いわいどを見つけたあとは、近くの尾根の腰掛けられるようなところでお昼ごはんにしました。

その後、せっかくだからちょっと上まで行ってみようということで登ってみることに。
オッキー先輩は、すこし足元に疲れがあるのでのんびりしておりますよ、と言うので小屋番さんとふたりで登っていきます。
途中で、見覚えのある岩。
昨年には、この岩を見つけて、それをじいさまに言ったところ、それならもうすぐだよということでした。たしかにそうでした。
山の草とか花とか虫とか-見覚えのある岩

山の上まではすぐ。
上のほうに生えた木に、もちゃっとしたところがあります。
小屋番さんの言うには、クマ棚でないかということでした。
ところが、周りにはフジの実も下がっているので、ぼくはつるがからんでもちゃっと見えるだけなのかなあ?と思っておりました。
山の草とか花とか虫とか-クマ棚

もうちょっと近くへ行ってみると、おお!
クリの木の枝が太目のものまで折れていて、その又になったところに枝が集められております。
これはつるが集まったものではないですね。(視力にこのところ自信がありません)
山の草とか花とか虫とか-クマ棚

幹には、たしかにクマの爪の跡がありました。
山の草とか花とか虫とか-クマの爪あと

ほかのもうちょっと細い木にも爪の跡がありました。
ほかにもいくつもあるのですが、どれもクリの木についています。
傷跡もそれほど古くなく、今年の秋のものなのだろうなあと思いました。
こうしたはっきりした爪の跡は、木から降りるときにつくのだそうです。
山の草とか花とか虫とか-爪あと2
裏山にクマおやぶんのいるのはわかっておりましたが、こんなふうにクリを求めて木に登ったりしていたのですね。うちのクリの林は、ずいぶん近いんですが、どうやら来ていないなあと思っておりました。美味しくないのでしょうか?うちの栗。あまりに来ていただいても困るし、こないのもなんだか淋しい感じがあって複雑な心境でございます。

見晴らしのよいところまで登って朝日連峰の方向を眺めます。
雪雲の奥に、古寺山と小朝日へ登る尾根がちらっと見えました。(写真ではちょっとわからないかもしれません。)
山の草とか花とか虫とか-朝日連峰が見えるはず

さて、帰りましょう。
まわりの木の様子などを見ながら戻ります。
これはキリの木なのですが、小屋番さんがこんこんと叩くとがらんどうのような音がしました。
ミツバチを飼うのに、こんなふうに空洞になっているのを輪切りにして巣箱に使うととてもよいのだそうです。
山の草とか花とか虫とか-桐の木

マンサク(マルバマンサクですね)の木には、イラガのまゆがありました。
これは穴が開いていないので、中にさなぎが入っておりますね。
これから羽化して、穴が開くとちいさな器のようになります。
別名を、ションベンタゴ、スズメノションベンタゴ、などというのですが、木にこんなちいさな入れ物のようなのがくっついているので、小鳥のおしっこ用のもの?というのでそんな別名なのだそうです。
山の草とか花とか虫とか-ショウベンタゴ

小屋番さんは、ぼくとおなじく山奥の集落で生まれ育ったので、こんなところが子どものころからの遊び場です。今回のいわいど探険も、子どものころの夏休みの遊びの延長のような感じですね。
小屋番さんのお知り合いで、山の中の集落で生まれ育ったかたがあり、その方は酔っ払うたびに、「なんでオレだけあんな山の中で育たないといけなかったのだろう」と嘆くのだそうです。
しかし、小屋番さんは、山の奥の集落で育ったのはたいへんに幸せだったし、今もおなじように楽しんでいるなあという具合です。「そんなふうに育ったものだから、山で遊んで、今でもロッキーチャックさんのようなのと山を散歩して歩けるのだものたいへんに得したなあ」という具合のことを言っておりました。
ぼくも山奥の集落で育って大変に良かったなあと思っているのですが、「田舎に育って嫌だった」という方もおるのですね。
でもね、田舎に育って嫌だったなあというような方は、都会に育っても、「都会に育って嫌だったなあ」と思うのではないかしら?とふと思ったりして。ないものねだりというのですかね。

斜面を下っていきます。
すっかり落葉しているので木につかまりながら下っていくと見通しもきいてよいです。
夏なら葉がしげってこんなにすいすい歩けません。
山の草とか花とか虫とか-下る

