しかしその画像は大量に流れ出た血液と破裂して穴の空いた卵巣、それを縫い合わせて取り除いた腫瘍の破片まで事細かに残されていた。

「腫瘍が破裂して、勢いよく血液が流れ出して死亡してしまう人も少なくないのですが、貴女の場合は血液の流出が遅かったため、大事には至らなかったのだよ、神に感謝だね。」

『may be dead』

「ホントに~?!」
生まれてこのかた、本当に丈夫だった私が若くしてリアルに『死』という言葉を突きつけられるとは思ってもみなかった。
それだからこそ、パッと急患でやって来た小娘に対して迅速に対応して下さった先生や知人には本当に感謝しきれない思いだった。

アレックス氏は一通りの説明を終えると、「何か聞きたいことはありますか?」と私に目配せをしてきた。 実は前日から質問したいことや言いたいことを英語で箇条書きにしていた私、アレックス氏の丁寧な説明に質問の答えがほぼ語られていたのだが、もう一度未婚女性としては再確認しておきたい事を幾つか質問してみた。

「すべて問題ないよ。」

彼の回答には本当に信憑性があって安心させられる。こんな素敵な医師に出逢えたのは人生で二度目のことだった。
一人は日本の内科の医師。一時期、主要な食べ物全てにアレルギー反応を見せたの私の体を物凄く理解してくれていて、彼の処方する薬は間違いがないのだ。実家から遠いそちらを面倒臭がって近場の医者に行ったとしても、やはり100%に近いほど効果が見られないため結局は彼の元へ向かう羽目になるほどの名医なのだ。(少し情報を記しておきます)

『千葉クリニック』
内科・小児科があり、患者さんは大人よりもアレルギーやアトピーの子供がとても多い。最寄り駅は都営新宿線の『船堀駅』。予約無しなので二時間は並ぶこと必須であるが、行く価値は大いにアリ。



一通りの質問を終え、またもや微妙な英語で

「海外でのオペは不安だったけれど、あなたのような医師に出逢えて本当に光栄でした」

と伝えると、彼は私の下手くそな英語を理解してくれたようで謙遜していた。

「緊急を有することだったし、迷う時間も選択枠もなかったから。でも本当に良くなってよかった。」

そう言って私と知人と握手を交わしてくださった。

「今度また何かあったら通院しなくて良いから、まずは電話していらっしゃい。」

え~?!また何かあったらちゃんと来ますって。むしろ来たい!
そんな思いを胸に、「サンキュー、バッバ~イ」とクリニックを後にした。
シンガポールにお住まいで良い婦人科を探していらっしゃる方、是非パラゴンに隣接しているマウントエリザベス病院の11階の婦人科へ。(むしろ婦人科の病気ではなくても彼に医師を紹介して頂いたら間違いはないだろう。)



次に、隣接つるパラゴン内のクリニックへ向かった。お目当ては保険云々のための診断書を頂くため。
ちょいと?!インチキくさい片言の日本語が話せるおっさん医師のいるクリニックだ。

「診断書を頂くだけだから受付けで済むことだろう。」

待つこと30分…
検診は既に前の病院でして頂いたというのに、何故かそのおっさんの診察室へ案内された。

「あ~ら、元気そうじゃない。」
相変わらずの暢気なフリに笑いを堪える。

「どうよ、その後の調子は?」

先ほど診察も受けてきましたし、傷跡も小さくて安心しました…
などと話をすると、

「本当、一事を争う事態だったからね~危なかったよ。すぐにオペしてもらえて良かったね。」

おいおい先生、私にペインキラーを飲ませて

「婦人科は今日じゃなくて良いよね?今日混んでるんだもん、そんな酷くないし我慢できるでしょ。」

とか言ってましたけど?
貴方の言葉を鵜呑みにしていたら今頃ホントにmay be dead だったよ…。

後から聞いた話だが、この方はよほどの状態でないと病人扱いはしないし適当な返しをしてくるで有名らしい。病院に1人、こんな先生がいるとある意味面白くて良いかも知れないが、生死を別ける事柄なら話は別である。

本当にアレックス氏は良い医師だったと告げると、

「じゃなきゃ私も紹介するわけないでしょ~」

と、誇らしげに語っていた。

ちなみにアレックス氏は

「あちらの医師は急がなくて良いと言っていたけれど、送られてきた腹部の写真を見て『こりゃ急がなくては!』と思い君達にすぐにこちらに来てもらったんだ。彼の判断はイマイチだった。」

と、あまり彼を信用していない様子だった。医師仲間にもそのように思われてしまうとなると、適当さも程々に…である。。

「ま~、お金はね、結構かかっちゃったけどさ、良かったよ。またシンガポールに来るの?来なよ。」

またしても『パシパシッ!』と私の肩を叩き彼は答えた。
善いんだか悪いんだか…このフランクさは『良し』かなぁ??

適当なことを言われつつも、この適当な人当たりの良さに悪い気はしなかった。
「…また来るよ。」

この病院に来るかは定かではないけれど。

診断書を受け取り家路につく。

『シンガポールタイム』があるように、言葉が悪いが『少々適当な』シンガポール特有の性格、人柄があるらしい。それはそれで良いのだが、それが医者であるとなると…話しは別である(笑)

とりあえず、徐々に色々と回復して(滝汗)いる私、今日からジムトレでも開始しようかな。