いわいどの近くの斜面はこんな感じ。
斜面には落ち葉がたくさん積もり、細い木が雪のしたに埋まり、足だけで歩こうとしてもずるずると滑ってしまってたいへんで危険かなあという場所もありました。ちょっとしたコツというか、あるんですがそれは書かれません。きちんと山登りしている方には怒られてしまうものだから。
山の草とか花とか虫とか-斜面

帰りは来たところと同じ道を通るのも面白くないので、斜面のしたのほうにある道路にむかって下りてみることにしました。
途中で作業道らしきもの発見。
山の草とか花とか虫とか-林道へ

作業道を下っていくと道路にでました。
雪の上歩きは、ここでおしまいです。4時間ほどの上り下りになりました。
山の草とか花とか虫とか-道路へ

登り始めたところからだいぶ遠くのほうへ下ったので、道路をてくてくと歩いていきます。
最初のころにちょっとこわかったところがありました。横のしましまに見えている上のスギのあたりを通ったのですね。
ここは数年前に大きめのがけ崩れがあり災害復旧したところです。
ここは、車道は一本しかなく、当時は迂回路はぐるんとかなりの遠回りになりました。
山の草とか花とか虫とか-崖の上

眼下には夏に潜って遊ぶ川と、三日月形の中州が見えました。
山の草とか花とか虫とか-三日月形の中洲

中州には、いくつもけものの足跡があり、ふたつならんでついているのはテンの足跡かなあと思いました。中州はまわりは川をどこかしら渡らないといけないので、どうしても行きたい先があったのでしょうね。
山の草とか花とか虫とか-足跡

いわいど探険のおはなしはこれでおしまいです。
いろんな木があり、いろんなけものの跡があり、人の遊んだところもあり、面白いものですね。
有名な高い山に登るのもよいのですが、裏山にだって面白いものはあるものです。
この近くのほかの山にも、風穴があるんだとか、冬なのになぜか雪の積もらない不思議なところだとかそういったおはなしもあり、今年の冬のうちにもいくつか行くことができたらよいなと思いました。
今日はなかなかに雪が降りました。
商店街には控えめにちらほらと電飾があり、電飾のついた木に雪が積もっています。
山の草とか花とか虫とか-電飾

節電のために一時期は消えていた街灯などがだんだんと戻っていたりしますけれど、ぼくにとっては夜は暗くっても良いんじゃあないかなあという気持ちも、節電の大事さも変わりません。
香水に鼻が慣れて強くなるのとおんなじようなもので、電灯などは目が慣れればそのぶん暗くも感じるので明るくするのにキリがないような気がします。
庭で雪に穴をぽすんと開けてろうそくを灯せばこんなに明るいんですね。
山の草とか花とか虫とか-ろうそくの灯り
みんなで街灯などをなるべく消して星を観る夜があってもよいなあと思います。

さて、いわいど探検の続きです。
呼ばれた方向へ行ってみると、すこし離れたところからは見えなかった入り口が見えました。これがいわいど!そうかあ!ありましたか。
山の草とか花とか虫とか-イワイド

そんなに奥まで続いているわけではありません。
じいさまから聞いていたはなしによると、いわいどは畳8畳ほどの広さのある横穴で、江戸時代くらいには近隣の若い衆が集まってはよからぬことをしていたということです。
よからぬこととは、ばくちなどのようでした。さいころを転がしたり、花札で遊んだりしたのでしょうか?
山の草とか花とか虫とか-入り口

天井付近の岩の様子。
これはどうも凝灰岩のようです。凝灰岩は火山灰が堆積して出来た岩なのですが、堆積する際に、いろんなものが混じって堆積することもあるようです。
ここには、小石が混じっております。
山の草とか花とか虫とか-天井付近

外側には、もうちょっと違った種類の石が混じっていて、こちらはチャートかなあ?と小屋番さんとはなしをしていました。黒っぽい石は、凝灰岩のほかの部分に比べて緻密で硬くつやっとしています。堆積岩が熱変性するとこんなふうになったりするようです。
どうやってこんな穴が出来たものだか、ああでもない、こうでもないとおはなしをしました。
たとえば、この穴の部分にかつてこんなふうに種類の違った石が詰まっていてそちらだけ先に砕けたとか、そういうことだろうかとか、また鉱山などで掘削しているといきなり地中に空洞があったりするのだそうです。
山の草とか花とか虫とか-チャート

中の様子。
こちらは、入り口からみて右の方向です。
山の草とか花とか虫とか-内部

こちらは左方向。
しゃがんだまま移動するような高さです。
山の草とか花とか虫とか-内部2

中から見てみると、入り口は幅が狭くなっていました。ほんとうに居住向きの穴、という感じがします。
山の草とか花とか虫とか-中から見てみた
でも、じいさまの言っていたような、8畳ほどの広さではありません。大人が6名ほどしゃがみ、真ん中に焚き火を出来るくらいの広さです。
なんせ50年前に見た、という記憶のはなしなので、その間に空間が記憶のなかで広がっていったのでしょう。小学校の教室に久々に行ってみると、こんなにちいさな部屋だったんだなあと驚くようなものでしょうか?
いえ、それとももっと大きな穴があるのでしょうか?(その後、周囲をまだ探しましたが見当たりませんでした)

いわいどの中には、炭のかけらがいくつか落ちていました。
これをかじってみた小屋番さんによると、炭で間違いないということでした。
かつて火を焚いて過ごしたのかもしれません。
山の草とか花とか虫とか-炭

住民がおりました。
これはヤホシゴミムシというゴミムシの仲間のようです。透明感のある琥珀色の体にクリーム色の斑。
ゴミムシは、たいてい黒っぽいのが多く、背中に縦のすじがあったりするなかにあってこれは美麗なゴミムシだなあと思いました。
顔を見るとたしかにゴミムシの仲間なんだねえという顔立ちでした。
山の草とか花とか虫とか-ヤホシゴミムシ

さて、「いわいど」は、言葉で聞いて知っているために、どんな漢字を書くのかわかりません。
すんなり思い当たるのは、岩井戸、祝戸。
井戸だと、縦の穴で水を汲むイメージですから、ちょっと違うでしょうか?
ふと連想するのは、天照大御神(あまてらすおおみかみ)の天岩戸(あまのいわと)だったりします。天岩戸、天岩屋戸、天岩屋というような呼び方だったでしょうか。
じいさまが言っていた言い方では、「裏山に、イワイドというイワヤがあって・・・」という具合でしたから、「イワヤ」は、一般的に岩のあなぼこを言い、「イワイド」がこの穴の固有名詞なのではないだろうかと思いました。
いろいろ想像をめぐらしますが、そもそもこの穴は、若い衆がよからぬことをするのに使っていたそれほど広く知られているものではない(資料などには出てこないようです)ので、「イワイド」とは、身内でそう呼び慣らしているだけなんだろうなあと思いました。
(そう言ってしまうと、地名などはみんなそうなんですけれども)

さて、ひとまず無事に見つけることができました。
お昼ごはんにしましょう。
いわいどのちょっと上に尾根が続いていて、その尾根の上の座りやすそうな枝や地面の平らなところの雪をならして座り、お昼にしました。
山の草とか花とか虫とか-根っこのイス

このあとに、せっかく山に来たのでちょっと登って散歩しました。
昨日は朝から、かねてより探していた「いわいど」というところを探しに行きました。
「いわいど」はじいさまの言うことによると、うちの裏山付近にあるということなのですが、どうにも場所がわかりません。じいさまが30歳くらいのころに、うさぎぼい(ウサギを追っての猟)をしていたときに、先輩と一緒に見たそうです。
夏の時期は葉が茂り見つけにくく、ヤブをこぐのも大変なので冬の間に探すこと4年ほど。
探しに行っては、じいさまに「こんな地形のこのあたりに行ったのだけれど」と報告し、「うむ、ならばそこからもっと下ったところだな」というのを繰り返していました。
昨シーズンには、どうやらそのかなり近くまで到達していたようで、今回は見つけられるだろうという漠然とした期待感がありました。

いわいどは、この山から向こうへ伸びる尾根の斜面の株のどこか。
スギの林と雑木の林の境界にそって歩くのだということです。
山の草とか花とか虫とか-これから行く山

場所もよくわからないところなので、登山道はありません。
昔の作業道のあとを追って山へ向かいます。
小屋番さんと、冬になると一緒にかんじき歩きをする先輩(オッキー先輩)と3名での山遊びになりました。
山の草とか花とか虫とか-入り口

はじめはスギの林の中を行きます。
ここのスギ林は、なかなかよく手入れされていて明るい雰囲気があります。
道には動物のあしあとがたくさんありました。
動物たちもこの道を通っているようです。
山の草とか花とか虫とか-スギの林の中の道

斜面を登りつつ歩いていくと、一番最初の写真の山の向こう側で、大きくがけ崩れのあった箇所へつきました。
眼下には道路と川が見えます。
道路までは落差は80mほどあるでしょうか。これは落ちたら一大事です。
山の草とか花とか虫とか-がけ崩れの上

その向こうに大頭森山が見えます。
今冬こそ、あそこまで山こえ、谷こえ歩いていくのですからね。
山の草とか花とか虫とか-遠くに大頭森山

道は、崖のほうはササやちいさな木がへりに生えたところになっていて、あまり崖のほうに行くと踏み抜いてしまいそうです。雪であしもとが見えません。
山側は木が張り出して来て歩きにくくなっています。
山の草とか花とか虫とか-崖の上の道

ヌルデの枝に、いくつも虫こぶがついていました。
ヌルデの虫こぶは、特に「五倍子(ごばいし)」と名前があり、ヌルデシロアブラムシというアブラムシがなかに住み着いています。
タンニンをたくさん含むために、これをお歯黒や染料などに使ったということです。
また、歯痛の漢方薬としても用いたとかなんとか。
どんなふうに使うのでしょう?
資料などを少し調べて見ると、中のアブラムシを使うというようなことも書いてあったりしました。
この虫こぶを見てみると、破れたようになっておりますね。これだとアブラムシたちは翅が生えて飛び立った後です。
山の草とか花とか虫とか-ヌルデの虫こぶ

ここはがけ崩れの起きたところで、そういったところを好むヌルデがいくつも生えて虫こぶもついていました。
山の草とか花とか虫とか-ヌルデの虫こぶ 遠くから

崖の上の危ないところを抜け、もう少し進むと道の上部は雑木林になってきました。
ちいさな木が多いですね。ここの雑木林は、何十年か前に伐採して今は次の世代が育ちつつあります。
山の草とか花とか虫とか-上部は雑木林

スギの林のなかからそちらの方向を単眼鏡で伺う小屋番さん。
う~む、探検隊っぽいです。
山の草とか花とか虫とか-探す様子

ちょっと写りがよろしくないですが、キブシの冬芽です。
小屋番さんによると、ズノキとも呼んで、枝の中心がスポンジのようになっておりそれを抜くと筒が出来、その穴にちいさなマメだとかそういうのを詰めててっぽうを作ったそうです。
そういうおはなしを聞きながら山を行くのも楽しいですね。
山の草とか花とか虫とか-キブシ ズノキ

見上げるスギの林。
ここの林は知り合いの方の山で、その上部の雑木林はお隣の集落の共有林になっています。
里の近くの山は、どなたかの山になっているのが多く、通るだけだとうるさくいう方もあまりありませんが、地元以外の方が入ったりすると怪しまれます。
今年の秋に、うちのなめこも結局きのこ泥棒にやられてしまいました。
泥棒め、そんなにきのこが好きなら今度見つけたあかつきにはきのこの菌を植え付けて沢沿いに寝かしておいてやりましょう。
山の草とか花とか虫とか-スギの林

このあたりかな?というところから雑木の林のほうへ向かっていきました。
すると、岩がごろごろしている場所に行き当たりました。
たしかに、雑木の林とスギの林の境界のあたりです。
山の草とか花とか虫とか-岩近く

その境界(実際には、「ふつり」と呼ぶのですが)に沿って進みます。
これかなあ?でもそれらしき穴がありません。岩は凝灰岩のようです。
岩からはつららが垂れ下がり、草も生えておりました。
これなら、珍しいシダでもありそうと思いながら次々に岩を確認していきます。
山の草とか花とか虫とか-これかな?

どのくらい歩いたでしょう?
思ったよりも、広い範囲(南北150m、東西300mほどが候補)に岩のあるところが点々としているものですから3人で手分けしてあなぼこを探します。
山の草とか花とか虫とか-発見の報告アリ
そのうちに、小屋番さんから「お~い、これか?これじゃないか?」と声があがり、そちらへ行ってみると小屋番さんはもう写真を撮ったりしておりました。

さて、これが件の「いわいど」なのでしょうか?